「ドコモ光」スタート…キャリアを乗り換えるユーザーを引きとめる策とは

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2014年10月にドコモ光を発表した代表取締役社長 加藤薫氏
2014年10月にドコモ光を発表した代表取締役社長 加藤薫氏 全 6 枚 拡大写真
 NTTドコモによるNTT東西のフレッツ光を用いた光回線の「光コラボレーションモデル」(以下、「光コラボ」)を活用したモバイル回線とのセット販売「ドコモ光」がいよいよ16日より受付開始、そして3月1日からサービス提供が開始される。

 NTTドコモは2014年10月31日に開催された2014年度上期決算発表会壇上で、この「ドコモ光」を2月から開始する計画を発表。その受付も2014年12月には始まるとされていたが、NTT東西の回線卸価格に不透明なところがあり、自由民主党の「情報通信戦略調査会」から待ったがかかったため延期を余儀なくされていた。

 このブロードバンドとモバイルのセット販売による割引については、これまで一定の市場占有率を超える通信事業者(具体的にはNTT東西とNTTドコモ)に対し「その電気通信業務について、特定の電気通信事業者に対し、不当に優先的な取扱いをし、若しくは利益を与え、又は不当に不利な取扱いをし、若しくは不利益を与えること」を禁止した「電気通信事業法第30条」の存在により、NTTが提供を見合わせてきた経緯がある。

 この規制を緩和しようという動きに、2014年4月2日には本来ライバル同士であるKDDIとソフトバンクモバイル、そしてイー・アクセスの3社が合同で記者会見を開催する異例の出来事さえ起こった。そんな経過を辿りつつ、NTT東西は「光コラボ」としてあらゆる通信事業者に光回線を卸す体制を整え、NTTドコモがいよいよ3月1日より「ドコモ光」としてモバイル回線とのセット販売を開始する。

 NTTドコモのほかに、ソフトバンクモバイルも同様に「光コラボ」を利用して光回線をセットにしたセット割を3月1日から開始予定で、初めてほぼ同じ役務を提供する会社同士、同じ土俵で勝負ができる環境が整うことになった。

■インターネットはもはや必要不可欠なインフラに

 わが国は、世界の中でも最も光回線網の整備(世帯カバー率)が行き届いた国とされている。一方で、これまで光回線はNTT東西(フレッツ光)およびKDDI(TEPCO光など電力系光回線事業を吸収合併したものや、電力系事業者独自に提供しているものとの提携など)が、なかば独占的に提供してきたため、なかなか通信料金が引き下がられず、カバー率こそ高くても、普及率はやや伸び悩んだ状態が続いて来た。

 そんな中で、KDDIは2012年3月から、光回線を含む固定回線とモバイルをセットで契約することでスマホ等の利用料金から最大2年間、毎月1,410円を割引く「auスマートバリュー」を打ち出し、加入者の獲得と増収に成功してきた。また、ソフトバンクモバイルも同様に、スマホ等の利用料金から最大2年間、毎月1,522円を割引く「スマホBB割」を展開してきた。

 もはや一般家庭にとってもブロードバンドは必要不可欠なものとなっており、同様に生活必需品となった携帯電話やスマホとセットで契約することによる割引の恩恵を受けられるとなれば、消費者にとってこれほど魅力的なものはないはずだ。実際に、総務省の家計調査によると2013年の携帯電話の通信費(携帯電話とスマホなどの合計)は全世帯平均83,099円。前年比で2%増え、3年連続で過去最高を更新している。これは10年前の1.4倍に膨らんだ金額となる。また固定回線等を含む家計支出の通信費総額は年123,596円と最高で月10,000円を超える計算となっている。

 またマイボイスコム「携帯電話料金に関する意識調査」によれば、家計の中で『ここ数年で費用が増えていると感じているもの』の筆頭は 「携帯電話・スマートフォンなどの通信費」で59.0%となっている。一方『節約したいもの』 では、「ガス・水道・光熱費」59.3%に次いで「携帯電話・スマートフォンなどの通信費」56.3%で2位という状況である。家計の中で通信費こそ「費用が増えている」と感じ、同時に「節約したいもの」となっていることがうかがえる。すなわち、「通信料金が節約できる」ことはあらゆる家庭において歓迎される要素といえる。

