【WEC 第5戦】王者アウディのウルリッヒ代表「6時間レースの結果は最後まで分からない」

モータースポーツ/エンタメ モータースポーツ
アウディ1号車は予選6位。
アウディ1号車は予選6位。 全 8 枚 拡大写真

11日に公式予選が行なわれ、暫定の決勝スターティンググリッドが決まった世界耐久選手権(WEC)第5戦「6 HOURS OF FUJI」。予選後の富士スピードウェイで恒例のプレスミーティングを実施した王者アウディ陣営は、予選5-6位からの反撃を期している。

トヨタとポルシェが1~2列目を占め、アウディが3列目から追いかけるという、昨年までのWECとは異なる雰囲気のグリッド構成となった予選結果を踏まえ、アウディのLMP(ルマンプロト)プロジェクトリーダー、クリス・レインケ氏は言う。「富士のコース特性は、今の我々に有利とは言い難い」。

このコメントの意味を考えるには、今季のWECの“状況”をある程度知らなければならないだろう。今季、現行シリーズとして3年目を迎えたWECの最高峰クラス「LMP1-H」にはアウディ、トヨタ、そして新登場のポルシェという3ワークスが参戦、いずれもいわゆるハイブリッドマシンで覇を競っているわけだが、その中身は各社によって異なる。

まず、エンジンに関しての大きな括りでいえば、アウディの『R18 eートロン クワトロ』はディーゼル・ターボで、トヨタの『TS040 ハイブリッド』はガソリン・自然吸気、そしてポルシェの『919 ハイブリッド』はガソリン・ターボといった具合である。

また、ハイブリッドに関するレギュレーションが今季から改定されており、これも大雑把にいえば、“ERS=エネルギー回生システムのエネルギー放出量多めのコースを選択すると、瞬間最大燃料流量等の制限が厳しくなる”という仕組みで、アウディはルマン1周を基準とした放出量少なめの“2MJコース”を、トヨタとポルシェは多めの“6MJコース”を選択するなど、非常に複雑で多岐多様な状況となっている(MJ=メガ・ジュール。ジュールとはエネルギーや仕事、熱量などの単位)。

これら技術規定は、どういう選択をしても“トータル的には損得なし”ということになっているが、当然そこには得手不得手や個性、あるいは“差”のようなものも生じる。実際、今季のアウディはトヨタに開幕2連敗と、これまでにない「難しいシーズンスタートになったことは事実だった」(アウディ・モータースポーツ代表のウォルフガング・ウルリッヒ氏)。

それでも6月の第3戦ルマン24時間、そしてシリーズ再開初戦である9月の第4戦アメリカ・オースティンを連勝して「マニュファクチャラー選手権ではポイント首位に立ち、ドライバー選手権でも我々の2号車のクルーが首位のトヨタ8号車に肉迫することができた」(ウルリッヒ氏)。この2連勝には雨など展開面のアヤが作用した印象もあるが、チャンスが来た時の王者陣営の勝利への嗅覚の鋭さや判断の的確性を示す勝利でもあった。「これから先もタイトルと勝利を狙ってプッシュしていく」(ウルリッヒ氏)。

レインケ氏は、2MJコースの14年仕様R18には「富士は有利とはいえない」特性のコースだと説明する。また、それとは別次元の話として「富士には長いストレートと、後半のテクニカルセクションの両方があり、とてもトリッキーで難しいコースだ」とも評する。だが決勝に向けては「R18はとても効率のいいドライブトレーンを誇るマシンだし、シミュレーターで充分な準備もしてきている。そして我々にはこの富士をよく知る、もう半分は日本人のような(笑)3人の優れたドライバーもいるからね」と、自信も示した。

日本人のような3人のドライバー、それは1号車のロイック・デュバル、2号車のアンドレ・ロッテラー、ブノワ・トレルイエという、日本のトップカテゴリーで長く活躍した、あるいは今も活躍中の選手たちだ。

トレルイエは「この予選結果自体は、MJのことを考えれば、大きな驚きを感じるものではないよ」と語っており、R18と富士のコース相性についてのレインケ氏の見解を肯定する。ただ、トレルイエはこれもレインケ氏同様、決勝に向けては決してネガティブでない。「予選前の最後のフリー走行では、我々は決勝でのペースにフォーカスしてセットアップ作業を進めた。それが明日、大きな助けになると思う」。

ウルリッヒ氏も「予選結果は期待されたものではなかったかもしれないが、有利とはいえないコースで、やれるだけのことはやれたと考えている。それに6時間レースというのは、それが終わる瞬間まで結果は分からないものだ。ノーミスの完璧なレースをすることで、ライバルにプレッシャーをかけていきたい」と語り、過去2年は勝てていない富士での初勝利をタイトル3連覇への橋頭堡とするつもりのようだ。

富士6時間レースは10月12日の午前11時にスタート予定。3陣営・計6台の頂上バトル、その展開は予選の結果と手応えからだけでは想像できない面が大きいが、LMP1-Hクラス最後方の3列目から、王者アウディはあきらめずに富士戦初制覇を狙っていく。

《遠藤俊幸》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 2.5Lエンジンを搭載する『インプレッサ』登場、米2026年モデルに「RS」
  2. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
  3. 新型アウディ『Q3』のインテリアを公開、「コラム式シフト」と新デジタルコックピットが目玉に
  4. シボレー『コルベット』がニュルブルクリンクで「米国メーカー最速ラップ」樹立
  5. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  3. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. 湘南から走り出した車、フェアレディZやエルグランド…日産車体が量産終了へ
ランキングをもっと見る