【マツダ デミオ 試乗】XDツーリング Lパッケージ、コンパクトカーの概念を変える4つの魅力…中村孝仁

試乗記 国産車
【マツダ デミオ 試乗】XDツーリング Lパッケージ、コンパクトカーの概念を変える4つの魅力…中村孝仁
【マツダ デミオ 試乗】XDツーリング Lパッケージ、コンパクトカーの概念を変える4つの魅力…中村孝仁 全 19 枚 拡大写真

想像はしていたものの、やはりその圧倒的なパワー感は我慢の必要がないクルマを作り上げていた。新しい4代目マツダ『デミオ』はディーゼルエンジン搭載車に関する限り、文句ない動力性能を示す。

「SKYACTIV-D」と名付けられたディーゼルエンジンで快進撃を続けるマツダ。すでに投入されている『CX-5』『アテンザ』『アクセラ』のディーゼル比率を見ると、唯一アクセラだけが12.6%と低いものの、CX-5では77.1%、アテンザで68.4%といずれも半数以上を占めている。

そして新しいデミオはというと、予注の段階で7割に達しているというから、やはりディーゼルに対する注目度は相当に高い。とは言うものの、ガソリン車との価格差は30万円近いから、決して安いモデルではない。

FFディーゼル車のトップモデル「XDツーリング Lパッケージ」では199万8000円と、およそ200万円。例えば、ホンダ『フィットハイブリッド』のSパッケージだとほぼ同等の価格。トヨタ『アクア』のGブラックソフトレザーセレクションでもほぼ同様である。輸入Bセグメント代表のVW『ポロ』はベーシックグレードの「TSIコンフォートライン」が223万9000円。仮想敵としては国産のライバルのみならず輸入コンパクトを視野に入れているのだ。

個人的な感想として、今回のデミオが秀でている点は大きく4つ。1つ目は何と言ってもディーゼルの圧倒的な動力性能。2つ目は明確なデザインランゲージによるブランドとしての統一感を持ったスタイリング。3つ目は細かい配慮を持ったインテリアの仕上げ、そして4つ目が国産Bセグメントのライバルと比較して大きく上回る乗り味やハンドリングである。

最後のハンドリングと乗り味から話をしよう。XDツーリングに装着されるのは185/60R16というサイズのタイヤである。試乗車が装着していたのはトーヨーの「プロクセス R39」というタイヤだ。ディーゼルエンジンは重く、フロントの軸荷重では1.3リットルのガソリンと比較した場合、100kgも重い。当然タイヤへの負荷も大きいわけだが、そのハンドリングはなかなか軽快。そしてこれまでの国産車では味わうことのできなかったしなやかさを持ち合わせている。このフィールを実現しているのは国産ライバルではスズキ『スイフトRS』が最も近い。つまりBセグメントとは思えないどっしり感を持ちつつ軽快な走りを持ち合わせているのである。

細かい配慮を持ったインテリアとは、コンパクトカーに有りがちなオフセットされたドライビングポジションを採らずに済むことである。フロントタイヤを80mm前方に移し、ドライバーがステアリングに正対した状態で体の中心にペダルがセットされている。だからドライビングポジションに違和感がなく、恐らく長距離ドライブでも疲れにくいはずだ。また、エアコンの吹き出し口をドライバー側のみ、二つの丸型とし、パッセンジャー側は左端を丸型、中央寄りはあえて角形にして室内の広がり感を演出してドライバー側はタイトなコックピットを、そしてパッセンジャー側は快適でゆとりを感じるデザインとしている点も評価すべきだ。

そしてLパッケージに使われるシートはクロスとレザーのコンビシート。しかもシートカラーは白という大胆なもの。これも従来の国産車にはなかった。

デザインに関してはご覧いただければわかるだろうが、アテンザ、アクセラなどと共通のグリルに始まるブランドの統一感が出たスタイルで、しかも魂動 という共通のランゲージによって仕上げられたもの。個人的には素晴らしいデザインだと思う。

そして最後の動力性能。最高出力こそ105ps/4000rpmと、取り立てて凄いパワーというわけではないが、最大トルクは実に250Nm/1500-2500rpmで、2.5リットル級のトルクを持ち合わせている。実はデミオはATとMTでは性能が若干異なる。それに燃料タンクの容量もMT車の方が少ない。トルクは30Nm少なく、燃料タンクは9リットル少ない。もっとも燃料タンクそのものは同じで、液面の高さを変えているだけ。なぜこのようなことをするかというと、やはり燃費のためだ。

おかげでMT車は30km/リットルの燃費を実現しているのだが、あえてMTを選ぶ理由はそれにとどまらず、やはり痛快に走ろうと思えばそれに十分に応えてくれるからだと思う。もっとも、もし自分で買うとすればやはりATを選ぶ。確かにMTは強大なトルクのおかげで、一般道で3速に固定したまま走れてしまうからAT並のズボラ運転が可能だ。でも、ストップ&ゴーを考えればやはりATの楽さには及ばない。それに十分楽しく走れる。

ネガな要素も書いておこう。せっかくここまでやれているのだが、リアドアを閉めた時の貧相な音は良くできた内外装にそぐわない。マツダコネクトの使い勝手もまだ完ぺきではない。さらに言えば、ディーゼルのLパッケージは標準装備だが、それ以外のモデルはすべてオプション扱いとなるリアのトノカバー。そりゃないぜと思わず言いたくなった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 :★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  2. トヨタ RAV4 新型、PHEVのEV航続は150km
  3. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
  4. スバルマークの方が似合う? 新型ダイハツ『ムーヴ』のスバル版にSNSも注目!
  5. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  4. 中国EV「XPENG」、電動SUV2車種を改良…新電池は12分で80%充電可能
  5. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
ランキングをもっと見る