【ダンロップ WINTER MAXX 試乗】高いグリップ力と応答性で、雪上・氷上運転時の安心を…斎藤聡

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ダンロップ WINTER MAXX 試乗
ダンロップ WINTER MAXX 試乗 全 12 枚 拡大写真

ダンロップは、独自の考え方やノウハウに基づいて技術開発し、タイヤづくりを行っている。いわゆるエコタイヤについてもそのアプローチの仕方は独特で、転がり抵抗の低減もさることながら石油外天然資源でタイヤ造りを行うといった独自の視点を持っている。

スタッドレスタイヤも同様で、他メーカーが吸水性能によって氷とタイヤの間に発生した水膜を吸い取り除去しようとするのに対し、ダンロップはスタッドレスタイヤ開発初期から水を弾くゴムを採用することで、氷とタイヤの間の水膜を弾き飛ばして密着、グリップさせる撥水ゴムをスタッドレスタイヤの氷上性能の基盤技術に置いている。

『WINTER MAXX』を一言でいえば「氷上性能重視型スタッドレスタイヤ」ということができるが、数世代前のような単純な性能特化ではなく、ロングライフ性がよくなり、雪上トラクション性能も良くなっている。ちなみにロングライフ性は先代『DSX2』の1.5倍に伸びているという。すべての性能を高めながら、特に氷上性能を高めているといったほうが表現としては正確かもしれない。

◆あらゆる路面での操縦安定性を向上、優れた排水性も確保

さて、そんなWINTER MAXXのウリである氷上性能は、どんな技術によって高性能を作り出しているのだろう? その代表的な技術が「ナノフィットゴム」と「MAXXシャープエッジ」だ。ナノフィットゴムというのは、高密度シリカと柔軟剤を配合したコンパウンド。マクロ領域ではブロック剛性が高く、ナノ領域では柔軟にアイスバーンの凹凸にゴムが追従密着してグリップ性能を作り出している。ダンロップでは4D NANO DESIGNと呼ばれる3Dに時間軸を加えた4D(Dimension=次元)で解析・設計を行う材料開発技術を開発。これがナノフィットゴムを生み出したのだという。

MAXXシャープエッジは、サイプ(極細溝)の加工技術で、25%の薄溝化を実現した。ダンロップが採用するサイプはミウラ折りと呼ばれる3D形状で、この溝を薄くすることで大きな力が加わった時のブロックの倒れ込みを抑制し、小さな変形には柔軟に変形を許容する。MAXXシャープエッジはサイプを薄くしたことで大きな力が加わった時でもブロック剛性を高く給えるので、その分サイプの量を多くしてより適切なブロック剛性が作り出せるようになった。つまりサイプのエッジ総力を増やし、ひっかき性能を高めながら、剛性を高く保ったトレッドブロックを作ることができるようになったということ。

これに加えて、ケース及びトレッドパターン設計によってロングライフ性能や雪上性能、ドライ性能など様々な性能アップが図られている。

ケース設計では、平衡形状プロファイルと呼ばれるタイヤ内の側面形状にすることで、タイヤの変形のしかたをコントロール。あらゆる路面での操縦安定性を高めている。またトレッド面剛性は、タイヤセンター部のブロック剛性を低く、タイヤ両サイド、とくにタイヤのアウト側ショルダー部のブロック剛性を高くすることで、ドライ性能を向上させている。さらに接地面圧を整えることで接地面圧の均一化を図り、偏摩耗を防ぎタイヤライフを大幅に伸ばしている。

トレッドデザインは左右非対称デザインで極太ストレート溝と同じく極太のギザギザ溝を基調に、さらに両サイドに配置された2本の縦溝と、太い横溝の構成になっている。ショルダー部に剛性の高いブロックを配置することでドライ路面での操縦安定性を高めるとともに太い縦横の溝でシャーベット雪の排雪性や排水性を高めている。とくにスタッドレスタイヤのウイークポイントといわれる排水性に関しては、ハイドロシミュレーションを駆使して優れた排水性を確保しているという。

◆車速を上げてもしっかりとしたグリップ感、雪上での応答性も良好

試乗した印象は、氷盤路を低速で真っ直ぐに走っているときには、手のひらを広げるように、広いトレッド面が氷の路面をホールドしている、あるいは捉えているような感触がある。独特のグリップ感であり安定感がある。かすかに加速したり、ハンドルを切り出すと、サイプの機能なのだろうエッジが効いたような引っかかり感が加わり、グリップしている感覚が強くなる。

面白いのは、車速を上げていった時。…といっても氷盤路では20~30km/hくらいが精いっぱいだが…。そうした状況でも、タイヤは転動しながらいつも路面をダイレクトにとらえている感覚があり、多少タイヤに滑りが混じってきてもエッジが引っ掻いたり、タイヤのゴム自体が氷をこすっているようなグリップ感がある。タイヤのケース設計の効果なのか、ハンドルを切り出したときの応答がよく、素直にクルマの向きが変わってくれるのも走りやすく感じる要因だろう。氷の路面では謳い文句どおりにグリップ感…それも独特のグリップする感触がしっかり感じられた。

じつは氷上と同様に雪上での印象がよかった。ハンドルを切り出した時の応答の良さは雪上でも同様で、握りこぶし一個以下の小舵領域でハンドル操作に応答してクルマの向きが変わってくれる。そのため必要以上にハンドルを切る必要がなく、シンプルな操作で思いどおりにクルマが走ってれる。とくにスラロームなどを行った際の、最初の切り出しや切り返しの反応の良さがよい。

またハンドルを90度くらい切った時の舵の効きも良い。横溝がうまく機能して手応えを出しているのだろう。ハンドルを90度くらい切り込んだところから、さらに握りこぶし一個か2個分切り足した時にも反応してくれるので、ハンドル修正がやりやすい。

ドライ路面を走っていないので、その印象は何とも言えないが、締まった圧雪路を走る限りは、トレッド面剛性もケース剛性も不足なく普通に走りやすそうだ。氷上重視型といいながらすべての性能をきちんと向上させ、より冬道で走りやすいスタッドレスタイヤに仕上がっていると思う。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

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