【トヨタ シエンタ 試乗】ふんわり絶品の乗り心地、16インチタイヤ装着ガソリン車…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタ シエンタ
トヨタ シエンタ 全 16 枚 拡大写真

CMにハメス・ロドリゲスと滝川クリステル起用し、気合十分の新型『シエンタ』。

派手なデザイン、カラーリングに注目が集まりがちだが、実は中身はかなりまじめに、しっかりと造られているのである。

ところで、最近のコンパクトカーがハイブリッド車(HV)とガソリン車をラインアップする場合、多くはHVのほうが出来がいい。時代の要請から、HVモデルに力を入れているからだ。

だから、新型シエンタもガソリン車に多くは期待せず、試乗を開始した。ところがだ。最初に乗ったオプションの16インチタイヤを履くモデルは、駐車場から道路に降りる段差を乗り越えただけで、思わず「うぉーっ」とうなってしまうほどの感動ものの乗り味を示してくれたのだ!

しなやかでじんわりふんわりした、そう、フランス車のようにサスペンションが生き物のようによく動く、心地良い乗り心地だったのだ。とはいえ、ただふんわりしているだけではない。しっかりとした芯があり、右へ左へとステアリングを切っても、決してふわふわしない。つまり、ふんわり、しっかり。ロードノイズはほとんど気にならず、足回りと強固なボディーは段差やマンホールの乗り越えも驚くほどしなやかにこなしてくれる。

今回試乗したのは東京・豊洲からお台場までの一般道のみだから、高速道路や山道での乗り味については言及できないものの、とにかくシエンタのユーザーがもっとも使うであろう日常域、一般路での乗り心地は、ファミリーや小さな子供、そしてペットにとってクラスを超えた最上級のものと断言できる。

それは運転席に限らないのも注目点。2/3列目席にも座ったが、基本的な乗り心地の良さは変わらない。特に3列目席は先代と違い、クッションがしっかり肉厚でかけ心地は文句なく、フロアからシート座面までの高さも十分にあり体育座りにならず、さらに身長172cmのボクが座っても頭上に14cm、ひざ回りに3~7cm(2列目席シートスライド前端)程度のスペースがあり、かなり実用的に使えるからびっくりだ。

ただ、『カローラ』から採用された新開発の1.5リットル、109psのアトキンソンサイクルエンジン(2NR-FKE)の動力性能は、大人3人乗車でもギリギリの印象。アクセルを深々と踏み込む必要があり、先を急ぐときにはそれなりのノイズを伴う。もちろん、同乗者に気づかうゆったり運転なら必要十分であるのだが。

しかしながら、ガソリン車の15/16インチタイヤ、HVの15/16インチタイヤ装着車に試乗した結論から言えば、乗り心地面で多くの国産車と一線を画すほどのファミリーミニバンとしてふさわしい心地よさ、感動をあたえてくれたのは、ガソリン車と16インチタイヤを組み合わせたモデルだった。HVとガソリン車ではサスペンション、タイヤの銘柄は同一だが、開発陣が意図しない好結果が偶然にその仕様にもたらされたようだ(個体差ではないかと思い、同仕様の2台に試乗したが同じだった)。

ちなみにOPの195/65R16タイヤの価格は8万2080円と決して安くはないが、Xグレード同士のHVとガソリン車の価格差は約41万円もあるのだから、乗り心地を最優先すれば、どうということはないだろう。

一方、標準の15インチタイヤ装着車の乗り心地は、さらにいいはず…と思ったら、そうでもなかった。16インチタイヤとの組み合わせで得られる絶品のふんわり&しっかり感はやや後退。というか、普通にマイルドな乗り心地になる。

くり返すけれど、市街地でのコンパクトファミリーミニバン最上の乗り心地を望むなら、意外なようだがガソリン車にOPの16インチタイヤ装着車である。

新型シエンタはドッグフレンドリー度も極めて高い。ラゲッジの開口部地上高は49cmとごく低く(ワゴンの平均値は62cm)、3列目席を2列目席の下にスルリと潜らせダイブイン格納し、そのすき間を埋めるアクセサリーのラゲージボード(10800円)を敷いてやれば、"フラットシートフォーメーション"の幅95~111.5cm、フロア奥行き95.5cm、高さ108cmものスペースが出現。愛犬を乗せる場所は2列目席、3列目席、3列目席を片側ダイブインさせラゲッジと3列目席格納フロアをつなげたスペースなど自由自在。室内高が高いため、大型クレートの積載も可能となる。

また、アクセサリーカタログにあるように、愛犬を乗せるときに役立つラゲージ用アイテム、愛犬用品が豊富に揃っているのも嬉しいポイントだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《青山尚暉》

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