【ロードスター開発者への10の質問】Q7. 3つのグレードと AT or MT、どれを選べばいいのか?

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車両開発本部 車両開発推進部 副主査の高松仁氏
車両開発本部 車両開発推進部 副主査の高松仁氏 全 16 枚 拡大写真

新型『ロードスター』には3つのグレードと2種類のトランスミッションが用意される。249万4800円のスターティングプライスを持つ“S”のみ6MT仕様なので全部で5つのグレード構成となる。

グレードによる性格の違いとは、そしてどのようなユーザーが何を選ぶべきか、開発者の目線から車両開発本部 車両開発推進部 副主査の高松仁氏(「高」は、はしごだか)に話を伺った。


Q7. 3つのグレードと AT or MT、どれを選べばいいのか?
A7. NAを乗り続けて頂いた方には素の「S」を。初めてFRに乗る方にも「クルマとの対話」を楽しんでもらえるモデルになっている。そこにATかMTかという違いは全くない。

◆ベーシックな「S」は初代ロードスター経験者に乗って欲しい

----:今回色々お話を伺えば伺うほど、実はグレード選びは難しいな、と。もちろん悩むこと自体が楽しいわけですが。イメージされてる部分も含めて、このグレードはこういう方にオススメというのはありますか。

高松:一番難しい質問ですね(笑)。やはりベースグレードの「S」の話になりますが、キーワードは原点回帰なんです。それはつまり、我々にとってのロードスターの原点はNA(初代ロードスター)であるということ。ですから、オススメするかは別としてもNAに今なお25年間乗り続けている、未だに絶対に手放せないと仰っている方には、素の「S」にぜひ乗っていただきたいという想いがあります。

----:例えばこの話を聞いて、そうか、とSを購入したとします。「NAを所有していたからこそ、S買いました」とすれば、その顧客は何を感じ、そして得られるのでしょうか。

高松:クルマとの対話だと思います。NAでの対話の仕方っていうのは、ある意味、今のモダンなクルマとは一線を画すようなところがあって、いい意味でも悪い意味でも癖があります。ただ癖があるからこそ気に入っていただけるところもあったりします。新型も、スペシャルパッケージでもATでも、対話を楽しめるクルマに仕上げましたが、その違いを感じていただけるかと思います。

NAは今乗ると、やはり古い部分は古いですよね。古典的という表現もあると思うのですが、でもそれが良いというお客様の気持ちも理解できるところがたくさんあります。その良さの部分は、対話の密度が局部的に高いところがある、ということだと思います。

----:対話の密度とは、操作に対する限界性能などのことを意味しているのでしょうか。

高松:たとえば、ステアリングを少々ラフに、またゆっくり丁寧に操作をしても同じように、いつも安定した動きをするクルマもあります。その方が良いとおっしゃる方もいます。それは1つの個性です。

でも、丁寧に運転した時は丁寧に答えてくれる、荒っぽく運転した時は反発してくれるクルマもある。「あなた、今間違えていますよ」というコミュニケーションやインフォメーションをもらえということです。ちょっと極端な表現の仕方をすると、NAにはそういうところが所々にあるんです。

----:よくわかります。

高松:で、それを個性としてすごく愛してくれているお客様が沢山いるということも我々は認識しています。良いとか悪いとかではなくて、そういう個性を持たせるということが、ある意味「原点回帰」なんです。

----:全グレードとも、新型ロードスターには軽量化というテーマがありますが、Sに関しては1トンを切ってるという部分も数字で言えばお客様に対するポイントでしょうか。

高松:数字で言えば、まさに昔のままの数字です。それでもまだまだやりきれていないですけど。

----:非常に曖昧な聞き方かもしれませんが、NAが出た時代というのはクルマの力に頼って走る安定志向の商品がいくつか出てきた記憶があります。一方でNAはその方向ではない、というか、NAに乗ってる人って運転は上手いですよね。

高松:そう思います。

----:そういう路面とクルマとのコミュニケーション、コンタクトをよく知っているユーザーにとっては、非常にSはオススメ、という判断で良いのでしょうか。

高松:我々はそういう意識です。オススメだっていう言い方をするとすれば、初めてFRの車に乗ろうっていうお客様にもオススメだと、私は思います。

----:初めてFRの車に。オープンカーですか?

