【フォード マスタング 試乗】アメリカ流の味わいも、最新の技術も…大谷達也

試乗記 輸入車
フォード マスタング 50イヤーズエディション
フォード マスタング 50イヤーズエディション 全 30 枚 拡大写真

古くからのクルマ好きだったら、いまから40年以上も前に初代トヨタ『セリカ』が2代目フォード『マスタング』をお手本として生まれたことを知っているだろう。

当時、日本車メーカーはGMやフォードといったアメリカの自動車メーカーを先生と仰いでいて、クルマのキャラクターだけでなくモデルラインアップまでアメリカ流を真似したものだ。

けれども、こうした潮流は1980年代に入ると一転し、日本車メーカーはヨーロッパ流のクルマを作るようになる。もちろん例外はいつの時代にもあるものだが、大まかにこう言ってまず間違いはないはずだ。

すると不思議なもので日本国内の自動車技術までヨーロッパ車流がトレンドになっていき、OHVのエンジンとか、固定車軸式のリアサスペンションとか言われても博物館に飾られているクルマの話をしているようで、なんだかピンとこなくなってしまったのである。

ただし、アメリカ自動車産業の名誉のためにいっておくと、アメリカのエンジニアたちはヨーロッパや日本では過去のものとなったそうした技術をいまも大事に磨き続け、古い技術だなんてことが信じられないくらい洗練されたクルマを作り上げることがある。

だから、形式が古いからといって見下してはいけない。彼らは、私たちとは微妙に価値観が異なる自動車文化のなかで生きているのであって、その製品も独自の発展を遂げてきたと捉えるべきなのだ。

そういった視点から先ごろ6代目に生まれ変わった最新のマスタングを見つめてみると、リアサスペンションが固定式からインテグラル・リンク式と呼ばれる独立懸架に変わったことと、直4 2.3リットル直噴ターボのダウンサイジング・エンジンを採用したことの2点に最大の特徴があるように思う。

「なーんだ、結局ヨーロッパ式に変わったんじゃん」というなかれ。きちんとアメリカ流の味わいを残したまま最新の技術を取り入れているので、乗れば紛うことなきマスタングだし、そのうえでいちだんと洗練度が増しているのである。

たとえば足回りは、山道を飛ばしたときのしっかり感がこれまで以上に向上して、コーナリングでタイヤが滑り始めるかどうかという領域でも安心してステアリングを握っていられるようになった。にもかかわらず、街中を走っているときのゴツゴツ感もひどくない。つまり、ハンドリングと乗り心地のバランスがぐんと引き上げられていたのだ。

フォードはダウンサイジング・エンジンのことをエコブーストと呼んでいて、車重が2トンもあるフルサイズSUVのエクスプローラーにも直4 2.0リットルのエコブーストを搭載しているのだが、これが実に力強い走りを見せてくれることからもわかるように、車重1660kgのマスタングに最高出力314psの2.3リットルエンジンは十分以上の性能を発揮する。

むしろ、直噴ターボエンジンは低速域からのピックアップが良好なだけに、現行のV8 5.0リットルよりも鋭いレスポンスを披露することもあるくらい。新開発6ATとのマッチングも良好で、スポーツカー並みの速さが堪能できる。

スタイリングも見事だ。前述した2代目マスタングを彷彿とさせるロングノーズ・ショートデッキの古典的なプロポーションながら、全高をぐっと押し下げ、ヘッドライト周りなどを最新の“薄型デザイン”にすることで、モダンなイメージを醸し出している。

ちなみに、現在国内で発売されているのはマスタング生誕50周年を祝う特別仕様車(税込み465万円)。追ってV8 5.0リットルエンジン、マニュアル・ギアボックス、そしてマスタング史上初となる右ハンドルも導入されるようなので、そちらも楽しみだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材することが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

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