まるでバランスボール? 大学の研究室で生まれた面白パーソナルモビリティ「オムニライド」

自動車 ニューモデル モビリティ
ボール式のパーソナルモビリティ「OMNIRIDE(オムニライド)」
ボール式のパーソナルモビリティ「OMNIRIDE(オムニライド)」 全 12 枚 拡大写真

都市部での新たな移動手段や高齢者の“足”として、自動車やバイクなどよりも小型な乗り物「パーソナルモビリティ」が注目されている。既に製品化されているものでは『セグウェイ』が有名だが、自動車メーカー各社も将来のモビリティの提案として研究開発を進める。そんなパーソナルモビリティの新たな可能性が、大学の研究室の一室で生まれようとしていた。

諏訪東京理科大学の星野研究所では、たったひとつのボールを車輪にした画期的なパーソナルモビリティ「OMNIRIDE(オムニライド)」を開発、プロトタイプを公開している。26日、東京理科大学の葛飾キャンパスで体験イベントがおこなわれた。

オムニライドの外観は、直径30cm程度のボールの上にシートとハンドルが着いた非常にシンプルなもの。6軸ジャイロセンサにより3方向の傾きと、倒れる速度を検知、3つのモーターを使いボールを動かすことでオムニライド単体でも倒れずに自立することが可能。操作もシンプルで、進みたい方向に身体の重心を傾けるだけ。車輪ではなくボールを使うことで、前後左右好きな方向に進むことができるほか、路面の傾きも検知することで、坂道でも搭乗者は常に鉛直を保つことができるというメリットがある。

従来のシニアカーのようなパーソナルモビリティは接地性は高いものの、路面状況の変化や段差に弱く、転倒して高齢者の方が怪我をしてしまう、ということがあった。オムニライドはこれを解消するひとつの解として注目される。

実際に試乗してみたが、予想以上に操作は簡単。移動に身体全体を傾ける必要はなく、腰を中心に軽く重心移動をするだけで、進みたい方向に進んでくれる。センサとモータが常にバランスを保ってくれるため、手放しでも転倒の不安は全くない。さらにハンドルを使うことで旋回操作も可能で、説明通りどこへでも進みたい方向に進むことができた。

最高速度は6km/h。歩行者とほぼ同じ速度だ。これにもこだわりがある。研究室を束ねる星野祐准教授は「パーソナルモビリティは他の歩行者とコミュニケーションを取りながら利用するのが正解なんです。だから歩行者と同じ速度にしました。激走してしまうと危険ですし、人が離れていってしまいますよね」と話す。

技術的には特に目新しいものではない、と星野氏。「意外とポピュラーな技術なんですよ。モータ配置はソニーさん、玉乗りのアイデアはホンダさんと、既存の技術の組み合わせなんですね。これをどういう風に製品にするか。ただ、まだまだやれることは沢山あって、独自性があるものを作れると思っています」。

「いずれは市販もしたい」と星野氏は話すが、課題は多い。「現状、公道を走ることができません。認可されなければ商品化もできない。企業と連携して施設内で走らせたり、自治体の限られたエリアで使って頂くとか、手を挙げて頂けることで初めて商品化につながるんです。まずはそこから。どう市民に提供していったら良いか、つくばを中心に議論が進められている所です」。

商品化に向けて、今後さらに2台のプロトタイプを開発する予定だという。1台は現在のものをベースに、サスペンションやクッションを追加し乗り心地を向上させる。さらに、ボールに溝を加えるなどして濡れた路面などでも走行できるようにする。そしてもう1台は、ボール式ではない駆動方式になる、と星野氏は語る。「ボールは面白いんですが、長い運用を考えると摩耗した時に直径が変わってしまい、噛み合いが悪くなるとどんな影響が出るかわからない。ボール式としての完成形は作りますが、まだまだ色んな形を研究する必要があると思っています。新しいスタイルを提案していきたいですね」。

星野氏を中心に数名の学生によって約2年を掛けて開発されたオムニライド。夢は東京オリンピックの選手村でのデビューだという。2020年にどのような姿で我々を驚かせてくれるのか、非常に楽しみだ。

《宮崎壮人》

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