【ボルボ V40 ディーゼル 試乗】ハイブリッド=省燃費という盲目的な概念は捨てた方が良い…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ V40 D4 SE
ボルボ V40 D4 SE 全 16 枚 拡大写真

一気に5車種ものディーゼルエンジン搭載車を市場投入したボルボ。その戦略はかなり先を見据えたものだ。

今回投入された5車種とは、『V40』、『V40クロスカントリー』、『S60』、『V60』、それに『XC60』の5モデル。このところ日本市場には堰を切ったようにいわゆるクリーンディーゼル車が続々投入されているが、予定を話すとこの先もジャガー『XE』、メルセデス『Cクラス』、さらにはVW『パサート』、マセラティ『ギブリ』など、ラグジャリーなモデルを中心としたデビューが控えているのである。

ズバリ言おう。ディーゼルは仮に同程度のモデルにハイブリッドが設定されていると仮定しても、ランニングコストはディーゼルの方が恐らく上である。だから、ハイブリッド=省燃費という盲目的な概念は捨てた方が良い。

そして何よりディーゼルが失わないのは、圧倒的なトルクによる運動性能の高さである。敢えて魅力的でない部分を挙げるとしたらそれは音、つまりエンジン並びにエクゾーストサウンドなのだが、近年4気筒エンジンがミッドサイズの高級車にまで使われるようになって、ガソリン車でも音の魅力は減ってきているから、ディーゼルのネガな要素はほとんどない。

それにしてもボルボの新しいエンジンはお金がかかっている。DRIVE-Eと呼ばれるこのエンジン群、実はすでに市場投入されている2リットルのガソリンエンジンと基本は同じ。全く異なるパーツは全体の25%しか使われておらず、25%は全く共通。そして残りの50%は類似部品が使われている。ガソリンエンジンと、である。ではどこがどう高価なのか。一番お金を使ったなぁと思えたのがインジェクターとターボである。

まずはインジェクター。 ボルボのインジェクターは日本のデンソーがが開発したI-ARTと呼ばれるもので、これ、世界で初めて圧力センサーをインジェクター内に装備している。おかげで噴射タイミングのズレを実に10万分の1秒という精度でアジャストしているのだ。しかも燃料の噴射は最大9回を可能にし、このクルマの高圧ポンプは何と2500バールと、他メーカーのポンプと比べて2~3割高い。そしてターボ。こちらは2ステージターボが採用されている。マツダのスカイアクティブDと同じだが、適材適所でターボを働かせることで効率が良い。というわけで、このデンソーのインジェクターと2ステージターボが、ボルボD4に非常に高い効率をもたらしているのである。

効率という点でもう一つ優れているのが、アイシン製の8速ATを採用している点。これらのおかげでボルボD4はライバルのディーゼルと比べても、かなり先を行くパワートレーンになっていると言って過言ではない。

ではその性能をV40で試してみた。2リットルながらパワー190psはガソリンターボだと普通以下かも知れないが、最大トルク400Nmとなるとこれはガソリンだとちょっと歯が立たない。しかもこのトルク1750rpmから発生しているから常用域はほぼ常に最大トルクでクルマが動いている勘定になる。抜群に広いトルクレンジを持つメルセデスを除けば、BMWとはほぼ拮抗するトルクレンジ。パワーはボルボが上だ。

おかげでそのグイグイ感が凄い。エンジン単体で30kgほど重いそうだから、ノーズはガソリン車より重いのだろうが、そんなものはハンドリング上もほとんど気にならなかった。強いて言えば社外放出音が少し大きい。これは高圧ポンプや精度の高いインジェクターなどによるものかもしれないが、一旦走り出してしまえば何ら気にならないし、当たり前だが今時のクルマらしくアイドルストップするから停車すればたいていは静寂に包まれるので、ディーゼル音に悩むこともない。

一時はどこかの知事に悪者扱いされて、日本から駆逐されるかと思ったディーゼルだが、今や主役はディーゼルと言っても過言ではないほどスポットライトが当たっている。是非一度味わってみることをお勧めする。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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