【マツダ ロードスター チーフデザイナーに訊いた】スポーツカーとして意味あるフォルム、とは…第3弾

自動車 ニューモデル 新型車
マツダ ロードスター 新型
マツダ ロードスター 新型 全 12 枚 拡大写真

6月に発売予定の新型『ロードスター』のデザインについて、中山雅チーフデザイナーが語った。『アテンザ』など他の現行世代のマツダ車と違って、ロードスターのフォルムにはキャラクターラインがない。これはなぜだろう?

映り込みの美しさを見せる

カーデザイナーはドアガラスの昇降ラインと全幅の間でドアの断面形状を考える。この幅が広いほど自由度が高まるが、全幅には限りがある。幅が同じなら、次に自由度に関わるのがベルトラインの高さだ。

「ロードスターはベルトラインが低いのでドア断面のスパンが短く、曲率の強いカーブでドア断面を作ることができる」と中山チーフ。

「曲率が強ければ、映り込みでカタチを表現できるので、キャラクターラインを使う必要がない」

とはいえ、ラインを使わないメリットは何なのか?

「ラインで映り込みが途切れることがないので、映り込みの美しさをより楽しむことができる。スポーツカーだから、見る喜びも提供したい。そのためにできるだけラインを使わないようにしました」(中山チーフ)

◆ボンネットに入れたラインの意味

ラインを使わないと言いつつ、中山チーフは「ボンネットは例外で、ここにはラインを入れています」。盛り上がったフロントフェンダーの内側に走るラインのことだ。

「盛り上がりを凹面に削いだ結果、ラインができた」(中山チーフ)

そこにはスポーツカーならではの意図がある。「削いだ凹面の谷がドライバーの正面に真っ直ぐ延びていくようにした」と中山チーフ。人とクルマの一体感を高め、クルマの挙動を把握しやすくするデザインだ。

「昔のスポーツカーでドライバーの正面のボンネットにストライプを入れる例があったけれど、それと同じ効果をボンネットのカタチで表現できないか、と考えました」(中山チーフ)

そして中山チーフは、「お洒落のためのラインではないので、時代の風化に耐えるデザインではないかと思っています」と付け加えた。

◆運転席からのフロントフェンダーの見え方

フロントフェンダーを盛り上げ、それが運転席から見えるようにするのは、スポーツカーのデザインでは「お約束」のひとつだ。新型ロードスターも例外ではないが、そこにはもうひと工夫が込められている。

「サイドビューを見ると、フロントフェンダーの盛り上がりのピークが前輪中心の真上より後ろにズレている」と中山チーフ。『RX-8』のようにタイヤと同心円でフェンダーを盛り上げるのが普通のやり方なのだが、「そうすると運転席から見て前輪が実際より遠くにある感覚になることに気付き、それを補正するためにフェンダーのピークを後ろにズラしました」(中山チーフ)

「走っていてロールが把握しやすいように、フロントフェンダーをデザインした。最初は『本当にそうか?』と疑心暗鬼なところもあったのですが、NCにこのボンネット形状を取り付けた試作車を作ってテストコースを走ってみて、有効性を確認できました。圧倒的にインに寄せやすいんです」と中山チーフは語る。言うまでもなく、彼も運転が大好きなデザイナーだ。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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