 今回のNTT東西による光回線卸「光コラボ」がスタートすることで、NTTドコモに限らず、ソフトバンクモバイルや、その他のISPもこれまでより安価に光回線を利用できる環境が整った。これにより固定回線とモバイルのセット売りの競争は、大手3キャリア以外も含め、ISP+MVNOのコラボも含め一段と競争が激化し、消費者にとっては大きな恩恵となりそうだ。

 光回線とのセット販売で、これまで大きな成功を収めてきたのがKDDIだが、今春よりようやく同じ土俵で3キャリアが戦えるようになった。では、それぞれのサービスにどのような違いがあるのだろうか。

■複雑で簡単には比較できない「セット割」料金体系

 固定回線とセットで契約することで、同時に契約しているスマホ等の基本使用料が一定額割引になるKDDI「auスマートバリュー」、ソフトバンク「スマホBB割」に対し、NTTドコモが発表したセット割は極めて複雑で損得を比較しづらい。

 KDDI及びソフトバンクモバイルのセット割との違いを一言でまとめると、KDDI、ソフトバンクモバイルは、同時契約するスマホ等の回線ごとに割引が適用され、その額も大きく一見お得に見えるが、契約後2年間は割引率が高いが、その後は割引額が減少される。一方、NTTドコモは家族単位の割引となり、その割引率も他の2キャリアに比べ低く感じるが、その割引が永年継続する期間限定無しのセット割が用意されている。

 携帯電話やスマートフォンは比較的短期間(昨今では2年を目安)で買い替えるケースが多いが、固定回線は引越しなど何らかの事情が無い限り、契約を見直したり、ましてや通信事業者を変更するようなケースは稀である。ドコモはこの点に着目し、短期的な割引よりも、長期間の割引によって顧客に満足してもらおうという戦略に打って出たのであろう。

 実際のところ、既存の光回線契約者はフレッツ光が全国約1,900万世帯、日本のインターネット契約世帯の約70%とされており、このユーザーが他の固定回線事業者(具体的にはauひかりなど)に乗り換えようとしたならば、手続きの手間もさることながら、切り替えの際に一時的にブロードバンドの使用ができなくなったり、宅内通信機器の交換や諸設定の変更などを余儀なくされる。

■「ひかり電話」の契約が必須ではないドコモ光

 今回、NTTドコモの「ドコモ光」では、NTTドコモ独自のISP「ドコモnet」のほか、OCNやSo-net、BIGLOBEなど19社のプロバイダーに対応し、既存のフレッツ光契約者の大半が、そのまま契約しているISPを活かしながら、NTTドコモのモバイル回線とのセット割を可能としている。いまだに多くの一般家庭のブロードバンド利用者は、既存契約のISPの提供するメールアドレスを利用しているケースが多い。この場合、ISPが変更になると、諸設定の変更だけでなく、メールアドレスの変更なども余儀なくされる。

 「ドコモ光」は対応プロバイダーであれば、こうした既存契約の「転用」も可能とすることで、ユーザーの手間を最小限にとどめることができる。また、ドコモ光は「ひかり電話」の契約を必須としていないところでも他キャリアと差別化を図る。現代においてはあえて固定電話回線を使わないユーザーも増えている。セット割で、モバイル回線と同時利用を前提とし、また家族間通話は無料の時代において、もはや固定電話回線は不要と考える世帯も多いはず。わずかな金額であるが、ひかり電話が不要という世帯にはメリットがありそうだ。

 あるいは、固定電話は既存のNTT固定回線を利用し、電話番号を維持したいというユーザーにも歓迎されよう。万が一の停電時でも、回線経由で給電可能な電話機があればNTT固定電話を非常時の連絡手段として確保できる。ご存知の通り、ひかり電話は停電してしまっては、通話もできない。また、固定電話からひかり電話への番号ポータビリティーは実現しているが、ひかり電話にした後に、契約している固定回線事業者を変更した場合に電話番号を引き継げるという保証はない。固定電話の電話番号を変えずに使いたいというユーザーにとっては、あえてひかり電話に変更せず、NTT固定電話を維持したいというニーズも考えられる。

 いずれにしても、固定回線とモバイル回線をまとめて契約するのがお得というのが今後のトレンドとして間違いなさそうだ。また、ドコモ光の場合、2014年夏にスタートした新料金プランと合わせてスタートしたパケット通信を家族でシェアできる「シェアパック」のパックプランに応じて割引率を変えている(ここが複雑に見える点でもあるが)。いわばスマホのデータ通信が従量制へと移行した中で、ユーザーの間では、無駄なパケット通信の利用を控え、Wi-Fiが利用できるところではなるべくWi-Fiに「オフロード」するという使い方が広く認知されるようになってきた。こうしたタイミングだからこそ、固定回線とセットでお得となる「セット割」は一層注目されていくものと考えられる。

