【メッツラー スポルテック M7RR 試乗】ウェットで強力グリップ実感…和歌山利宏

モーターサイクル テクノロジー
メッツラー スポルテック M7RR 試乗会(袖ヶ浦フォレスとレースウェイ)
メッツラー スポルテック M7RR 試乗会(袖ヶ浦フォレスとレースウェイ) 全 18 枚 拡大写真

メッツラーのスポーツタイヤ『スポルテック M7RR』を装着した車輌に跨がると、心なしか車高が高く、足着き性が悪くなった気がしないでもない。なぜならタイヤ外径が大きくなっているからだ。

そのことが功を奏してか、ハンドリングはすこぶる素直である。寝かし始めからフルバンクまで、リーンしていく様子がリニアに変化し、それに伴ってステアリングに内向性が生じる。ライダーは変に修正を加えることなく、ニュートラルなまま狙ったラインをトレースできる。やはり、最近のレーシングタイヤの流れを汲んでいるようだ。

理想的なプロファイルのためにも、タイヤ外径の拡大が必要だったのだろう。でも、伝わってくるフィーリングは大変にしっとりとしていて、ガチッとしたレーシーなハイグリップ感とは対照的である。内部構造によるしなやかさに加え、溝が多いトレッドが弾性に富み、それらが豊かなフィードバックとして伝わってくるのだ。

それでいて、ヨレることは一切ない。トレッドがしっかり動いている様子は、最近のスポーツタイヤにはない懐かしいフィーリングで、優しく感じられる。絶対的グリップはサーキット向きのハイグリップタイヤに及ばなくても、接地感を掴みやすいし、磨耗状態も耐久性に富みそうな印象だ。

そして特に好印象なのが、ウェット路面での走りである。まず、溝の多さによって排水性に優れ、水膜の厚いところでも、しっかりと水切りされていることが伝わってくる。

昨今のスポーツタイヤの多くは、溝を少なくしてドライグリップを稼ぎながら、それなりのウェットグリップを確保している。とは言え、水膜を介した状況で確固たる接地感に乏しいことも否めない。ところがM7RRは、レインタイヤであるかのように自信を持たせてくれる。

しかも、車体を寝かし始めて、踏面がコンパウンドブリッジと呼ばれる中央寄り2列の縦溝に掛かるや、トレッド部のゴムの動きが伝わり始める。タイヤが滑りと食い付きを繰り返し、ゴムがヨレる感じと表現して差し支えない。おかげで、グリップの状態を如実に把握することができるし、いきなり限界を超えそうな不安がない。これはレーシングレインタイヤで攻めたときと同じ挙動なのである。

このM7RRは、スーパースポーツ、あるいはその流れを汲むスポーツネイキッドとの相性が良い。前輪分布荷重が大きめで、高剛性傾向の車体を持つ車輌にマッチングさせているのだろう。だから、ライディングも積極的に前荷重しているスタイルが合っている。

思い切りスーパースポーツらしい走りを楽しみながら、それでいて、ステージはあくまでも公道と現実的。狙いも明確なM7RRである。

和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞の成績を持つ。現在は二輪ジャーナリストとして執筆活動、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。

《和歌山 利宏》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る