背の高いSUVに対峙したときに感じるのは、重量感あふれる存在感だ。『Q3』の場合、ドアを開けたときの重厚な感触も、閉めたときの密閉感も、座って目の前に広がる質感あふれるインテリアも、どっしりとした質量を感じずにはいられない。
けれど、走り出したとたんに、その印象は一変する。アクセルを踏んだとたん、エンジンがかろやかにこの重量物を前に押しやるのだ。しかもなんのためらいもなく。
パワーアップした2.0TFSIエンジンは、10psの出力向上と、それに対して燃費が18%向上しているというのが売りである。けれど、アタマで理解するそんな数字よりも、体や感情のほうが明らかに実感する。
軽い。とにかく軽い。4WDなんだし、もう少しずしりとした重さがあるはずなのにと思いつつ、たしかに足元の食いつきは感じながらも、上りのワインディングは勾配を感じさせないほどの俊敏さで駆け上がっていく。
そんな走りの味付けは、ドライブセレクトで面白いように変化する。効率のエフィシェンシーにすれば、おとなしめのおりこうさんになるし、ダイナミックにすると、がつんと攻撃的になる。このダイナミック、Q3の品のある佇まいで油断していると、こんな一面もあるのかと惚れ直すことになる。
残念なのは、切り替えるスイッチがセンターパネルの左のほうにあって、腕を伸ばしてやっと届く位置にあるということ。もう少し、使いやすい場所にあったら、ちょこちょこいじってもっと楽しめるのにな。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。