【カーオブザイヤー14 選考コメント】“正常進化”ではなく“変革”の i3…高山正寛

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BMW i3
BMW i3 全 6 枚 拡大写真

「今年の一台」を選ぶ日本カー・オブ・ザ・イヤーではあるが「その年だけ」を見ているわけではない。

次の世代のモビリティを考えた場合、環境/安全技術の進化はもちろんだが、個人的にはITSとデザイン、そして素材の3つを重要視している。

それぞれは独立しているわけではなく密接に関連してくるわけだが「実はEVだからBMW『i3』を選んだ」という理由は割合的には高くない。たしかにレンジエスクテンダーの採用により、EVの泣き所である航続距離の問題をかなりのレベルで解決したことは実際の日本での使用状況を考慮すると高く評価できる。

しかし持続可能エネルギーについて考えた場合もEVが次世代の切り札、言い換えれば主役になるか?と問われたら、大手を振ってYESとは答えない。

では何が理由なのか?それは前述した「素材」である。個人的には数年前から「今後は“素材戦争”が自動車ビジネスの鍵になる」旨を標榜してきた。

これまでも軽量化技術に関しては高張力鋼板やアルミ素材の比率向上などがあり、現在もそちらが主流である。しかし、i3の場合は、市販車のアッパーボディにカーボンを採用するという強力な一手を打ってきた。

コスト的にも高く、それ以上に安定した品質や加工技術など超えるべきハードルが極めて高いカーボンをレーシングカーならいざ知らず量販車に使うなど、企業としても一種の“賭け”があったのではないだろうか。

これに伴い、BMWの中に「i」という新ブランドを立ち上げたことも大きい。これだけの企業規模になるとブランドを立ち上げることの難しさ、さらに言えば一種のリスクを犯してまで展開することはかなりハードルが高く、ひとつ間違えれば企業の命取りになる。しかし、それを形に変え、順調なスタートを切っていることは並々ならぬ企業努力の賜物だと感じている。

今回選んだ5台の中には劇的に性能やクオリティが向上したクルマもあった。しかし自分の中でのCOTYの基準はあくまでも“正常進化”ではなく“変革”である。その点でも前述したように量販車ビジネスに次世代の素材とブランドを確立したi3をイヤーカーとして高く評価し10点を入れさせていただいた。

BMW『i3』:10点
マツダ『デミオ』:8点
メルセデスベンツ『Cクラス』:4点
スバル『レヴォーグ』:2点
日産『スカイライン』1点

高山正寛│ ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員
1959年生まれ。自動車専門誌で20年以上にわたり新車記事&カーAVを担当しフリーランスへ。途中5年間エンターテインメント業界でゲーム関連のビジネスにも関わる。カーナビゲーションを含めたITSや先進技術のあらゆる事象を網羅。ITS EVANGELIST(カーナビ伝道師)として自ら年に数台の最新モデルを購入し布教(普及)活動を続ける。またカーナビのほか、カーオーディオから携帯電話/PC/家電まで“デジタルガジェット”に精通、そして自動車評論家としての顔も持つ。

《高山 正寛》

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