自動車の安全性を向上させることは、ZFにとっても非常に重要な開発テーマだ。先日買収が完了した、TRWが持つ技術との相乗効果が最も期待できる分野のひとつが、実はこの安全性に対しての技術。ここでは、ZF TRWの最新安全技術を搭載したテストカーを用いての同乗試乗が許された、デモンストレーションの模様をレポートすることにしよう。
まずパッセンジャーシートに身を委ねたのは、AEB=オートマチック・エマージェンシー・ブレーキと、完全停止までの性能を有する、ACC=アクティブ・クルーズ・コントロール、そしてデータ・フュージョンと呼ばれる、全視野検出機能を搭載するテストカーだった。
ZF TRWのデータ・フュージョン・システムは、前方監視用のレーダーとカメラ式センサーからの情報をもとに、車両前方の完全かつ高精度なリアルタイムの交通情報を把握するもの。高性能なレーダーとカメラ、そしてそれらを統合制御するセーフティドメインECU。ZF TRWは、グループ内でそのすべてを開発することが可能になったのだ。
そのテストカーを用いて、最初に行ったのは、40km/h走行からのAEBによる完全停止テスト。このタイプのテストは、すでに他社のものを含め、自分自身でのドライブでも何回も経験しているから、特に新たな発見があったわけではなかったが、続いてESA=エマージェンシー・ステアリング・アシストを備えるテスト車へと乗り換えて行った、歩行者を模したダミー人形への接触を回避するテストにはさまざまな驚きがあった。
ちなみにこのテスト車には、最新世代の車載カメラとして、2018年からの供給が計画されている3眼カメラ、「S-Cam4」も搭載されており、ESAのほかに、ESCやABSを統合制御することで、自動操舵と制動による接触回避を行うという。
約50km/hからで走行するテスト車の前方を、突然歩行者が横切るというシチュエーションは、オンロードでも珍しいものではないだろう。実際の接触回避制御、つまり急操舵は体感的にはかなりの速度で行われ、それにESCとABSが効果的に協調していることは、パッセンジャーシートからも確認することができた。操舵の速度はこれからさらに高められる予定で、さらにデータ・フュージョンによる全視野検出によって、将来的には左もしくは右という、より安全な回避方向を自動的に判断して操舵することも可能になる。
デモンストレーションを担当したテストドライバーによれば、現在の段階でも危険の判断から制動と操舵を実行、再び通常の走行に戻るまでの時間は、人間が一連の操作を行うよりも確実に速いという。ここからさらなる高速化が図られるというのだから、それは事故の回避に非常に大きな効果を発揮するのは間違いない。今後の進化に期待したいところだ。