テインが中国に工場を設立した理由…藤本吉郎専務、古林泰取締役

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テイン 藤本吉郎専務(右)と古林泰取締役(左)
テイン 藤本吉郎専務(右)と古林泰取締役(左) 全 7 枚 拡大写真

テインは、中国の江蘇省宿遷市に、「天御減振器制造(江蘇)有限公司」を開設した。7月8日にはオープニングセレモニー、およびメディア向け工場見学会が行なわれた。

同社の藤本吉郎専務、古林泰取締役に、中国工場開設の背景や、今後の展開について話を伺った。

----:横浜工場と、中国工場の住み分けは。

藤本専務(以下、敬称略):横浜工場は既存製品、チューニングの部分を担当します。そもそも、補修用のサスペンションを生産するラインが横浜工場にはないので、今回大幅に補修用サスペンションを販売していくために中国工場を建設した、という流れになります。最終的には、年間120万本を生産する体制になる予定ですが、その時点での本数ベースの生産量では、8割程度が補修用のサスペンションとなります。補修用は安価なので、金額ベースだとまた異なってきます。

----:中国工場で生産した製品の販売戦略は。

藤本:魅力なのは、人口が日本の10倍というところ。その昔、田中角栄氏が日本でも行なったように、習近平氏が10年後に所得を倍増する、といった計画を出していますが、過去の日本のアフターマーケットを見ても、「可処分所得がいかに増えるか?」といった点が我々にとっては重要です。

そして現在、自動車をカスタマイズしたり、海外旅行をする人が増えているなど可処分所得が増加し、消費意欲が非常に高くなってきている中国人の需要に訴えることは、当然の戦略だと考えます。日本の売り上げの10倍売れれば理想です。あとは、サスペンション業界の日本のリーダーとして現地企業と協力、啓蒙活動を推進し、違法行為のためではなく、車を楽しむためにサスペンションを用いるのだ、といった理解を広げていきたいと思います。

----:中国工場で販売していくのは2アイテムとされています。今後新しい製品を販売していく見込みはありますか。

藤本:市場に合わせて、という展開になります。新しいアイテムを開発するとコストがかかります。さらに、新車が切り替わっていかないと売れない。まだ中国ではそういったローテーションが起こっていない段階です。

----:日本の消費者からは、「日本製のテイン」ではなくなること懸念する声もあるようですが。

藤本:自動車メーカーと同じで、「需要があるところだけでつくって、需要があるところだけで消費する」という方針です。日本の需要は日本の工場でつくって、日本の消費者に売る。中国の需要は、中国の工場でつくって、中国の工場で売る。もちろん、生産ライン上、横浜工場でつくれない補修用サスペンションは、一部を日本に販売することもあります。それは生産スペースなどとの関係の話です。 

古林取締役(以下、敬称略):実質、中国工場でつくったものは日本に売りません。タイ、ヨーロッパなど、海外のお客様はテインの中国工場製品を待ち望んでいます。「早くつくってくれ」という声が届いています。

----:中国で販売していく上での問題は、現地での販売網ということになるのでしょうか。

藤本:そうですね。販売店を集めて説明会を行なったりしているのですが、予測もできないような質問が飛び交ったりします。設定の仕方など、基本的なところが分かっていない店も多くあります。サスペンションという部品は、正確な取り付けをしてはじめて正確な性能を発揮するものですから、正しいインストレーションを行なえる販売店に販売していただきたいと思っています。今後も説明会を定期的に開いていくつもりです。

----:補修用のショックアブソーバーに着目している理由は。

古林:我々は、他の会社さんがやっていないようなことをやっていかなくてはならないと考えています。たとえば、安く補修用のショックアブソーバーを販売している背景には、純正の製品を、既にもっている販売網でそのまま流せるなどの流通面にポイントがあります。このような価格が安いというメリットに対して、デメリットは「純正の仕様から変えられない」という点です。

我々は、我々の考える最適な、耐久性に着目した設計の製品を販売することができます。ロシアなどですと、純正のアブソーバーは3ヶ月程度ででダメになってしまうこともあるようで、純正の安いリプレイスメントよりも、「2割高いが、ライフが2倍ある」という製品を販売できれば、それを購入していただけると思っています。

開発にあたっては、弊社のエンジニアがインドやモンゴルに赴き、「なぜショックアブソーバーがすぐ壊れてしまうのか」といった調査をしています。

藤本:ひとつの事象として言えるのは、中国の人々の爆発的な消費意欲の裏にあるのは、「良いものを購入したい」という意思です。中国製の炊飯器があっても、日本製の炊飯器をわざわざ日本まで行って購入するのです。ですから我々は、日本のブランドを生かして、「多少値は張っても、いいものを買ったほうが最終的に元は取れる」といったことを理解している方々に製品を販売していくつもりです。

《大日方航》

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