中川 裕之 氏 代表取締役
タイでも求められるのは高品質
世界に誇る工具を提供
「この部分の加工だけは、高品質なツールでないと安心できない」という場面が、製造業には必ずある。例えば自動車製造では、エンジン部を加工する際に利用される切削ツールがそれであり、中でも弊社製品は日本の多くの自動車メーカーに活用いただいている。低価格な製品が重宝されがちなタイという国でも、高品質な製品は常に求められる。弊社は資本構成の組み直しと社名変更を機に、さらなる高品質な製品を提供していく所存だ。
資本構成組み直しで富士精工が筆頭株主に
弊社はFSK (Thailand) Co., Ltd.として1990年、各種砥(と)石・焼結体工具メーカーの株式会社エフエスケー(以下、エフエスケー 本社:愛知県)、切削工具・ホルダーメーカーの富士精工株式会社(C-max 以下、富士精工 本社:愛知県)、豊田通商株式会社、Toyota Tsusho (Thailand) Co., Ltd.の4社合弁によって設立された。エフエスケーが得意とする、バイト、リーマー、ドリルなどの切削工具の再研磨業務から事業が始まっており、弊社代表は歴代、エフエスケーから送り出されていた。
タイでは当時、切削工具を再研磨する業者がほとんどなく、高価でありながらも使い捨ての状態が続いていた。弊社業務は当初より、多くの日系企業からお引き合いをいただいていた。
一方、切削工具は富士精工が設計製造を専門とする。再研磨業務と並行して、切削工具の輸入販売と現地製造を手がけてきた。
当初は再研磨業務と切削工具販売の割合が売り上げベースで半々だったが、切削工具販売が順調に伸びてきて、最近は70%まで成長。そのような経緯を踏まえて弊社は昨年、資本構成を組み直して富士精工を筆頭株主とすべく、出資比率をそれまでの30%から51%まで引き上げた。社名も FUJISEIKO(THAILAND)CO.,LTD.と改名した。
自動車心臓部の部品加工で世界的な評価
富士精工は切削工具の中でも超硬、PCD、PCBNを得意とする。日本の多くの自動車メーカーに、エンジン、トランスミッション、ステアリング、ドライブシャフト、デフ、プロペラシャフトといった自動車の最重要部分の切削・研削工程でご活用いただいており、特殊工具ツーリング分野では世界的にも高い評価につながっている。
元々、戦後の発展の中で国産自動車の品質を引き上げるために設立され、それを実現した会社が富士精工であり、弊社はそのタイ現法だ。タイでも今や同業や競合が多く存在し、地場メーカーでも加工機械さえあれば手間を掛けずに良質な製品を作ることができるようになってきた。弊社はその中で、お客様の指示・要望に応じて設計、図面を起こして製造。タイでの25年の実績をもって、作って売るだけではないビフォー&アフターのサービスを含めた老舗工具エンジニアリング会社だと自負している。
価格的にはもちろん、タイ地場製や中国製と比べれば安くはない。弊社タイ人スタッフにも、「価格が高いといわれても、それ以上の品質である」ことに自信を持つよう指導している。
流出する設計図と出回るコピー製品
弊社製品は業界ではいわばブランド品であり、価格も決して安くないことからコピー製品が出回っており、頭を悩ませている。弊社が起こした図面(設計図)がどこからか同業・競合に流れているのだ。
図面だけ見れば、弊社見積もりの数分の1で作れると思うのかも知れない。実際、図面を見ただけで作られたコピー製品が、破格の価格で出回っている。描かれたロゴも弊社のそれだ。
しかし、見た目が同じでもコピー製品はそれ以上の存在ではなく、あくまでも偽物。「10回使って壊れた」といった類の話をよく聞くし、そのようなコピー製品を「修理してくれ」と依頼を受けることさえある。数字を入力すれば勝手に作ってくれる機械でも、弊社のノウハウを製品に反映することはできない。頭を悩ませる問題ではあるが、数字に現れないノウハウは決して真似されることはないと自信をもっている。
また、社員退職による技術の流出も心配事の一つだ。引き抜きでなくとも、社員が弊社で得たノウハウを元に独立するケースが少なからずある。社員の独立に関しては、弊社の経営理念である「協調、共存、共栄」「企業は社会の公器」という立場に基づいて、お互いの利益となるよう願うようにしているが、競合にもなりうるため、常に緊張感を持って接している。
国外拠点の確保 幅広い業界への食い込み
弊社売り上げは2013年を峠とし、昨年2014年にかなり落ち込んだ。新車販売台数の激減を理由に業界が不況感に見舞われ、お客様のほとんどを自動車関連産業とする弊社も影響を直接受けた形だ。しかも2011年の洪水被災で設備を総入れ替え、減価償却が膨れ上がっており、苦労は倍だ。
今年2015年は明るい話題もあるが、タイ国内での売り上げは前年並みと見込んでいる。その中で経営体質を引き締めて利益率を上げていきたい。
一方で、本社ではなくタイ現法の弊社から、ベトナムやインドといった周辺諸国への輸出に乗り出す計画だ。現在、現地での駐在事務所の設立に動いている。2―3年後にはASEAN全域で活躍する会社になりたいと思っている。
また、自動車関連産業にとらわれない幅広い業界・分野での新規市場・新規取引先の開拓に乗り出している。専門チームを結成、すでに実現に向けて動き出したプロジェクトもある。
タイでも真に求められるのは価格ではなく品質だ。お客様が本当に求める製品を、弊社は今後も提供していきたい。
* PCD:Polycrystalline Diamond =多結晶ダイヤモンド
* PCBN:Polycrystalline Cubic Boron Nitride =多結晶立方晶窒化ホウ素
FUJISEIKO(THAILAND)CO.,LTD.
● 本社・工場
住所:101 Moo 1, Hi-Tech Industrial Estate, Asian Highway K.M. 59-60 Rd., Banlen, Bang Pa In,
Ayutthaya 13160
電話:0-3535-0766~8 ファクス:0-3535-0769
● アマタナコン工場 (Amata Nakorn Branch)
住所:700/376Moo 6,Amata Nakorn Industrial Estate, Phase 3, Tambol Don Hua Loh, Amphur Muang
Chonburi, Chonburi Province 20000
電話:0-3846-8792~4 ファクス:0-3846-8795
Eメール:fskthai@fskt.co.th (日本語)
ウェブサイト:http://www.fskthailand.com/ (英語・タイ語)