【フォード フィエスタ 試乗】全域で隙のない走り、COTY受賞に匹敵する実力…中村孝仁

試乗記 輸入車
フォード・フィエスタ
フォード・フィエスタ 全 16 枚 拡大写真

排気量は997cc、つまり1リットルである。かつてこのジャンルはリッターカーと呼ばれた。まさにベーシックカー。しかし、フォード『フィエスタ』にそのような印象は皆無である。

最高出力は100ps/6000rpmにとどまり少し高性能な1リットルカーという印象だが、最大トルクの方は170Nm/1400~4000rpmと、こちらはNAの1.8リットル級といっても差し支えない。1160kgという車重を考えれば2リットル級といっても良いくらいである。 この設定されたエンジンパフォーマンスが走りを楽しくさせる。 その肝はやはり僅か1400rpmで最大トルクが得られるトルクカーブにあって、現実的にはほぼ全域を最大トルクがカバーしているという感覚。つまり、どこから踏んでもグイグイと加速するのである。感覚的には兄貴分たる『フォーカス』よりも速いのではないかと思えるほどだった。最大トルクがピークを超える4000pm以上になると、今度は最高出力の出番。軽快でスムーズな回転フィールがクルマを力強く押し進めてくれる。だから、走りに関しては全域で隙がない。

エンジン性能はこんな感じで、これと組み合わされる6速のDCTも、オートマチックモードで走っている限り軽快。シフト間のつながりもほぼAT並で違和感はほとんど感じない。実はネガ要素もあるのだがこれは後述する。

車重が1160kgであることは前述したが、乗り味はその軽さとは裏腹なかなりどっしり感がある落ち着いたもの。こうした味を持つところが日本のほぼ同じサイズのクルマと大きく違うところだ。もっとも落ち着き感ではVW『ポロ』には及ばないが。ハンドリングは絶妙である。はっきり言ってこれまで最高と思っていたルノー『ルーテシア』と甲乙つけがたい。昔からヨーロッパフォードの足回りは特にレースで定評があって評価が高かったが、フォーカス同様フィエスタも無類の接地感の高さを示し、安心感が高い。

3サイズは3995×1720×1475mm。室内空間も特に天地方向に高いおかげでたっぷりした居住空間を持ち、これもかつての我慢を強いるリッターカーというジャンルとは明確な違いがある。もっとも人によってはこのサイズで3ナンバーという部分に違和感を感じる人もいるかもしれないが、本気でサイドインパクト、即ち側面衝突の被害軽減を考えればこのくらいは必要なのである。

さて、DCTのネガ要素について、後述すると書いた。実はDCTだから当然マニュアルモードが存在し、マニュアルによるドライビングプレジャーがあってしかるべきなのだが、そのマニュアルモードの切り替えはパドルではなくシフトレバーに付く+/-のスイッチによって行われる。これがやりにくい。シフトレバー前後させる方がはるかに楽。フォードとしてはレバーの動きをHパターンにしたくなかったのだろうが、マニュアルモードの関しては一考の余地がある。

もう一つの問題点はそうした、ドライバーが運転を楽しんでいる時、パッセンジャーは左右に揺られる体を保持しなくてはならないのだが、パッセンジャーを支えるグラブハンドルはなく、ひたすらドアアームレストにつかまって体を保持しなくてはならないのはいかがかと思った。

とはいえ、こうした小さなネガ要素は、出来の良さを考えれば目をつぶれるもの。クルマとしての完成度はカー・オブ・ザ・イヤー受賞に匹敵すると言っても過言ではない。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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