86 / BRZ でサーキット走行を楽しむには?…スポーツシートと専門ショップの重要性

自動車 ビジネス 国内マーケット
AREA 86(ネッツ東京 HUB PORT若林)
AREA 86(ネッツ東京 HUB PORT若林) 全 28 枚 拡大写真

トヨタ『86』およびスバル『BRZ』は、初心者でもラインオフの状態でサーキットでのスポーツ走行が楽しめる車だ。とはいうものの、いきなりワンメークレースなどに出るのはハードルが高い。まずはサーキットの走行会イベントなどの参加が手頃だろう。

86の場合、「AREA86」という専門ショップが、地域ごとのトヨタ販売会社(トヨタ、カローラ、トヨペット、ネッツ)に1店舗ずつ展開されており、そこで相談することができる。

◆チューニングからレース参戦まで、専任スタッフが相談に乗ってくれる

AREA86には「マスタースタッフ」と呼ばれるチューニングやレース参戦についての知識を持つスタッフが常駐し、86ユーザーやトヨタ車ユーザーのチューニングやスポーツ走行などの相談に応じてくれる。取材に協力してくれたネッツトヨタ東京の場合、世田谷区若林のディーラー店舗2階がAREA86となっており、車両やパーツの展示の他、試乗にも対応している。また、前述のように、86や『ヴィッツ』でサーキット走行を体験したい、ワンメークレースに出たいといった相談も可能。

特徴は、整備やチューニングもディーラーで行うため、保安基準に対して厳密に準拠していることだ。そのため、安全性に対する信頼はもとより車検の心配もいらない。AREA86 マスタースタッフの二方治氏によれば、パーツ交換もディーラー基準で行うため、検査場の違いで通るか通らないかわからないといったこともないそうだ。また、チューニング、カスタマイズを始め86を楽しむための情報発信を行う拠点であり、アフターサポートのために運営されているので、パーツを買わないからといって遠慮することはないという。

また、ネッツトヨタ東京として、86/BRZのワンメークレースに参戦もしているが、2014年は同店の86オーナーの参戦の支援も行ったという。通常、レース参加となるとクラブやチームに所属して、ピット要員などチーム体制で臨む必要があるが、それでは個人が気軽にレース参加することは難しい。ネッツトヨタ東京のAREA86では、個人で参加したい人を応援する意味で、ディーラーチームがレース中のピット作業を手伝うというサービスを行っている。

◆ディーラー基準の安全性と信頼

実際に多いのは、カスタマイズに関する車検相談だそうだ。さらに、ジムカーナ場での走行イベントやB級ライセンスの講習会なども開催しており、これらの参加や相談も受け付けている。

他に「スポーツ点検」というサービスも実施。通常の定期点検メニューに加え、スポーツ走行や走行会を前提とした点検・整備を行ってくれるという。走行会でも、サーキットを走ると車には相当な負担がかかる。以前は、購入したディーラーでも、走行会だからといってもそのような整備メニューがなく対応してくれないところが普通だったが、このようなサービスは非常にありがたい。

走行会に参加するオーナーには初回からカスタムパーツを勧めることはなく、まずはノーマルでサーキットを体験してもらうようにしているという。86の場合、ノーマルでもサーキット走行が楽しめる性能を持っているからだが、同店でメカニックを担当する金井雄一氏は、その理由を次のように説明する。

「まずはノーマル状態で参加してもらい、その性能や限界を体感してほしいと思っています。そうすると必ず、もっとグリップするタイヤがほしい、ブレーキをどうしたい、といった声がでてきます。その体感に基づく要望に応えることが重要だと思っています。体感したことでチューニングを行い、その効果や結果も体感する。そうすることで、車とドライバーのレベルアップをサポートできたらいいですよね」。

まさに車との対話を楽しむというスポーツカーの醍醐味でもある。

◆サーキットで本格スポーツ走行にトライするならまずはシート交換を

同店で相談が多いパーツはタイヤ、マフラー、シートだという。サーキット走行では、まずタイヤについての要望がでてくることが多いが、もうひとつ重要なのはシートだ。サーキット走行では、通常の運転では考えられないGがかかり、ノーマルシートでは体を完全にホールドできない。また4点式シートベルトの装着にはバケットタイプのシートが基本。サーキット走行で適切な運転姿勢を保つためにも、安全のためにも考えたいパーツのひとつだ。

