【マツダ CX-3 試乗】デザイン性と運転する楽しさを満喫できること間違いなし…青山尚暉

試乗記 国産車
マツダ CX-3
マツダ CX-3 全 15 枚 拡大写真
『CX-3』のコンセプトは「都市型ライフスタイルクロスオーバー」。

2WD/4WDをそろえていても、その流麗でクーペライクなスタイリングからも分かるように、いわゆる本格”ヨンク”ではない。SUVお約束のフェンダーフレアを装着してはいても、あくまでSUV風味のクロスオーバーなのである。

何しろ最低地上高は160mm(『CX-5』は210mm)で『アテンザ』と同じ。『フィット』ベースのクロスオーバーSUV『ヴェゼル』でさえ185mmだ。

パワーユニットは『デミオ』と同じ1.5リットルのクリーンディーゼル「SKYACTIV-D」のみで勝負(デミオ用に対してトルクアップ)。それだけに、「ガソリン車があったら買うのに」なんていうフレーズをユーザーに言わせてはならない。

そのひとつの解決策が、ディーゼルを意識させる、走りだしの3.5kHz前後に振動のピークがある耳障りなカラカラ音の封じ込みだ。そこで世界初の「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を新開発。ピストンピン中空部分に共振を打ち消すダンパーを封入しノッキング音を低減。最大15dBの静粛性向上に成功したという。とはいえ、ノッキング音が完全に消えたわけではない。音質を変えることで気にならなくする、というのが本当のところで、効果は1500回転以下、時速40キロ以下で分かりやすいという。

ちなみにそれはXDツーリング以上の6AT車にイノベーションパッケージとして、減速エネルギー回生システムのi-ELOOPとセットオプション設定される(6万4800円)。デミオではi-ELOOPのみで6万4800円だから、実質0円。なんだか携帯電話の料金設定みたいだ。ここでベースグレードのXDやMT車に設定はないのか!? それはけしからん!と思う方もいるかもしれないが、目くじら立てる必要なし。理由は後述する。

ラインアップは2WD/4WD、それぞれに6ATまたは6MTが組み合わされ、下からXD、XDツーリング、XDツーリングLパッケージが用意されるが、まず乗ったのは例のナチュラル・サウンド・スムーザー付きの18インチタイヤを装着するXDツーリングの6ATモデルである。

ボクの好みでシートハイト調整を最下端位置にして走りだせば、インパネがデミオということもあって、こだわりの赤い刺し色の加飾が高級感、上質感を感じさせてくれるものの、運転感覚は極めて乗用車的だ。ちなみに身長172cmのボクの場合、シートハイトアジャストレバーを5回ほど引いてシート座面を上げると設計基準のニュートラルポジションになるということだが、そうすれば視界が高まり、SUVらしさを味わうことができる。

デミオだったら気になっているであろう出足、駐車場内の移動シーンではさすがにカラカラ音はほぼ気にならない。エンジンが1500回転を越えると多少、カラカラし、”ディーゼル車に乗ってます感”が出てくるが、そもそも最新のベンツ『Cクラス』の直噴エンジンだって、燃費を追求した結果カラカラ音が発生するのだから、どうということはない。

加速力は穏やかで車重を感じさせるものだ。デミオ用をトルクアップしたパワーユニットとはいえ、デミオより110kgも重いのだから当然だろう。CX-5の2.2リットル版とは違い、ディーゼルエンジン特有の図太いトルクを期待すると拍子抜けするかもしれない。とはいえ、同排気量のガソリンエンジンと比べれば、ゆとりがあるのはこちらのほうだ。

操縦性は、例えばデミオやヴェゼルと比較するとゆったりしている。それはサスペンションセッティングが2WDはオンロードメイン、4WDは雪道走行にも配慮し、よりストロークあるもので、初期ロール量がやや多めになるのに対処したためだろう。もっともカーブなどでそれを感じるのはステアリング切り始めの一瞬で、そこからは実にリニアで、前輪スリップ予兆検知システム採用のオンデマンド4WDがもたらす落ち着き感と低重心感に満ちたコーナリングを味わせてくれるから安心安全、気持ちいい。運転する楽しさを満喫できること請け合いである。

18インチタイヤを履く乗り心地はビシリとしてはいるが、キツイ段差やゼブラゾーンを走破しても至って快適。しなやかにストロークするサスペンションの良さもあり、不快な突き上げなど皆無に近い。そのあたり、強靱なボディー剛性を基本に、1550mmの低全高・低重心からサスペンションを固めずに済んだことの恩恵だろう。

カラカラ音を含め、後に乗った、ナチュラル・サウンド・スムーザーなしの2WDモデルの方がはるかに静かに感じられるのは、4WDは2WD比たかが20kg増しとはいえ、そもそも重い車体を1.5リットルエンジンで引っ張るため、交通の流れに乗ろうとすると自然とアクセルを多めに踏む必要があり、エンジンの音と振動に不利な”ゾーン”に入りやすい、というのが理由のようだ。

だからナチュラル・サウンド・スムーザーに過度な期待は禁物。その効果が発揮されるのは、くり返すが走りだしの場面に限られる。さまざまな仕様に試乗したが、SKYACTIV-Dそのものが熟成され静粛性が高まったこともあって、ナチュラル・サウンド・スムーザーの有無の差を感じにくかったのも事実。ディーゼル感という点ではむしろ2WD/4WDの差のほうが大きく、2WDならナチュラル・サウンド・スムーザーがなくても、車内にいる限り、終始、ノッキング音などほとんど気にならない仕上がりなのだ。もし、ディーゼル嫌いの人が4WDモデルに乗って100%満足できなかったとしても、CX-3をあきらめることはない。2WDモデルに試乗すれば目から鱗が落ちるかも、だからだ。

それはともかく、4WDモデルでもクルージング状態での全体的な静粛性の高さはハイレベル。主に室内に侵入するのはロードノイズと低全高ゆえのわずかな風切り音だけ。内外装のデザイン性や質感の高さと合わせ、クラスを超えたドライビングフィールを味わうことができるCX-3は、だからダウンサイザーやSUV好きな女性ユーザーにもぴったりだと思える。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★


青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。

《青山尚暉》

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