10日に開催されたマクラーレン・ホンダの会見において、ホンダのF1プロジェクト総責任者である新井康久氏は、将来的な複数チーム供給の可能性に触れつつも「今はマクラーレンとのワークス関係において成果を出すことに集中」との旨を語っている。
一昨年5月のF1復帰正式発表以降、将来的な複数チーム供給の可能性も表明してきたホンダだが、その方針は現時点でも変化していないことが新井氏によって語られた。もちろんこれはホンダの方針というよりは、F1界全体の流れとして、パワーユニット(PU)供給メーカーは複数チーム供給を望まれる状況となっているから、という面が大きい。
新井氏は「他のPU供給メーカー(メルセデス、フェラーリ、ルノー)は複数チーム供給をやっていますので、いずれそういう時が来るだろうと思っています」と話し、さらに「そういう声がチーム側からかかるようにしたいと思いますし、そうなった時にはなるべく応えられるようにしなければ、とも思っています」と続けた。ただ、現時点では「このシーズン(復帰初年度の15年)を乗り切るという意味で、まずはマクラーレンとのワークス関係で成果をあげることに集中したい、そう思っています」と、当面は“マクラーレン・ホンダ”に全力傾注する決意を強調してもいる。
ちなみに現時点で「(マクラーレン以外のチームからの)オファーはありません」とのこと。2月上旬のヘレス合同テストでは「謎のホンダ、というところが(他チームには)ますます深まったようです」とも新井氏は語っており、現状は参戦各チームも新たなホンダ製PUのパフォーマンスをまずは様子見、という段階のようだ。
ホンダ製PUに具体的な興味をもつチームが現れ、実際に供給チームが増えれば、日本人ドライバーの登用にもつながりやすくなるのは道理。そういった展望のためにも、やはりまずは“ワークス”マクラーレン・ホンダの今季の活躍に期待がかかるところである。
新井氏はマクラーレンとの共闘体制の現状については、「互いにリスペクトし合いながら、いい意味でいろいろと言い合える今の状態はとてもいいと考えています。そういうなかからイノベーションというものが生まれるのですから」と語り、充実感を滲ませた。
なお、ホンダは昨年初頭からF1を含む4輪モータースポーツ関係の国内研究開発拠点を栃木県さくら市に移設している。マクラーレン・ホンダに加入したフェルナンド・アロンソらも絶賛の新施設、通称さくらへの移行状態は、新井氏によれば「100パーセントではないです」とのことだが、これは従来拠点があった同県内の通称・栃研(栃木研究所)においても作業が継続されている部分があるため、と考えてよさそう。新施設の真価が発揮され得る稼動状況になったことも確かと考えてよく、マクラーレン・ホンダの躍進に大きな貢献を果たすことが期待される。
今季開幕前のF1合同テストはあと2回で、2月19日~22日と2月26日~3月1日に、いずれもスペインGP開催コースであるバルセロナでの実施が予定されている。マクラーレン・ホンダの熟成度合いが世界的にも最大の注目点となることは間違いない。