純正シートを交換する場合、サーキット走行を考えるならホールド性を確保するため通常はフルバケットシートとなるが、車検対応を考えるとリクライニング可能なセミバケットシートも候補となる。またレース専用車ではなく普段の足やドライブにも利用するならセミバケットシートのほうが断然使い勝手がよい。とくに86の場合、2ドアなので保安基準の面と後席からの乗り降りも考えたい。

◆スポーツ走行入門でオススメのセミバケは

セミバケットのスポーツシートの選択肢として考えられるのは、レカロやスパルコ、BRIDE(ブリッド)だろう。

たとえば、レカロのスタンダードモデル『SR-7 LASSIC』は8万4240円からあるが、快適性や質感を求めるなら、もう一ランク上の価格帯を選択したいところだ。スウェード調素材の『Sportster』は 20万5200円からで、樹脂一体成型のシェル構造を採用し、薄型かつデザイン性の高さが特徴。また、スパルコの『R600』(アルカンターラ)も20万8000円となる。

20万円アンダーという魅力的な価格ながら優れた機能性や強度を実現して評判を呼んでいるのが、BRIDE『ストラディアII』だ。スウェード調生地ながら、価格は16万5240円から(スウェード調でないストラディアII SPORTは13万6080円)。シェルにはスーパーアラミド繊維を採用し、軽量ながら強度も確保している。日本ブランドと国内生産による信頼感も高い。

さらに、車検対応をメーカー側で謳うモデルとなるとそれほど選択肢は多くなく、国産メーカーだと必然的にBRIDEとなる。AREA86でも扱っている商品であり、86ワンメークレースのディーラーチームの車両にも採用されているということもあり、86との相性や信頼性も万全と言える。

ストラディアII は、背もたれの角度調整がノブ式のダイヤルで簡単に行える。バケットタイプのリクライニングはダイヤルをぐるぐる回して角度を無段階で調整するタイプが多いが、ストラディアIIはダイヤルをひねった状態で、ノーマルシートのように背中で角度調整ができるので便利だ。また、ロープロファイルのシートレールによって20mmほど低いポジションがとれる(レールの厚みを減らすことにより、低い着座姿勢を実現している)。

◆安全性への配慮も重要

スポーツ走行でロープロファイルが好まれるのは、視点をより遠くにもってこられるからだ。高速走行では視野が狭まると同時に、より遠くを見た状況判断が重要であり、視点が近すぎると安全な運転ができない。また、ステアリングコラムと足のスペースも広がるので、ペダル操作もしやすくなる。さらに、ルーフが低くフロントシールドが寝ているスポーツタイプの車の場合、ノーマルシートの高さだとヘルメットと干渉するという問題もある。

なお、シート交換する場合は、シートレールごと交換するのが鉄則だ。ノーマルレールが使えるタイプや汎用レールも存在するが、強度試験や型式認定のデータはシートとレールがセットで行われるため、安全性を考えた場合は同一メーカーによるセットで交換したほうが良い。ちなみに、他社製品どうしを組み合わせた場合、着座位置からステアリングやペダルがオフセットされた状態になることがあるが、BRIDEのレールは車種ごとにステアリングの中心にシートの中心がくるように設計されている。意外と盲点だが、自分でシート交換などしたことがある人は、このメリットは大きいと感じられるだろう。

車検対応、リクライニング機構、着座の高さ、乗り降り、シート交換だけでも注意すべきポイントはたくさんある。また、「シート交換はサイドエアバックも取り外すことになるので、AREA86では交換時にはしっかり確認をとるようにしている」(二方氏)とのこと。ホールド性が向上するため乗り降りは確実にノーマルシートより面倒になる。しかし、ジャンボジェットのパイロットも乗り降りはシートをスライドさせるという。スポーツカーやレーシングカーの乗り降りはシートの位置を下げてから行うのが「常識」だ(金井氏)。そして、乗り込んでからシートを調整することで、集中力を高めレースモードに切り替えるのがかっこいい。こういったマインドを楽しむのもカスタマイズしたスポーツカーならではと言える。

カスタマイズは安全にも関わるため、AREA86のような専門家のいる店舗でしっかり相談して、スポーツ走行を楽しんでほしい。

《中尾真二》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産 リーフ 新型をライバルと比較…アリア、テスラ、bZ4Xと何が違う?
  2. 15歳から運転できる「小さいオペル」に興味アリ!「通勤用にこういうのでいいんだよ」など注目集まる
  3. 【スズキ ソリオ 新型試乗】乗り心地と静粛性はクラストップ、だが「損をしている」と思うのは…中村孝仁
  4. ついにハイブリッド化! 新型トヨタ『ランドクルーザー300』の発表にSNSでは「バク売れの予感」など話題に
  5. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る