NTTドコモの光回線セット割、「auスマートバリュー」が直撃を食らう?

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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第64回 NTTドコモが光回線セット割発表!「auスマートバリュー」が直撃を食らう?
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 NTTドコモは、携帯電話回線と光ブロードバンド回線のセット契約で毎月の利用料を割り引く「ドコモ光パック」の提供を2015年2月に開始することを、10月31日に開催した決算会見で明らかにした。

 これは、NTT東西地域会社の光ブロードバンド回線の卸売り解禁を受け、NTTドコモがNTT東西から光回線を借り受けて独自ブランドで光ブロードバンドサービスを提供する形態を取り、携帯電話回線と光ブロードバンド回線の両方をセットで契約する顧客に対して割引サービスを提供するものとなる。NTTドコモが提供する光ブロードバンドサービスは「ドコモ光」というブランド名で提供し、下り最大1Gbpsでサービスを行う。ISP(インターネットサービスプロバイダー)は「多様なものが選べる」としている。

 この「ドコモ光パック」の具体的な割引内容は公表していないが、NTTドコモの携帯電話(スマートフォン)とセットでの契約に対して割引を行うという。また、今夏から提供が始まったNTTドコモの新料金プランと組み合わせることで更なる割引を打ち出す。また既存のNTT東西などの光ブロードバンド回線契約者の場合、セット割を利用するには光ブロードバンド回線をNTTドコモの提供する「ドコモ光」に乗り換える必要がある。

 携帯電話とブロードバンド回線をセットで加入することで料金を割り引くセット割は2012年よりKDDIが「auスマートバリュー」を開始し、ソフトバンクも追従する形で「スマホBB割」を提供してきた。一方で、NTTグループは電気通信事業法による規制のために携帯電話回線とブロードバンド回線のセット割を提供することができなかった。

 これまで、KDDIは携帯電話回線と光ブロードバンド回線のセット割である「auスマートバリュー」によって多くの顧客を獲得してきた。今や、家庭でのブロードバンド回線やスマートフォンの活用は生活に欠かせないものとなっており、実際に筆者の周辺の一般的な家庭の利用回線などを尋ねても、KDDIが提供するセット割はスマートフォンMNP時のキャッシュバックと合わせ、非常に魅力的に感じているようだった。KDDI、ソフトバンクとも、従来はNTT東西が敷設した光ブロードバンド網を借りることで、インターネットサービスを提供してきた。しかし、これまでNTT東西が他事業社に光ブロードバンド回線を貸出す際には「1芯貸し」とし「1分岐(回線)」ごとに貸出さなかったため、KDDIやソフトバンクなど回線を借り受ける側の事業者にとっては空き分岐が発生するリスクがあり、積極的な光ブロードバンド回線の拡販ができなかった。

 このためKDDIは、「NTTに頼らない光回線を」と、当時独自に光ブロードバンド回線を提供していた東京電力の光事業「TEPCO光」を吸収し、「auひかり」として提供、これを携帯電話回線とセットで契約することで割引とする「auスマートバリュー」を打ち出すに至っていた。一方のソフトバンクは独自に光ブロードバンド回線を持っておらず、ADSLなどとの組み合わせによるセット割となり、KDDIに対して十分な対抗割引施策を打つことができない。

 こうした中、NTT東西の光回線などサービス卸の是非を巡って、総務省の「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会」で議論され、これを容認する旨の答申案が10月20日に出たばかりだった。

 NTTは約10年前の2004年11月に、2010年までに光ブロードバンド回線の加入者数3,000万件という目標を掲げ、それに向け光ファイバー網を整備してきたが目論み通りにはいかず、2013年3月末時点で整備率が97.5%まで進んだもののその利用率は50.7%に留まり、加入者数も2014年春時点で1,800万件程度に留まっていた。こうした背景もあり、光ブロードバンド回線の普及率を高めるためにNTT東西の光ブロードバンド回線の「サービス卸」の話が進んだようだ。前述の通り、これまでのNTT東西にによる「1芯貸し」では借り受ける通信事業者にとって不利な条件となっていたが、「サービス卸」となれば借り受ける通信事業者は1契約ごとに回線の販売(契約)が可能となる。今回、NTTドコモがこのNTT東西の「サービス卸」を使って独自ブランドによる光ブロードバンド回線を提供するが、これはNTTドコモに限らずソフトバンクにとってもビジネスのチャンスが訪れる。

 しかしながらNTT東西は「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会」の答申に先だち10月16日にサービス卸の提供条件を公表しているが、その中で「提供料金は機密保持契約を結んだパートナー企業にだけ開示する」として公表を拒んでいる。このため、KDDIやソフトバンクなどは「不透明である」として猛反発している。この「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会」の答申案に対するパブリックコメントは11月19日まで募集されており、そうしたコメントを参考にしながら、サービス卸の透明性の確保は総務省の裁量で決定することになり、早ければ11月中にも明らかにされる。

 今回、NTTドコモが発表した「ドコモ光」「ドコモ光パック」の提供に関しては、こうした動きをもとに利用料金等は今後決定するとして、いち早く公表したののと考えられる。また、NTTドコモの発表に対して、ソフトバンクも31日夕方に対抗サービスとしてソフトバンクモバイル、ソフトバンクBBの連名で、NTT東西の光ブロードバンド回線の卸売りを受けた光ブロードバンドとの「セット割」の提供をリリースしている。

 また業界関係者によれば、今回NTTドコモが「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会」の答申案がでた段階で、いち早くこうした光ブロードバンド回線の提供やセット割を打ち出した背景には、既存顧客にとって不利益ともいえるMNP契約者向けキャッシュバック販売施策をけん制する意味もあったとされる。近年目に余るようになった、行き過ぎたMNPキャッシュバックに関して、2014年3月をもってキャッシュバックを収束させるという各通信事業者同士の内々の申し合わせがあったとされている。このため4月以降はMNPキャッシュバックによる無謀なスマートフォン販売が一段落していた。しかし今夏以降再びKDDIとソフトバンクはキャッシュバックを増額し続けており、これがNTTドコモの怒りを買ったとも言われている。

 NTT東西がNTTドコモやソフトバンクに対してどのような条件で「サービス卸」を行うか次第ではあるが、唯一、NTTグループ以外で光ブロードバンド回線と携帯電話をセットで提供することで有利に立っていたKDDIにとっては穏やかなニュースではなさそうだ。

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《木暮祐一@RBB TODAY》

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