高松:ロードスターは全部オープンなので(笑)。FRの、特にライトウエイトのクルマに初めて乗られる方には、逆にオススメかと思います。電子制御でフル装備したクルマはFF、FR、関係なくアベレージで早く走れるし、少々のミスがあってもクルマがしっかりサポートしてくれますよね。レースに出る出ないという話では全くなくて、クルマの根本的な考え方として当然FRの車両に乗った時はFFとは違う。思った通り曲げようと思えば、こういう荷重移動を起こせばこうなるし、起こさなかったらこうなるよね、というのがすごく分かりやすいクルマになっているはずなので。そういう意味で、初めてのお客様にもぜひ乗っていただきたいですしオススメしたいと思います。

一方で、しっかりとクルマの挙動を理解して頂いていて、もう少し高い車速やGでクルマを操ることを楽しみたい、という方がいらっしゃいます。そうした方々向けには「スペシャルパッケージ」という味付け、個性にしているわけです。

◆ロードスター×AT

----:(スペシャルパッケージは)ロードスターという同じ世界の中ではあるけれど、メリハリやテイストというものをしっかり出してはいますよと。そこにはMTとATがあるわけですが、そこはどうでしょうか。

高松:どちらがいいという話ではなくて、そこは好みだと思っています。ATはシフト操作せずに両手でステアリングを操作できる、丁寧に扱って(クルマと)対話をして頂く、という意味では十分我々のコンセプトに見合っているといえます。

----:NCはRHT(ハードトップ)が設定されていたこともあり最終的には50:50ということでした。現在はスペシャルパッケージが今一番売れていて、50%。MT比率は80%ぐらいの感じで。だいたい予想通りと言えるのでしょうか。

高松:難しいですね。NCの50:50もスタートラインは違います。今はまだスタートラインですからある意味、MTの比率が高いというのはあります。

----:立ち上がりはどんなプロダクトも、狙い目、遡求したいグレードとか、宣伝のイメージとか、先ほど言ったロードスターに対する憧れとかイメージみたいなところで結構食いつく人がいると、MT比率が高くなったり数字が上がりますよね。最上位のレザーパッケージはいかがですか。

高松:レザーパッケージはやはり“ロッツ・オブ・ファン”の延長線上です。そこにもまたMTとATという悩ましい選択肢があるわけです。装備で言えばレザーというのが売りですが、いわゆる可能な限りのフル装備状態が選べるようになっていますので、まさにゆったりと走っていただくのにピッタリだと思います。

シートも専用のレザーですから、ラグジュアリー感も含めてロードスターというクルマを味わって頂けると思います。ATはATのテイストになってますし、MTはスペシャルパッケージと同じテイストになっていますね。

あと、手が触れる所がレザーであることに対してのこだわりを持っているお客様が結構いらっしゃいます。内装のコーディネートとしてレザーを選ぶ方も。あと、やはりロードスターはオープンカーですから、お客様によってはシートヒーターとセットだということでレザーを選ぶ方もいらっしゃるようですね。

----:高級感のあるレザーパッケージもそうですが、やはりロードスターというクルマは、年齢層でいえば、子供が独立してセミリタイアしたことにより可処分所得が増えた層だとか、いわゆる「大人」の人たちが選ぶクルマなのでしょうか。

高松:そういう理解はしています。ただ、我々としてはそれだけでは面白くない。もちろんクルマの性格上、ファーストカーとしてはなかなか所有しにくいクルマであることは事実だと思います。ですが、それとは別にNA時代にあったような、スポーツカーに対する憧れをもう一回喚起したいという想いがやっぱりあるわけです。そのためには、やっぱりアフォーダブル(手頃に入手できる)という部分をもう一度、それこそ原点回帰をしながら訴えて行きたい。そうしたバリエーションは用意しているつもりですし、若い方にも積極的に乗っていただきたいという想いがあります。

《高山 正寛》

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