『WRX S4』 はちょうど1年ほど前に登場したばかりのモデル。というわけで今回は、基本的に大きなモデルチェンジを施しているわけではないが、着実に商品性を向上させていることが実感できた。
マイナーチェンジの主要なポイントは、「アドバンスドセイフティパッケージ」と名付けた先進安全装備を展開したことだろう。含まれる内容はリアビークルディテクション(後側方警戒支援機能)、サイドビューモニター、ハイビームアシスト、そしてアイサイトを装備したモデルではアイサイトアシストモニターも装備される。
もう一つの大きなポイントが、サスペンションの最適化とハイパフォーマンスタイヤのオプション展開だ。こちらは『WRX STI』に採用しているのと同じ、245/40R18のハイパフォーマンスタイヤをS4にも展開するというもので、オプションだがこのタイヤを装着した場合、サスペンションもタイヤの性能に合わせてグレードアップが施され、その二つがセットでオプション設定されていることである。こちらはやはり乗り心地と運動性能に変化をもたらしているので後述する。
このほかの変化としては、静粛性の向上が挙げられる。フロントガラスに遮音材をラミネートしたものが使われて静粛性を高めているのだ。
たったという言葉を使ってよいものか躊躇するが、334.8万円、もしくは356.4万円の投資で4WD、300ps、400Nmというとてつもない性能を得ることが出来るWRX S4。もし同じ性能を他メーカーで求めるとしたら、価格的には5割アップを覚悟しなくてはならないのではないかと思われるから、このクルマ、相当なバーゲンプライスで売り出されていると思うわけである。
今回特に感じられたのは、245という極太サイズのタイヤを履いていながら、実にフラットな乗り心地とその太さによる足のしっかり感を両立させている点だ。因みにこの太いタイヤと専用チューンされた足のオプション装着車の価格は361.8万円。SITのベースグレードが379.08万円だから、その差は17.28万円。だいぶSTIに近づいた。それでも街乗りとして扱い易さを求めるのならばS4というチョイスが有りなのだと思う。
というわけで、足の印象と素直でナチュラルなハンドリングは文句なく最高点をつけたいのだが、どうしてもそこで悪さをするのがリニアトロニックの存在だ。CVTは流れに乗って街中を流すような状況では非常にスムーズで快適な走りを提供してくれる。しかし、いざ、ワインディングを楽しく走ろうとすると、加速の遅れがあることは否めない。それはイメージとしてはドッカンターボ的なタイムラグである。
原因はアクセルの踏み代にCVTの加速がついてこないために引き起こされるもので、どんなに進化してもこれ以上を求めるのは無理そうだから、やはり300ps、400Nmという高性能にCVTの選択はないような気がする。だから、どうしても「気持ちよく走る」を阻害するのがリニアトロニックなのだ。これ以外の性能は本当に価格を考えれば文句なしだ。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。