FR、ああFR、FR。と、くだらない一句を詠んでいる場合ではないのだが、ハンドルを切った瞬間に「うひー!」と声が出るくらいFRを感じちゃったんだからしかたない。
ええ、にぶい私ですら、ですよ。わかりますよ、この感覚。ハンドルをきったら、クルマの鼻先がくっと向きをかえて、それを支えるように後ろ足がぐぐっと追い込んでいく感じ? 自分を軸にコマのようにクルマが向きを変えていく感じ? いや、なにより、この向きを変える瞬間に「ぱきっ!」という文字を添えたいくらいに、キレのある動きは感涙がほとばしりそうになる。
スポーティ感を味わうための低い位置のシートは、自己中心的にスポーツを押し出しているわけではないので、シートバックがまわりこんでおらず乗り降りのしやすいタイプ。しかも、降りるときは思わずサイドシル(ドアを開けたところの敷居ね)に手をついてしまう私だが、そんなことも計算済みで太さや表面積をデザインしているそうな。やられた。
運転席に座ると、脚を素直に伸ばした位置に、3本のペダル。さらに、クラッチペダルの左側には、これまた絶妙な位置にフットレストがある。ここに左足を置いて、コーナリングのときはハンドルを自由に動かして…と、『ロードスター』を存分に味わうためのお膳立ては完璧なのである。
余計なものをとっぱらってシンプルな「S」。カーナビは埋め込まなくたって、スマホやタブレットで十分だし、なにより、道路案内を見ながら走るなんて不粋なことはせず、100%クルマに向き合って運転するのが、このクルマには向いているのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。