日本だとなかなかこうしたクルマは出てこないと思う。何しろ3ナンバーのボディに900ccのエンジンを積むのだ。今でこそ、3ナンバーのボディのクルマが増えたが、それでも900ccのエンジンを積み、5MTを組み合わせようなんて心意気はまだないだろう。
搭載された3気筒の900ccエンジンはターボが装着され90馬力を発生する。つまり、リッター100馬力のパワーユニットだ。1トンを超えるボディにこのエンジンを積む『ルーテシアゼン0.9L』だが、トルク不足を感じることはない。じつはゼン0.9Lはファイナルギヤが低く設定されている。このおかげで決して走りは弱々しくないのだ。
クラッチペダルは軽くもなく、重くもない適度な踏力での操作となる。もう少し、節度感と剛性感があるとフィーリングアップするが、この適度なゆるさがフランス車っぽくもある。シフトフィールはストロークが長めだが、確実にねらったギヤを選ぶことができる。
ルーテシアゼン0.9Lの魅力は持てるパワーを使い切れることにある。持て余すパワーをちょっと使うのではなく、使い切る感じが気持ちいい。足まわりの動きは、ゆったりとしてストロークが長いもの。基本的にはほかのルーテシアシリーズ(RSを除く)と同様の足まわり。タイヤサイズも195/55R16と「アクティフ」と同じサイズ。搭載するエンジンを考えれば、かなりオーバークォリティのタイヤだが、それを受け止めるだけのボディ剛性の高さとサスペションの懐の深さがある。
国産マニュアルミッション車が激減している今、208万円の車両本体価格がつけられたルーテシアゼン0.9Lは、走りを楽しむ要素が満載のクルマに仕上がっている。900ccという排気量によって、自動車税も安い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。