「リアル世界でオペレーションできてこそITの後押しが効く」…トヨタカローラ徳島 北島社長

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トヨタカローラ徳島代表取締役の北島義貴氏、米国セールスフォース・ドットコム エグゼクティブバイスプレジデント、最高自動車業界責任者 パトリック・ペラタ氏が対談。
トヨタカローラ徳島代表取締役の北島義貴氏、米国セールスフォース・ドットコム エグゼクティブバイスプレジデント、最高自動車業界責任者 パトリック・ペラタ氏が対談。 全 8 枚 拡大写真

12月4日、ザ・プリンスパークタワー東京にてクラウドコンピューティングイベント「Salesforce World Tour Tokyo」が開催された。

同イベントでは、トヨタカローラ徳島代表取締役の北島義貴氏、米国セールスフォース・ドットコム エグゼクティブバイスプレジデント、最高自動車業界責任者(CAO)パトリック・ペラタ氏が対談した。

「20年前、トヨタカローラ徳島は、カローラ店チャネルの中でも地を這うような販売店だった」と振り返る北島氏。しかし現在では、同社は数々の表彰をされるほどの有力販売店にまで成長したという。

同社はセールスフォースが提供する新しいソリューションを初めて採用したディーラーでもある。セールスフォースのサービスによってディーラー業務に何か変化があったのか。以下、二人の対談を要約する。

◆ホット客だけでなく見込み客を把握する

北島:セールスフォースのサービスを採用したことで、経営者視点で特に変わったことが3つある。

1つ目は、これまでは“結果としていくら儲かったか”しかわからなかったのが、様々なKPIをもとに店舗の状況を把握できるようになった。営業活動や収益も時間単位で、その日に締めたデータが翌日には整理でき、スマートフォンで、会社全体、個人、店舗と、様々な指標についてレベルダウンしたデータを確認でき、判断にスピード感が出る。

2つ目はこれまでは把握できなかった、“潜在顧客と見込み客の把握”。すぐに買ってくれるホット客の管理はこれまでもおこなってきたが、見込み客までは把握できなかった。だがセールスフォースの仕組みを使うことで、一軒一軒一人ひとりのお客様がどういう状況にいて、誰とどういったコンタクトを取っているかがわかるようになった。その情報を、商談や、お客様とのコンタクトの優先順位づけに生かしている。

3つ目は営業スタッフの仕事のやり方が変わったこと。当然ながらお客様との窓口は営業スタッフが担うが、この際、メンテナンスなどがより早い段階に準備できるようになった。

ペラタ:我々が提供できるものには物理的な意味での自動車という“モノ”と顧客への責任などを指す“コト”の二つがある。北島氏にとっての新しい“コト”とは?

北島:クルマは100km/hで走って曲がって止まる“モノ”。その商品自体はトヨタから提供されるわけですが、世の中の本当にたくさんのお客さんに供給されるものというのは販売チャネルも複数あり、クルマの併売もすごく増えてきているのが現状。そうすると、クルマというモノ自体は“どこで買っても同じ”になってしまう。

お客様には100万円以上もするモノを買っていただいているのであって、我々の商品に楽しさや便利さ、家族の幸せなどをお客様ごとに提供することが重要となってくる。自動車という製品だけを引き渡す以外の、付加価値の提供はお客様の傍にいるディーラーだからこそできること。ここで差別化できなければ、うちで『プリウス』を、あるいはうちで『アクア』を買わなくてもいい、という話になってしまう。お客様から見た価値が変わってきていることをしっかりと認識することが大切なポイントだ。

ペラタ氏:今後の自動車販売ビジネスについてどう思うか?

北島氏:今述べたような、モノ以外のところでの付加価値をつける必要性が高まる傾向はさらに強くなっていくだろう。今後日本の人口は減り、クルマの数も減っていく。ただ、そんな中、革新的なクルマが次々生産されてパワートレインが変わってしまったとしても、我々が何万人と向き合ってきた、培ってきたお客さまとの関係は変わらないはず。

トヨタ自動車の豊田社長は我々にもっといい車をつくろう、と常に呼びかけていますが、それはクルマの“モノ”としての側面だけでなく“コト”も含めて社会の役に立つべきことを意味しているはずだし、自分も社会の役に立ちたいと思う。お客様と一番近いところにいるディーラーとして、時代とともにカタチが変わっても、我々に何か役割があり続けると思います。

ペラタ氏:モバイル、ソーシャルや検査に関するビッグデータにおける革命が起きていることついてどう感じるか?

北島氏:変化が起きていること自体は認識していて、自分の販売店の営業の現場でも、スタッフが順次導入されるモバイルやタブレットを用いて商談するようになっている。これらツールとの向き合い方がこれからどうなるか。私は、これだけやれば大丈夫というものはなくて、会社全体としてオペレーションであったり型であったり、一つ一つの仕事のやり方、それも会社としてのビジョンが先立っている流れがあってこそ成り立つものだと思っている。リアルの世界でちゃんとしたオペレーションがあってこそITの後押しが効く。クルマの両輪みたいな関係だ。

ペラタ氏:私の理解では、日本の市場はすでに成熟しているものの、強いアセットは持っていると認識している。今後どのような追加サービスによって成長できると思いますか?

北島氏:今のクルマと同じ機能を果たしている乗り物ってあるでしょうか。代わるモノがあるでしょうか。クルマのようなドア・トゥ・ドアで雨にも濡れずに自由に移動できる商品が、社会においてそこ10年や20年で廃れていくものではない。“モノ”だけでない、“コト”の部分での価値提供を通じることできちっと一段一段階段を上っていけるだろう。具体的にはメンテナンスなどの点で、現状よりも快適な代理店機能のあり方があると思うので、メンテナンスパッケージなどの形で今後も進めていきたい。

《まとめ・構成 北島友和》

《北原 梨津子》

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