『メガーヌ』のしなやかなサスペンションは、すでに周知のとおりである。さらにホイールベースの長くなったエステート(ワゴン)となれば、まさに大船に乗った気分といえる。しかし、このGTは少し違う。なにせGT。6速MT。ダッシュボードには「ルノースポール」の文字が見え、インパネにはカーナビもない。走るためのGT。脚はびしっと硬めなのである。
ただ、硬さにもいろいろ種類がある。内臓をゆらすもの、脳天に響くもの、ただ硬いだけで不愉快極まりないもの。そこへいくとこのサスペンションは、脳を心地よく刺激する硬さといえる。脳を揺らすじゃなくてよ、お間違えのないように。眠っていた本能を呼び覚ますというか、もうちょっと自分、できんじゃないの? と思わせる快感が湧き出てくる刺激なのである。確かに硬いんだけど、サスペンションが上下にしっかり動いていて、クルマ全体をぴしっと締めているというか。
そんなサスなもんだから、クルマは安定し、ハンドリングは軽快になり、気がつくとヤバイくらい速度が出ている。体感速度と実速度がこんなに違い、しかもあっという間に差がつくクルマもめずらしい。正直なところ、危ない。スピードリミッターを自己設定できるようになっている理由は、きっとこれではないかと推測する。
AT慣れした身としてMTの不安は、坂道発進とエンストだが、ヒルスタートアシストで坂道で後ろに下がる怖さはないし、アイドリングストップ機能があるためエンストさせても、クラッチさえ踏めばすぐに再スタートしてくれる。めっちゃ便利である。こういうクルマに乗るたびに、MT復権を強く願ってしまう。こんなクルマが、もっとばかすか売れれば日本も面白くなるのになあ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。