1月14日に開催された「オートモーティブワールド2015」の基調講演。フォルクスワーゲンの機能電子部門を指揮してきたフォルクマン・タンネベルガー氏が、「オートモーティブエレクトロニクスの革新」をタイトルにカーエレクトロニクスシステムの今と今後について語った。
タンネベルガー氏は、2001年VWに入社して以来同社グループの電子電装戦略のもとマルチメディア技術革新室を率い、機能電子部門の責任者として乗用車、商用車のコントロールユニット開発の陣頭指揮を執ってきた。2006年から電子電装開発部門を統括、2009年より電子電装モジュラーシステム戦略の責任者を務めた。
◆2020年には半数を占める、カーエレクトロニクスの重要性
冒頭でタンネベルガー氏は、乗り物における電子電装機器が創出する価値はおよそ30%を占め、また2020年には約50%に上ると推測されていること、今後“つながるクルマ”の売上が2015年の310億ユーロから2020年には1100億ユーロへ約4倍となると予想されること、またその割合を新車販売に占める割合でみると“つながるクルマ”が50%から70%を占めることを説明した。
さらにはイノベーションにも言及。自動車製品のイノベーションのうちの90%は電子装置関連分野でおきることが述べられ、今後クルマづくりに革新をもたらす上での電子・電装機器の重要性が強調された。
◆「クルマが覚えてくれる」VWの駐車支援システム
タンネベルガー氏は冒頭にて「Driver Assistance Systems(運転支援システム)」、「Car -Net(カーネット)」、「Concepts for Human Machine Interface(ヒューマンマシンインターフェースのためのコンセプト)」、「Swarm Intelligence(群知能≒クラウド)」の4つのテーマを提示。
このうち1つめの運転支援システムを支えるテクノロジーにはレーダー、カメラ、無線LAN、プロジェクション、超音波の5つがある。これらをクルマの全方位の適所に配置し活用することにより安全な運転支援システムができる。ただ、同時に競合に差をつけながら重量やCO2排出量を減らさなければならない点、環境に優しく、かつ手ごろな価格帯に抑えなければならないなどの課題も意識していなければならない。こういった複雑に達成すべき課題と活用できるテクノロジーが混在する。この文脈で特筆すべきアピールポイントとしたのが“駐車支援システム”だ。
クルマが一直線に連なっている中で停めなければならない状況にも対応し、衝突を避けるための自動ブレーキが介入する。また、開発中の技術としては「クルマが駐車するまでの走路を覚えることで、やがて駐車を半自動でおこなうことができるようになる」という。
2つ目のテーマであるカーネットに関しては交通情報「Guide and Inform」、スマートフォン上のアプリケーションと繋がること「App connect」、電気自動車向けに、クルマの充電状況を把握し管理することができること「E-Remote」、緊急時の通報システム「Safety and Service」の4要素を挙げながら今後拡大を予定する機能について述べた。
「スマートフォンは言うまでもなく私たちの毎日の生活の必需品となりつつある。不幸にも、事故の危険があるにもかかわらず、運転中にスマートフォンを使う人までもいる。例えばE-Remoteはスマートフォンによって充電や空調、車内の快適さをコントロールできるようにすることを意味するように、フォルクスワーゲンはスマートフォンとつながる準備ができている」と言及する同氏。
さらには2018年以降に(100%の)完全な“つながるクルマ”とするための機能導入のロードマップが説明された。Guide and InformやSafety and Serviceは2013年導入、2014年にはE-Remote とApp-Connectを導入する。
◆コネクティビティの今後 e-Callがカギか
また2018年までにコネクティビティを加速する特筆すべき変化としては車両緊急通報システム「e-Call」の法定化が挙げられる。e-Callは今後欧州で義務化されるかもしれないシステム。同システムは車両事故等が発生したときに、緊急コールセンターを介して最寄りの警察や消防へ自動で通報されるもの。事故状況により、音声通話が不可能な場合や意識が喪失されている時でも、GPSにより正確に位置が把握され、位置情報とともに警察や消防へと知らせる。
e-Callシステムが法律により義務化されることは、クルマがインターネットに接続されることの義務化を意味する。「e-Call」の法定化はクルマのコネクティビティが急速に加速される際のカギになりえる。