【VW e-up! 試乗】「誰でも乗れる電気自動車」ならばもう少し安く…松下宏

試乗記 輸入車
フォルクスワーゲン e-up!
フォルクスワーゲン e-up! 全 12 枚 拡大写真

フォルクスワーゲンから電気自動車の『e-up!』が日本市場に投入された。フォルクスワーゲンの方針は電気自動車を特別のものにせず、普通のクルマと同じように扱い、だれにでも乗れるクルマにするというものだ。このため既存のup!をベースに電気自動車のe-up!を作っている。

専用の電気自動車を作るより、開発コストが少なくてすむし、そもそもフォルクスワーゲンはMQBによってガソリン車だけでなくハイブリッド車や電気自動車も前提にしたプラットホームを作っている。

電気自動車専用車なら、例えばBMW『i3』のように特徴的なクルマを作れるが、BMWと違ってフォルクスワーゲンはその道を選ばなかった。

e-up!はエネルギー容量18.7kW/hのリチウムイオン電池(重量:230kg)を床下に搭載する。最高出力60kW(82ps)、最大トルク210N・mの動力性能を持つ小型モーターに最大374Vの電圧を供給する。これによって12.4秒で時速100kmに達し、最高速は時速130kmに達するという。

フル充電時の航続可能距離はJC08モードでは185kmとされている。この数字が走行条件や気象条件によって異なるのは言うまでもない。ドライビングプロファイル機能により、ノーマル、エコ、エコ+を選ぶことができ、モードの選択によって航続距離を伸ばすことができる。

充電は200Vの普通充電とチャデモ方式の急速充電に対応している。日本のすべての充電装置メーカーの仕様に対応させるのに、かなりの苦労が必要だったという。

外観デザインは部分的に専用デザインとされているが、ガソリン車との相違点は少なく、ボディサイドのデカールなどを見ないと、e-up!であることに気付かないかもしれない。

インテリアはインパネ回りの表示系が電気自動車用のものになり、メーターパネルにはスピードメーターのほかに電池の残量計と電気の出入りを示すパワーインジケーターが配置されている。いろいろな車両情報を表示する「タッチ+モア」と呼ぶ液晶画面がシフトレバーの先に配置され、シートヒーターが標準装備されて、エアコンの操作パネルが専用のものになることなどがガソリン車との相違点である。

システムをスタートさせ、ノーマルモードで走り出すと、相当に力強い加速が得られる。これはまさに電気自動車の加速だ。電気自動車なのでエンジン音が聞こえてこないから基本的にかなり静かだが、走行中はロードノイズや風切り音などがけっこう入ってくる。騒音は電気自動車にしては大きめの印象だった。

ドライブプロファイルによる走行モードはセンターコンソールのスイッチで切り替える仕組み。モードによって最高出力&最大トルクや加速性能、最高速度などに違いがあり、エコ+を選ぶと出力が40kWに抑えられる。通常時はこの状態で距離を稼ぐ走り方で良いと思う。ただし、エアコンが停止するので夏場には使えない。

ブレーキエネルギーの回生システムも切り替えが可能とされている。これはシフトレバーを左右に動かして操作する仕組みで、ブレーキ回生をしない状態のほか、回生はD1~D3とBの4段階の切り替えが可能だ。

最も強く回生をするBを選んでも、i3ほど極端な回生ではないので、エンジンブレーキ感覚の減速を得ながら航続距離を伸ばしたいなら、これを選ぶことになる。通常は状況に応じてD1からD3を選んで走るのだろう。

乗り心地は割と落ち着いた感じだ。電気自動車は一般に、重量物の電池を低い位置に搭載することで、乗り心地に優れるクルマが多いが、e-up!もその例に漏れなかった。低重心であることによる走りの安定感も満足のいくものだった。

e-up!の価格は366万9000円。輸入車ではあるものの、三菱『i-MiEV』はもちろん日産『リーフ』に比べてもかなり高めの印象である。だれでも乗れる普通の自動車をコンセプトにするなら、もう少し安い価格設定にしてほしいところである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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