 さらに考え方によっては、「光コラボ」の提供開始によって、固定回線とモバイル回線の主従が逆転したと考えることもできる。もはやインターネットへのアクセス手段で最も身近な手段はスマホといえる。モバイルが通信手段の中心となり、それに付随して固定網やブロードバンド網を付加サービスとしてセレクトする、そんな時代に変わる大きな変革のタイミングが来たといえるのかもしれない。

■NTTドコモの勝算は地方にあり

 10日、携帯3キャリアの2014年4月~12月期決算が出揃った。NTTドコモによると、2014年4月~12月期の売上高は3兆3,267億円となり、前年同期比で1.1%のマイナスを記録。これはKDDIの3兆3,519億円を下回り、3キャリア中で最下位となる結果だ。純利益は3,818億円と、これも前年同期比11.2%の大幅なマイナスを記録している。これは2014年夏にスタートした新料金プランの導入による音声通話収入の減少が響いたものとされている

 しかし、音声通話収入はこれまで年々下落が続き、昨今は契約者1人当たりの売上高(音声ARPU)が2,000円台まで低下していた。言ってみれば全ての契約者が新料金プランに移行すれば、従来の収益を維持できる設計になっていたと思われるが、2014年のうちに新料金プランに切り替えたユーザーの多くは、音声通話ARPUがもともと高く、新料金プランに切り替えることで毎月の通信料を大幅に抑えられるユーザー層が中心だったと考えられる。今後、順次既存の旧料金プランのユーザーが、スマホの買い替えなどのタイミングで新料金プランに移行して行けば、黙っていても収益は改善されていくはずである。

 それに加え、今回スタートする「ドコモ光」は、2年ごとにMNPを利用して通信キャリアを乗り換えるユーザーの引き止めにも有効に作用するであろう。都心部では、単身暮らしのユーザーも少なくなく、モバイル回線のみで用が足りてしまうので、ブロードバンドなど固定回線を契約していないユーザーも少なくないはずだ。そうしたユーザー層は今後もMNPなどを利用する流動的ユーザーとなりそうだが、一方でファミリー世帯では固定回線は必須であろうし、その契約状況を見るとNTT東西のフレッツ光の契約率が前述のとおりまだまだ高い。これらフレッツ光を契約しているファミリーがISPなどを変更することなくドコモ光を選択してモバイル回線とまとめることで、家庭全体の通信料を低減させられる点は大いに魅力に感じるはずだ。

 さらに地方に行くほど、NTTおよびNTTドコモのブランド信仰は強い。光回線にしてもモバイル回線にしても、地方におけるそのエリアの充実度でNTT東西およびドコモに勝る事業者はない。そうした地方こそ、まだまだ光回線の普及率は高いとは言えず、ドコモ光というセット割のスタートによって、これを機に住居でのブロードバンド回線を光回線に切り替えるというユーザーもそれなりに見込まれると思われる。

 「光コラボ」のスタートと同時に、これをNTTドコモやソフトバンクモバイル、さらに既存ISPなどが利用することで、光回線とモバイル回線(MVNOを含む)のセット割で、モバイルを中心に通信キャリアを選ぶというのが今後の主流になりそうだ。実はかつて、NTT東西が電話局の顧客カウンターを設け、固定回線の契約手続きや、関連製品の販売などを行っていたが、現在は「116」による電話受付のみにして、窓口業務を行わなくなった。そういう意味では、ドコモショップ店頭が、今後NTT東西の窓口に代わる役割を果たすことにもなる。

 ユーザーがどう流れるかさまざまな見解があるが、地方のブロードバンド&モバイルの利活用状況を日頃から見ている筆者にとっては、大都市圏以外ではNTTドコモが比較的優位にユーザーの獲得を進めて行くと見ている。2014年4月~12月期決算で3キャリア中最下位に転落したNTTドコモであるが、固定回線との「セット割」が切り札となり、これが収益の改善の足がかりとなるはずだ。

ドコモ光、16日より受付開始……固定とモバイルの主従関係が逆転する時代へ

《木暮祐一@RBB TODAY》

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