【中田徹の沸騰アジア】燃料補助金に悩むインドネシア、モーターショーは38万人来場で盛況

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ジャカルタ市内
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第22回インドネシア国際自動車ショー(IIMS 2014/ジャカルタモーターショー14)が9月18~28日の日程でジャカルタ市内の国際展示場で開催された。

筆者は、IIMS 2014のサイドイベント「第9回 インドネシア自動車国際会議」に参加する機会を得て、インドネシア自動車産業の課題と将来に関する熱い議論の輪に加わった。インドネシアでは近年、インフラ問題や交通渋滞、環境対策などの諸問題が顕在化・深刻化しているが、特に燃料政策の議論が盛り上がった。

2025年、クルマが道路を埋め尽くす?

インドネシアにおける自動車(四輪)保有台数は現在、約1300万台と考えられている。過去5年で500万台程度増えたと推測され、首都圏の渋滞や燃料消費量の拡大の直接的な原因となっている。しかし、四輪車の普及率は依然として低く、今後も保有台数は増え続けることになる。2025年までに2500万台を超える可能性があり、渋滞や駐車スペース、燃料を巡る問題はさらに悪化しかねない。

こうした問題への根本的な対処法はインフラ整備に尽きる。高速道路、幹線道路、公共交通システム(地下鉄等)などの開発が進められているが、汚職などで資金不足となるケースもあり、計画が遅延しているプロジェクトも少なくない。経済環境とインフラの整備状況を天秤にかけると、インフラ整備が10年以上遅れているとも言われる。市民の自動車の購入意欲はかなり高い様子だが、インフラ整備の遅れが自動車市場の成長を押し下げかねない。

燃料補助金の削減は不可避

10月20日に第7代インドネシア大統領に就任するジョコ・ウィドド氏の最初の重要課題のひとつは、燃料補助金の問題である。膨れ上がった燃料補助金が財政を圧迫しているのは周知の事実だ。単純すぎるように感じられるが、燃料補助金として使っていた予算をインフラ投資に回せば諸問題の改善につながるとの期待がある。

ジャカルタでは、2014年9月時点で、ガソリン燃料の小売価格(補助金なし)は約1万2000ルピアとなっている。補助金付き燃料は1リットル当たり約6000ルピア(約55円)で、政府予算の補助金が1リットル当たり6000ルピア付いているが、早ければ今年11月に、遅くとも来年前半までには補助金が半減される(燃料価格が50%引き上げられる)との観測が強まっている。さらに将来的には撤廃される予定だ。

CNG車普及は進むか?

インドネシア自動車国際会議では、産業省やエネルギー・天然資源省、財務省などの高官・担当者が天然ガスの活用促進を目指すべきだとの考えを力強く訴えた。インドネシアはASEAN最大の天然資源生産国だが、1990年代後半から原油生産が減っており、近年では石油製品の貿易赤字が続いている。

一方、天然ガスは毎年50億~150億ドルの外貨を稼ぐ主力の輸出製品だが、これを内需に振り分ける方針だ。石油から天然ガスへのシフトを自動車分野でも進めたい考えで、CNG車の普及に取り組む方針だ。CNG価格の引き上げ(給油事業者の採算性向上につながるとされる)などが検討されている。

モーターショーは活況だが

Holiday Inn Jakarta Kemayoranで行われた自動車会議を離れ、モーターショー会場のJIExpoに足を運んだ。とても盛況だ(入場者数は最終的に38万人を超えた)。小型MPV、LCGC対象車を含む小型ハッチバック、SUVがステージの中央を占めている。ホンダの『モビリオ』と『HR-V』の人気が特に高いようだ。R&Dセンターを設置したばかりのダイハツはコンパクトSUVと小型MPVのコンセプトを発表しており、来場者の関心を集めていた。即売会の性格をもつIIMSだが、成約数が最も多かったのはトヨタ『アバンザ』だった。

JIExpoの熱気を目の当たりにしていると、自動車会議で議論された様々な課題の深刻さなど吹き飛んでしまうようだ。このまま成長路線を真っ直ぐ走っていくのだろう、と思えてしまう。しかし、ホテルのスタッフに教えてもらったジャカルタ中心部のレストランにタクシーで向かう途中、夕方のひどい渋滞に巻き込まれ、あっという間に現実に引き戻されてしまった…やはり事態は深刻なのだと。

《中田徹》

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