【池原照雄の単眼複眼】ホンダ減益、輸出の“激ヤセ”が響く

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埼玉製作所寄居工場 完成車組立
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北米に強いホンダに円安下の異変

ホンダが1月30日に2015年3月期の業績予想を下方修正し、連結営業利益は従来比500億円減額の7200億円(前期比4%減)とした。3%の増益予想から一転して3期ぶりの減益となる。タカタ製エアバッグなどのリコールに伴う影響が出たが、国内販売の下方修正による日本での生産減も収益を圧迫する。2年前までの超円高時から絞り込んできた輸出の“激ヤセ”が国内生産の柔軟性を奪っている格好だ。

日本の乗用車メーカーの今期業績は、北米市場の回復や円安の追い風で、8社のうちトヨタ自動車など5社が営業利益および純利益で最高を更新する見込み。そのなかでのホンダの減益は、依然として北米への依存度が高い同社には、ちょっと考えられない異変だ。

岩村哲夫副社長によると、営業利益500億円の減額修正の減益要因は、リコールなど品質関連費用が500億円、日本および中国での販売下方修正分が700億円。これに対する増益要因は為替の円安による700億円であり、差し引き500億円の修正となった。国内販売は、今期初めには103万台と初めて大台を狙う計画だったが、直近では82万5000台規模と、約20万台の下方修正となった。

理想の生産構造からほど遠い日本

これは13年秋以降に投入した『フィット』などのハイブリッド車でリコールが相次いだため、新モデルの発売時期を延期したことが響いたものだ。ここにも「品質」が影を落としているわけだが、問題は国内生産の構えが柔軟性を欠いていたことにある。それはやせ細ってしまった日本からの輸出に端的に現れている。

2014年暦年のホンダの国内4輪車生産は、95万8200台(前年比14%増)と2年ぶりにプラスに転じ、最低維持ラインとする100万台の復活へ近づいた。だが、このうち輸出は前年を75%も下回る3万1300台に落ち込んだ。輸出比率はわずか3%余りであり、いずれも50%強のトヨタおよび日産自動車と比べると極端さが分かる。恐らく、ホンダもここまでのスリム化を企図したわけではなかろう。

同社が目指す世界各国での理想の生産体制は「8~9割を自国で販売し、残り1~2割を他の国や地域と補完する」(岩村副社長)という姿だ。しかし、08年のリーマン・ショック後の超円高下で生産の海外展開を加速した結果、日本は「理想」からかい離した体制となってきた。つまり、軽を中心に躍進を続ける国内販売に余りにも依存した生産体質となってしまった。岩村副社長も「国内販売減少分の代替生産の準備が十分でなかった」と反省する。

為替変動にスピーディーに対応する柔軟性

一方で、この1年にインドネシア、メキシコ、インドで相次いで新工場が立ち上がったという事情もある。この新3工場のフル生産能力は合計で44万台に及び、アジアと北米の供給力は大きく高まった。自動車産業では、人材育成や採算性の面からも新工場の稼働を優先させるのは当然で、日本からの輸出減を加速させることにもなった。

この結果、かつては対米ドルの変動への感応度が高かったホンダだが、足元は鈍感になってきた。1ドルにつき1円の変動による営業利益(年間)への感応度は、リーマン前の08年3月期に200億円だったのが、今期は120億円程度となっている。この間、トヨタは一時的な変動はあったものの400億円レベルのままだ。

岩村副社長は30日の決算発表会見で、日本についても「他地域と同じような生産補完ができる体制を構築するよう取り組んでいる」と強調した。つまり、輸出量の回復である。自動車産業にとって通貨変動に対する業績の安定を目指す「為替フリー」の体質づくりは、終わりのないテーマだ。しかも、かつてのように単に消費地生産を拡充するだけでは不十分であり、為替変動にスピーディーに対応できる「柔構造」も重要になっていることを、ホンダが示している。

《池原照雄》

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