正直に言おう。雪は苦手だ。雪道と聞いただけで脳内ハザードが鳴り響き、ありとあらゆる防御策を講じたくなる。今回の雪道も、途中でなにがあってもいいように、非常食はもちろん、マイナス27度まで対応する寝袋をトランクに積んだほどだ。
『コンパス』を信じていないわけではない。ただ、最低地上高180mmというSUVとしては微妙な高さと、坂道を下るときに超低速を保つヒル・ディセントコントロールがないと聞くと、それだけで全身が硬直寸前なのである。
そして踏み込んだ豪雪地帯。高速道路ではチェーン規制はあるわ、一般道に下りれば積雪は2メートルを超えているわですでに吐きそうである。ただ、そんな私に対してコンパスはとことん優しかった。
まずシート。座面は大きく背もたれもしなやかで、ソファのようにやわらかく体を包み込む。それだけで気持ちがどれだけほぐれるかわからない。それでいて往復500kmを越える長距離でもオシリも背中も痛くならない絶妙の仕上がりなのである。これぞアメリカのおもてなし。
そしてエンジン。4気筒の2.4リットルはトルクがあり、アクセルの踏み込みに対して遅れることなく、かつ、十分な余裕を感じさせながら加速していく。この包容力すらにじみ出る頼もしさにはうっとりなのである。
そして雪。いざというときは4WDモードに入れようと思いつつ、積雪路を走る程度では電子制御で前後タイヤへのトルク配分をしてくれるDレンジのままで十分である。もちろんタイヤはスタッドレスなのだが。
積雪路を走ると、やわらかくストロークのあるサスペンションが、ほどよくワダチの凹凸を受け止めて、これまた大船に乗った気分だ。気になったヒル・ディセントコントロールも、MTモードでギアを選べば問題なし。そもそも、人生をかけるような急な坂道は、私ごときの行動範囲には存在しないのである。
車内は広いのに、全長は4475mmというコンパクトさも見逃せない。これなら簡単にUターンできると思うと、つい、雪道の奥まで走りたくなってくる。価格帯を含め、使いやすい4WDは好奇心をここまで刺激するものなのか。行動範囲が広くなりすぎて、私のほうがこの世界からもどってこれなくなりそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。