【インタビュー】マツダデザインと建築はどのように融合したのか…目黒碑文谷店リニューアル

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関東マツダ 目黒碑文谷店(東京都目黒区)
関東マツダ 目黒碑文谷店(東京都目黒区) 全 16 枚 拡大写真

店舗をリニューアルし、1月3日に営業開始する関東マツダの目黒碑文谷店。輸入車ディーラーも多い目黒通りに面したここは、マツダが進める「新世代店舗」の10店目であると同時に、「マツダブランドを発信・体験する拠点」という役割も担う。

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そこで建築設計には新たにサポーズデザインオフィスの谷尻誠氏を起用。マツダ本社のデザイン本部監修の下、従来の新世代店舗とはひと味違う店舗デザインが生まれた。なぜ谷尻氏を選んだのか? 外観デザイン誕生までにあったやりとりとは? マツダの前田育男デザイン本部長と谷尻氏に話を聞いた。

前田氏(以下敬称略)「都内では洗足店がすでに『新世代店舗』になっていますが、今回の目黒碑文谷店は場所柄も考えて、もう少しトンガったデザインの店舗にしたい。ただし、トンガるとはいえ、スタイリッシュになりすぎて敷居が高い感じになってもいけない。そういうデザインが得意な建築家を探しているとき、谷尻さんの作風に惹かれたんです。敷居を上手に下げて、自然な気持ちで入っていける空間を創るのが、すごく巧い人だな、と」

谷尻氏は広島出身の40歳。建築事務所勤務を経て、00年にサポーズデザインオフィスを設立した。広島と東京にオフィスを持ち、国内外で活躍する気鋭の建築家。住宅から商業空間、インスタレーションまで多岐にわたる仕事に、柔軟な発想力で取り組んでいる。

前田「オレが作品を創るのだから黙っていてくれ…ではコラボレーションできない。谷尻さんに初めて会ったとき、この人なら我々の思いを汲み取ってくれると直感した」

しかし最初から巧くコラボが進んだわけではなかったようだ。谷尻氏の1回目の提案は、ネガカーブ(凹面)の大きなガラス面をつないだ外観デザイン。前田氏はそれを拒否した。

前田「ネガカーブを主体に造形するというのは、我々の常識ではありえない。他のブランドならあるかもしれないけれど、マツダではダメです、と」

谷尻氏は当時を次のように振り返る。

谷尻氏(以下敬称略)「ポジカーブ(凸面)を使うと、丸くて可愛らしい建築になってしまうのではないか? マツダが魂動デザインで目指しているものと逆行するのではないか、と考えていたんです。そのときカーデザインのネガポジ論を、前田さんに教えていただいて…。ネガカーブに続いてポジカーブがあると、お互いが助長し合うんですね。我々にはそういう発想がなかった」

前田「ネガカーブでも円弧的なものはダメ。そこにちょっと勢いをタメるような曲率変化を入れると…なんて話を谷尻さんにするわけですよ。それは建築でする話なのか? と思いながらもね(笑)」

1回目の提案は、1階の道路側をセットバックし、その上に2階をオーバーハングさせたのも特徴だったという。

谷尻「前田さんから、もっと安定したカタチにしてほしいと言われました」

前田「クルマのデザインでいちばん大切にしているのはスタンスですから」

谷尻「そのスタンスという言葉の意味も、クルマと建築では違うんです」

前田「カーデザインの世界には、安定したカタチのロジックがある。それを延々とお話しさせてもらって…。ここはブランドを体現する店舗だということもあって、スタンスは譲れないという思いでした」

谷尻「クルマと建築の違いが面白かった。今の社会では、いろいろなものが混ざり始めていますよね。携帯電話はカメラのようでもあり、パソコンのようでもある。建築を建築だけの概念で捉えるのではなく、そこにカーデザインが影響を及ぼしてもよいと思います。ここのショールームも、ちょっとカフェのようであったり、住宅のようであったりする。そういう境界線が曖昧な状況にこそ、現代性があるのではないかと考えています」

二人が議論を重ねた結果、谷尻氏の2度目の提案を前田本部長が了承。これが最終案のベースになった。

谷口「敷地の形状は問題児だったけれど、問題児が巧く成長すると天才になる。もともと”難あり”だったので、そこに潜む可能性を発揮させようと考えました」

隣りにあるガソリンスタンドをよけるように、店舗の敷地はL字型となっている。そんな変形の敷地を巧く活かし、建物の道路側をS字にカーブさせてダイナミズムを醸し出すデザインが生まれた。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは審査委員長を務めた。

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