4月22日、博報堂にてマーケティング・イノベーター研究会が開催された。研究会テーマは「新しい発想を生み出すためのイノベーティブマネージメント 創造的編集と場づくりのノウハウを探る」。
同研究会のセッション2「場」では博報堂ブランド・イノベーションデザイン局ストラテジックプラニングディレクター岩嵜博論氏が登壇。「プロトタイプスペースを活用した社内オープンイノベーションの実践」をテーマに講演を行った。
◆社内オープンイノベーションの場としてのプロトタイプ工房
博報堂内で創設したプロトタイプスペースについて、その経緯と社内へのインパクトについて説明した。
プロトタイプとは何かというと、「さっと手でつくりながら考える、カタチにしてみる、カタチにしてみながら考える」ようなプロセスを指し、プロトタイプというワークスタイルを会社の中に浸透させることが、プロトタイプスペースを社内につくった際のコンセプトだったという。具体的には「社内のかなりの一等地に、狭いながらつくっていて、例えばレーザカッターや3Dプリンター、その他MITなどにあるスタートアップ企業によって作られたプロダクトをみんなで使えるようにしている」のだという。
プロトタイプスペースでは “緩いつながり”と“独習” を大切にしているという。
最初の「緩いつながり」について。プロトタイプをするのは組織ではなく場。「カタい組織ではなくて、誰もがアクセスしうる緩い場をつくってみようじゃないか」という考えでしているという。これには理論的な背景があり、米社会学者マーク・グラノヴェッター氏による『The strength of weak ties(弱い紐帯の強さ)』が参考となる。同書ではカタいつながりよりも弱いつながりからの方がイノベーティブなものが生まれるのではないかと主張されており、それは岩嵜氏の考えと近いものがあるという。
次の「独習」。「大きな企業にいると研修システムが非常に充実していて、従業員は誰かに教えてもらうのが当たり前になり、慣れてしまうが。実はインターネットの世界では、学習リソースはインターネット上にいくらでもある。例えばYouTubeなどの中にも様々なツールの使い方がいくらでも公開されている。」
ただ、一人だけで学習していてもつまらないし、人に教えることを通じて自分の学習効果がさらに上がるケースなどもあるため、自分が学習したことを人に教えることもふくめてコンセプトとしたいという。
現在博報堂内で岩嵜氏は、毎週時間を決めてラボにいるようにしていて、なにかが気になってくる人やふらふらーっと知らない人がくる状態で、偶発的におこるコミュニケーションを大切にしているという。
また、岩嵜氏は社内のプロトタイプスペースが“外の人とのつながり”が出来ることにも役立っているという。「同様の活動をしている企業が他にもいて、インフォーマリティの中でのネットワークを広げることに繋がっています。(企業の他には)大学や省庁とのネットワークづくりにも力を入れているところ」(岩嵜氏)。
◆志ある社員の自主性発露の場に
こういったプロトタイプスペースをつくった結果、どういうことが起こりはじめているか。
岩嵜氏は「社内のステークホルダーの人に送ったメールのなかにも書いたことであるのですが、“志ある社員の自主性発露の場”となっているとおもいます。なにかこういうことがやりたいがやる場所がないとか、今の組織だと誰にも話を聞いてもらえない、誰に相談したらいいかわからない、だけど強い意志としてやりたいことがあるということをもっている人がやりたいことを実現する場といえるのではないでしょうか」と語った。