宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米国海洋大気庁(NOAA)は、2012年5月に打上げた水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)に搭載された高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)の観測データがNOAAで利用開始されら。
観測データは、2013年2月からNOAAへ提供し、NOAAにより全球と米国周辺の陸、海洋、大気の監視など、気象予報のための準備が進められてきた。地球表面から放出される微弱なマイクロ波を雲の影響を受けずに観測できることから、ハリケーンや台風の目など内部構造がより正確に把握でき、その強度や進路の予測に役立つ。
AMSR2の観測データは、昨年9月から気象庁の数値予報システムに組み込まれ、降水予測精度の向上のために利用されている。これに引続きNOAAでも定常的な気象予報での利用が開始された。
NOAAでは、JAXAが開発した、「しずく」搭載AMSR2と今年2月に打上げの全球降水観測計画(GPM)主衛星搭載二周波降水レーダ(DPR)のデータの活用が検討されており、JAXAとNOAAは協力について交渉している。その第一歩として、今回、AMSR2のデータが米国で定常的に気象予報に利用されることとなった。
また、NOAAでは、JAXAと米国航空宇宙局(NASA)共同で開発したGPMに搭載されたDPRについても、米国付近の熱帯低気圧の予測向上のため利用することを検討している。
AMSR2は、地球表面から放出される微弱なマイクロ波を雲の影響を受けずに観測でき、GPMに搭載された降水レーダは、雨や雪の状況を3次元で観測できるため、静止気象衛星などに搭載されている可視・赤外観測機器に比べてハリケーンや台風の目など、内部の構造がより正確に把握できる。より正確にハリケーンや台風の強度や進路を予測することが可能となる。
NOAAは、AMSR2データの有効性を、昨年発生したハリケーンや台風で評価しており、NOAAに所属する国立ハリケーンセンターでは、6月1日からAMSR2観測データの定常的な利用を開始し、すでに複数のハリケーンについて、進路予測改善などに効果を発揮している。