ジーンズ姿は気楽だけど、やっぱり場違いな思いをしたくないから、せめてジャケットを。それと同じような考えでコンパクトなセダンを求める人は、それなりの数が存在することだろう。ところが、実際に売っているクルマは、妙に地味だったり、古くさかったりして、どうにも食指が伸びない。そんな残念な思いを経験したことのある人でも、ホンダの新型ハイブリッド『グレイス』であれば、考えを改めるかもしれない。
1モーターを内蔵したDCTと1.5リットルエンジンを組み合わせたハイブリッドシステムは『フィットハイブリッド』同様の最新のシステムだ。小さなモーターは最初の一歩や負荷の小さい巡航時、加速のアシストに徹する。エンジン主体のパワーフィールは、エンジン車になれた人に違和感が少ない。また、走行中に頻繁にエンジンを停止させるハイブリッドならではの静粛性の高さも魅力だ。
ボディやインテリア系は、すべてグレイス専用。キリッとしたセダンらしい姿形をしている。5ナンバーサイズのFFボディならではの取り回しの良さと、意外に広い室内を両立させているのは見事なもの。LEDライトやシートヒーターなど装備類もしっかりと揃っているのも嬉しい。
走らせて楽しかったり、速いクルマではないけれど、セダンならではの凛々しさと高い実用性がある。しかも中身は最新。もちろん燃費性能も優秀だ。「年輩の人向けだから、アフォーダブルで、コンサバに作っておけばいいでしょ」なんていう惰性のようなクルマづくりではなく、「最新の技術を使って、熱意を込めて作った」という意気込みが感じられた。小さなセダンを見直すきっかけになるクルマだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★
鈴木ケンイチ|モータージャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材、ドライブ企画まで幅広く行う。いわば全方位的に好奇心のおもむくまま。プライベートでは草レースなどモータースポーツを楽しむ。