【マツダ ロードスター 主査に訊いた】身内にこそ、その魅力を伝えたかった…「ファン目線」を貫いた理由

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マツダ山本修弘主査とっておきの一枚。新型ロードスターと富士山
マツダ山本修弘主査とっておきの一枚。新型ロードスターと富士山 全 16 枚 拡大写真

先行商談予約が3月20日から10日間にわたって行われ、約2400件もの予約を得た新型『ロードスター(ND型)』。開発主査の山本修弘氏は、昨年9月のお披露目以降、全国を自ら行脚しファンの声を聞いた。そして初代発売から26年を経た今もロードスターを愛し続けてくれる人々の温かい声援に、「新型の開発は間違っていなかった」と確信したという。

「少しでも早く、皆さんにお見せしたかった」(山本氏)という想いから、6月の発売からかなり前倒しでのお披露目となった。そしてこの期間を活用し、ファンやユーザーとのコミュニケーションをがむしゃらに続けた。こうした取り組みは、“外部”の人々だけでなく、“内部”の人々、つまりマツダ社内やその周辺の人たちの想いも突き動かしていった。「ロードスターを伝える我々が、ファンの目線にならなければ」。それこそが、山本氏のもうひとつのねらいだった。

◆ロードスターを楽しんでいる人たちのことを知ってほしかった

----:9月のお披露目以降、ファンのロードスター熱は加熱する一方のようです。長期かつ広範囲にわたるキャンペーンで、山本主査の熱い想いは多くの人たちに届いたのではないでしょうか。

山本:私はロードスターのことを沢山の人たちに知ってもらいたいと願っているのですが、あらためて誰に一番知ってもらいたいかといえば、それはロードスターの良さ、楽しさを伝える広告メンバーなんですよ。

こんなエピソードがありました。2013年の11月に行う予定だった神戸でのオアシスイベントが台風で中止になったんです。もちろん、きちんと告知して中止となるのは参加者に伝わっていたんですが、念のためメンバーには会場に行ってもらったんですね。

準備ができないという理由で2日前には中止決定を出していたのですが、当日は晴天でした。すると東京から来たという10台くらいのロードスターが会場にいて、そのオーナー達が我々のメンバーに声を掛けてきたというのです。

----:中止なのに。なにか不満があったのですか。

山本:いえいえ違います。「これから淡路島の公園までドライブに行くけど一緒に行かないか?」と誘ってくれたんですよ。驚きですよね。それでツーリングに混ぜていただきました。あとでそのツーリングに参加したメンバーから、その時のレポートをもらったのですが、みなさん非常にマナーがよくビックリしたと書いてありました。誰一人としてスピード違反もしない、変な追い越しもしないというので、とにかくマナーがよかったのが印象的だったそうです。

その後、中止になったイベントを淡路島の公園で行いました。その際も同じ広告メンバーに来てもらって、その場の空気を感じてもらいました。どんな人たちが、どんな雰囲気で、どういう想いでロードスターを楽しんでいるのかを知ってもらったからこそ、あの幕張でのすばらしいワールドプレミアができたのだと思います。

◆ファンクラブ代表も進化を体感「NAどうしよう…」

----:伝える側が良さを知っていたからこそ、ファンの心にも響くコミュニケーションが出来たと。伝える、輪を広げる、という意味では全国のファンクラブもそのひとつだと思います。ファンクラブの代表を集めた試乗イベントも開催されたと聞いていますが、反響はどうでしたか。

山本:3月にファンクラブの代表32名に、山口県美祢のテストコースに集まっていただきました。「試乗会を行うのでいらして下さい」というアナウンスで、現地までの交通費などはすべて負担していただいたんですが、皆さん喜んでいらして下さいました。

ロードスターのファンクラブの代表の方々は、8割がNA(初代)のオーナーです。単純にNDロードスターに乗っていただくだけでは、その魅力を感じづらいだろうということで、NAから、NB(2代目)、NC(3代目)、そしてNDというように順番に、ペースカーで引っ張って車速を合わせて乗っていただきました。

NAオーナーの方もNBやNCに乗った経験がほとんどないという方は多いですから、しっかり順番に乗って進化を感じてもらったのです。するとNDの試乗を終わると「やばい、欲しい」、「NAどうしよう…」という声が聞こえてきました。このイベントで買うと宣言してくれた人が10人はいましたね(笑)。

----:よりダイレクトに、将来のユーザーに新しいロードスターを届ける、という意味ではこれからはディーラーの人たちにバトンタッチしていくのだと思いますが、ディーラーの方々に向けた試乗会などもおこなっているのでしょうか。

山本:そうですね。これからはディーラーでクルマを見て触ってもらう時期になりますので、そうしたこともしっかりとおこなっています。すでに美祢で、NAからNDまでのロードスターと、ライバルとなるクルマに試乗し、クルマの感触を確かめてもらう、というような機会も設けています。この試乗会は、ディーラーの代表者が対象でしたが、今度は実際にクルマを販売する担当者へとその試乗の枠を広げていく予定です。

◆生産現場にも「一緒に作ろう」という気概が生まれる

----:何と言ってもロードスターはマツダの看板車種です。社内でも大きな盛り上がりになっているのではないですか。

山本:そうなんです。実は開発や販売だけでなく、生産現場でもそうした動きがあるんですよ。

社内に向けても、ロードスターの良さ、魅力をしっかりと伝えたかった。そこで「今回はこんなクルマを作りたい」という想いを伝えるために、生産開始の1年も前に開発車両を生産現場の方に見せたんです。これまでの開発のプロセスから行くと、このような早い時期に生産現場に開発車両を見せることはなかったんです。それで現場の職長さんに見せたところ、「開発も生産も一緒になって、新しいロードスター作っていこう」という気概が生まれたんですね。開発の気持ちを生産でもしっかり生かそう…と。

それは実際のクルマ造りにも生かされているんです。たとえば、4輪のアライメントを調整する装置は生産現場が主導して製作してくれました。このクルマにはそこまでのクオリティが必要だ、と。工場の方がどんどん進化してくれている。だからこそ、開発に力も入るんです。マツダはそんな会社になりました。

----:あとは発売を待つばかりですね。山本主査としては、ひと仕事終えた、という所でしょうか。

山本:いいえ。クルマというのは、開発が半分、そして世に出てからがもう半分ですから。まだまだやるべきことはいっぱいありますよ。次は30周年も、(累計販売)100万台もありますからね。それを楽しみにしてくれているファンも多くいると思います。終わりはありません。

今年の夏、軽井沢ミーティングに、今回商談予約をしてくれた2400人の中から、どれだけの方が新型ロードスターで来てくれるのか。今から楽しみですよ。

《聞き手:宮崎壮人 まとめ:諸星陽一》

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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