【トヨタ シエンタ 試乗】今や7人乗りは単なるファミリーカーに非ず…中村孝仁

試乗記 国産車
トヨタ シエンタ ハイブリッド
トヨタ シエンタ ハイブリッド 全 19 枚 拡大写真

コンパクトカーの3列7人乗りのクルマといえば、想像されるのはこれまでなら99.9%普通のファミリーカー。しかし、新しいトヨタ『シエンタ』、これは単なるファミリーカーではなかった。

まずはそのスタイルからして、単なるファミリーカーには見えない。個人的趣味から話をさせてもらうが、ミニバンと称するモデル群の好きになれないところは、画一的デザインと、そのデザインからにじみ出る生活臭。こんなことを書くとミニバンユーザー層からたぶんお叱りを受けると思う。しかし、ミニバンを嫌う層は、そう感じているのだと思う。

だが今回のシエンタ、まず画一的デザインではない。それどころか相当に跳んでいるデザインだ。複雑にラインが入り組むリアクォーターなどを見ていると、何やら幾何学模様を見ているよう。前後に敢えてバンパー・ガーニッシュで縁取りし、しかもその色を変えることで表情を変えてしまうという手法は、日本のクルマでは過去に無かった例だと思う。

外観のみならず、インテリアのデザインもかなり斬新。メーターパネルはプジョー同様、ステアリングリムの外側から見るデザインとされ、さらにグローブボックスを開くと一面鮮やかなオレンジ色のモールディングカラーの収納が展開するなど、これまでとかくドブネズミ色に支配され続けてきた日本車のイメージをガラリと変えるほどのインパクトを持っている。

そして全長4235mmのボディに構築された3列シート。従来なら3列目は「とりあえずシートが有ります」的な使えないものがほとんどだったのに対し、新しいシエンタのそれは、大人が座るにも十分なスペースと快適さを有しているのには驚かされた。2列目が前後にスライドしてくれるから、レッグスペースさえ分け合えば、7人がかなり快適に座れる。これはズバリ、革命だ。

3列目のシート折りたたみはダイブインと称して、2列目の床下に滑り込ませる方法。かつてこの手法はオペルが『ザフィーラ』というモデルでやったものと同じだが、これだとシート座面、バックレスト共にクッションが薄くなって、快適性を損なう。シエンタも確かにクッションは薄いのだが、実際座って走ってみても、不快なイメージはなかった。気になるのは3列目だけアシストグリップがなく、コーナリング中に体を支える術がないこと。3列目が使えるシートだけに余計気になる。

ドライバーの身長にもよるが、ステアリングのリムの外側から覗くメーターパネルは、身長160cm以下だとリムにかかって一部のメーターが見づらくなる。これはプジョーと同じネガな要素だ。それと、メーターパネル自体を高めに設置したことで、フロントウィンドー下面が見えず、前方視界はシートを一番上まで上げないとならず、小柄なドライバーにとっては視認性に影響があるこれはデザインの犠牲になった気がする。物入れは非常に豊富だし、全体的な使い勝手も良く7人乗って良し、5人乗車で荷室を稼ぐも良しで利便性が高い。

1.5リットルアトキンソンサイクルの4気筒エンジンとモーター、ニッケル水素バッテリーという組み合わせは、基本的に『アクア』と同じ。性能は同一だがモーターの名称はアクアの1LMから2LMへと変わっている。システム全体のパフォーマンスはガソリンエンジンのみと比べれば格段に優れるが、それでも基本的には目覚ましい動力性能を持つとは言えず、特にフル加速した際の唸りとフロア全体に広がる振動は気になるところである。一方でハンドリングと乗り心地は中々のもの。特に乗り心地に関してはソフトで快適、それにフラット感もそこそこ保たれている。

久々におっ?と思わせるコンパクトな3列シートモデルだった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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