【BMW 3シリーズ 試乗】320dツーリング、ディーゼルは今や高性能の領域に…中村孝仁

試乗記 輸入車
BMW・320dツーリング
BMW・320dツーリング 全 14 枚 拡大写真

エコカー流行りである。エコカーというと思い浮かべるのは、EVやHEV、それにダウンサイジングターボなど。しかし忘れてならないのがディーゼルである。

【画像全14枚】

日本市場ではメルセデスベンツが、クリーンディーゼルと呼ばれる新世代のディーゼルエンジン搭載車を導入して話題になったが、高価格ゆえ一般化したとは言い難い。その後、マツダのSKYACTIVが登場してようやくクリーンディーゼルの認知度が多少は高まってきた。

走る歓びを前面に押し出すBMWがクリーンディーゼルを導入し始めたのは、2012年の『X5ディーゼル』から。しかし今では『3シリーズ』や『5シリーズ』などのセダンと、『X3』にもディーゼルが追加され、中でも今回試乗した「320dツーリング」は、販売開始当初3シリーズツーリング全体の8割を占めたほどの人気ぶりだったという。つまり、BMWのように走りを求めるユーザー層でもディーゼルが着実に浸透しつつあることを物語っていると思う。

かつて、ディーゼルといえば臭い、うるさい、とろいの3重苦を持っていたが、今、それらすべてが全く当てはまらず、逆にエコ、パワフル、高性能が加わったと思って欲しい。320dの場合、2リットル直4ターボエンジンを搭載し、最高出力は184psだから、まあガソリンエンジンの2リットル車と肩を並べている。ところが町中などでの運転し易さの指標となるトルクはというと、380Nmとガソリン2リットルユニットの270Nmを大幅に上回るのだ。高性能の秘密はここにある。

マツダのSKYACTIVと違って、圧縮比は16.5とディーゼルらしい数値を持っているから、始動した時のディーゼル特有のカラカラ音を消し去ることはできていない。とは言うものの、実際に乗り出してしまうとほとんどのケースで停車すればアイドリングストップしてしまうので、うるさいと感じることはなく、走り出してしまうと普通のユーザーであればこれがディーゼルの音だと気づくこともないと思う。確かにエンジン音がざらついた印象で、BMWらしくないと言ってしまえばそうだが、数多くのメリットの前では、そんなデメリットは霞んでしまう。

アイドリングストップに関して、エンジン停止は非常にスムーズになった。しかし、再始動はさすがにまだブルンとエンジンが震えるのは致し方あるまい。それにしても力強い加速感はとても2リットル4気筒とは思えない。遥かに大型のエンジンを搭載したクルマと感じる。

今回はおよそ700kmほどを走ってみた。それも1日で。というわけだから大半は高速道路なのだが、正直なところ今回は全くエコ運転をしていない。開けられるところでは目いっぱい開けてダイナミックなドライビングを楽しんできた。こうした状況になるとBMWらしさを存分に発揮してくれる。まずもってハンドルを切る量が、ライバルに比べて間違いなく少なくて済む。それだけ正確でクイックなステアリングを持っていると言えるが、このクルマの直前に最新のメルセデス『Cクラス』に試乗して、図らずも直接比較することになってしまった。どちらが運転していて楽しいかといわれたら、黙ってBMWを推薦する。メルセデスの場合は高級車に乗っている印象が非常に強く、快適ではあるが、運転する楽しさといえば、やはりBMWに軍配が上がる。

さて、その高性能ぶりとパワフルさはこれでお分かりいただけたと思うが、クリーンディーゼルというからにはまずは環境負荷が少なくてはならない。それに燃費だ。環境負荷という部分では、かつて東京都知事だった石原慎太郎氏が、鬼の首を取ったようにディーゼル廃棄物のススをペットボトルに入れて振って見せた。しかし今、そんなススは全くでない。排気管に鼻を近づけて匂いを嗅いだって、臭い匂いは全くしない。勿論それらは数値的にも裏付けられていて、日本の厳しい規制を後処理なしでクリアしている。

そして燃費。全然エコ運転をしないで走った結果は17.2km/リットル。ガソリンエンジンの320はハイオクを要求するから、場所によって異なるが安いところでもリットル当たり170円台前半。それが軽油だと安いところでは130円台の前半だ。つまりリットル当たり40円は安い計算になる。だからロングドライブをすればするほど、ランニングコストは安くなるというわけだ。因みにガソリン車との比較で車両価格は20万円ほど高いが、ランニングコストを考えると元を取るのはすぐではないだろうか。何より圧倒的パフォーマンスがこのクルマを選ばせる大きな原動力なのである。

ワゴン、即ちツーリングに関してコメントしなかったが少なくともセダンよりは確実に実用性が高い。ラゲッジルームの容量がどうかといわれたら、ワゴンとしては決して広い方ではないのだが、分割可倒式のシートをうまく使えばやはり利便性は遥かに高い。セダンとツーリング、チョイスの判断はまさにここにあって、運動性能だの静粛性だのといった部分ではほとんど差がないと思う。大半のハイブリッド車は、何らかの犠牲を強いられる。特にバッテリーを多く積む関係で、運動性能的に不利だ。だから、エコカーとしてディーゼルのブームがやってこないかと期待しているのだが…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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