【鈴鹿8耐】"キング"ケニー・ロバーツ「リタイヤをしてはじめて、偉大さを知った」インタビューその3

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ケニー・ロバーツ氏
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1985年7月28日午前11時30分、ル・マン式スタートから各車が一斉にスタートした。だが、ポールポジションのロバーツのマシンだけが動かない。懸命にマシンを押す平。そしてしばらくしてエンジンに火が入ると、ロバーツの怒濤の追い上げが始まった。

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「当時のGPではマシンは押し掛けで、アクセルを4分の1程度開けてマシンを押しながらエンジンをかけていたんだ。それが身体に染みついていて、アクセルを開けながらセルスターターを押してしまった。スタッフからスタートのときは絶対にアクセルを開けるなと言われていたけれど、すっかり忘れていたんだ。そうしたら平が懸命にマシンを押してくれて、なにかの弾みでアクセルから手が離れてエンジンがかかった」

「本来ならペナルティなんだろうけど厳重注意で済んだのだと思う。だれもいないストレートを走り、長いレースになると覚悟した。でも、走り出してからはマシンに問題はなく、1時間のスプリントレースをしっかりと走りきって4位まで挽回して平にマシンを渡した。その後、トップに立ってすべてが順調だったけれど、そう、しっかりと覚えている。チェッカーまで32分のところでマシンが止まったんだ」

だれもが記憶に残すあの瞬間だ。そして悲鳴ともため息ともとれる声が混ざり合い、サーキットは異様な空気に包まれた。

「ファンの悲鳴のようなものが轟いて、ピットに行くとスタッフは号泣している。マシンが止まったことは理解できたけれど、周りの状況がまったく理解できなかった。私にとって鈴鹿8耐はひとつのレースであって、細かなことは気にしないし意識もしない。これはGPでも同じだった」

「リタイアはもちろん悔しいけれど、レースなのだから勝つときもあればリタイアすることもあるのに、みんなどうしたんだいって。とても不思議な雰囲気でとにかくこの場から逃げ出したい気持ちで、長年レースをやってきて、自分がどうすればいいのかわからなくなったのはあのときが最初で最後だった」

「でも、冷静になってよくよく考えれば、メーカーにとって、ファンにとって、それだけ鈴鹿8耐というレースが重要であり、愛されていたんだと理解できたんだ。しかもヤマハが初めてファクトリー体制で出場したのだから、だれにとってもあり得ない展開だったんだ。そう、2日後くらいにヤマハの本社に全員が集まって、社長にレース報告をしたのだけれど、みんな震えていて、ここで改めて鈴鹿8耐の偉大さがわかったよ」

ロバーツは翌1986年にもライダーとして鈴鹿8耐に参戦し、残念ながらここでもマシントラブルでリタイアとなった。そして1988年、ロバーツはケビン・マギーとウェイン・レイニーを率いる監督として出場した鈴鹿8耐で優勝を遂げた。一方の平は、ロバーツの愛弟子エディ・ローソンとのペアで1990年に悲願を達成することになる。

「1988年の優勝は、私が当初から指摘したマシンのインレットポートが小さくなったから勝つことができたんだ(笑)。1990年の平の優勝は、彼は鈴鹿8耐ではずっと苦労していたから、本当によかったと思う」

そしてロバーツは、これから鈴鹿8耐に出場するライダーに向けて、こうアドバイスした。

「ツナギは1着では足りないから気をつけた方がいい(笑)。今年はケーシー・ストーナーが出場するが、彼に特別なアドバイスはない。ただ、鈴鹿8耐というレースの重要さ、偉大さを知っておいてほしい」

《佐久間光政》

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