【注目軽&コンパクト】対策すすむ軽自動車の安全性能、コンパクトは総合性能で勝負

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軽自動車とコンパクトカーの注目モデル4台を対象に、安全性能を比較した
軽自動車とコンパクトカーの注目モデル4台を対象に、安全性能を比較した 全 51 枚 拡大写真

進化を続ける軽自動車やコンパクトカーの安全性能。それにはダウンサイザーの存在が大きく影響しているのかもしれない。ひと昔前までは、安全性を求めるなら大きいクルマに乗るべきという意見が主流だった。しかし現在のダウンサイザーは、ボディやエンジンなど量的なダイエットは望むが、クオリティやセーフティなど、質のダウンは求めていない。

そこで今回は軽自動車とコンパクトカーの注目モデル4台を対象に、安全性能について試乗インプレッションを交えながらカタログスペックで比較してみた。

◆安全に対する姿勢、まずはカタログでどうアピールするか

まず、試乗車の1台、新型『シエンタ』のカタログを眺めていて驚いたことのひとつに、安全性に関する記述が4ページもあった点が挙げられる。ちなみにもう1台のコンパクトカー、ホンダ『シャトル』は1ページだ。ページ数が多いから安全というわけではないけれど、カタログにはアピールすべきことがいろいろあるはず。その中でシエンタは、安全性に4ページも割いている。日本のコンパクトカーも変わったなあと思った。

比較対象となった2台の軽自動車も、安全性を謳うページは多い。日産『デイズ』は独自のテクノロジーであるアラウンドビューモニターに2ページ、それ以外に3ページを割き、スズキ『アルトラパン』も3ページを取っている。“軽自動車は安全性が心配”という声が目立つからこそ、しっかり対策をしていることをアピールしているのだろう。

だからこそコンパクトカーは、それ以上を追求しなければならない。シエンタの安全性重視の姿勢は、このあたりの事情も関係していそうだ。その姿勢はカタログだけではなく、実車にも息づいていた。

◆自動ブレーキの作動速度、範囲の広さで頭抜けるシエンタ

トヨタは昨年、「トヨタ・セーフティ・センス(TSS)」という衝突回避支援パッケージを発表。コンパクトカー向けの「TSS C」と中上級車向けの「TSS P」があり、前者が新型シエンタにも搭載された。レーザーレーダーと単眼カメラという、異なる2つのセンサーを組み合わせることで高度な認識性能と信頼性能を両立し、さまざまな場面での安全運転支援を可能にしたパッケージだ。具体的には、トヨタが早い時期から実用化してきた衝突回避・被害軽減ブレーキシステムのプリクラッシュセーフティをはじめ、レーンディパーチャーアラートと呼ばれる車線逸脱警報、オートマチックハイビームの3つの機能を搭載。同じセンサーを活用した先行車発進告知機能も導入している。

ホンダも『ステップワゴン』など中級以上の車種には、「ホンダセンシング」と呼ばれるパッケージを用意。衝突軽減ブレーキ、アダプティブ・クルーズ・コントロール、車線維持支援システム、路外逸脱抑制機能、誤発進抑制機能、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能を備えている。ところがシャトルはステップワゴンの後に登場したのに、ホンダセンシングは導入されず、センサーはレーザーレーダーのみ。予防安全装備は、衝突回避・被害軽減ブレーキと誤発進抑制機能を盛り込んだシティブレーキアクティブシステムを設定する。

一方で、軽自動車のデイズとラパンも、ともにレーザーレーダーを用いた衝突回避・被害軽減ブレーキおよび誤発進抑制機能に留まるものの、価格、コストを考えるとまずはこうした先進安全機能を軽自動車という枠の中で積極的に取り入れた姿勢を評価したい。

また衝突回避・被害軽減ブレーキの性能を見ると、他の3台はいずれも約5~30km/hで作動するのに対し、シエンタは約30~80km/hでプリクラッシュブレーキアシストが作動。仮にブレーキを踏めなかった場合でも、自動ブレーキが約10~80km/hの車速域で作動し、約30km/h分の減速をする。これらは性能の違いというよりも、想定ユーザーの走行シーンや開発・設計思想の違いと見ることが出来る。軽自動車勢は、街乗りなどでの普段使いにおける低速走行時の安全性にフォーカスしていると言えそうだ。それに対してシエンタは、長距離移動なども想定し、より事故の起こりやすい高速域もカバーしている。

◆疲れにくさも大事な要素、加速の良さはシャトルに軍配

同等グレードでは車体が100kg以上軽いシャトルのダッシュがより力強いのは当然。下に燃料タンクを置く前席の薄さが気になることもあったが、サスペンションもしっかり仕事をしている。600kg台の軽量ボディが自慢のラパンは自然吸気エンジンでも元気に走るが、乗り心地はややゴツゴツしており、まろやかなデイズは逆に力不足を感じるシーンがいくつかあった。

ボディサイズや排気量に制約がある軽自動車に比べると、それらがないコンパクトカーは、各部の作りに余裕を与えやすい。それがストレスを感じさせない加速や乗り心地、つまり疲れにくさにつながっている。これもまた安全性のひとつだ。もちろんこの差は、車内の横方向の余裕にもつながっているし、側面衝突時の安全性にも違いを及ぼしてくるだろう。

今回の4台ではシエンタだけに装備されるレーンディパーチャーアラートは、車線逸脱の可能性を検知するとブザーとディスプレイ表示で注意を促す。どんなに注意を払って運転していても、ロングドライブでは、ふとした気の緩みに見舞われることはある。だからこそ、この警告はありがたい。さらにオートマチックハイビームは、ライトスイッチの切り替えをせずとも、可能な限りハイビームを保ってくれる。これもまた長距離運転時の疲労を抑えてくれるだろう。そんなことを思ったのは、シエンタの快適性が、軽自動車を含めた国産コンパクトカーの中で高いレベルにあり、ロングランも楽にこなせそうな出来だったからだ。ゆったりした乗り心地は疲労を最小限に抑え、加速も不満なし。今回の試乗車はハイブリッドモデルだったが、これは別の機会に乗ったガソリン車も同じだった。

◆工夫こらしたラパンのインターフェイス、視線移動を減らす“安全”

インターフェイスにも触れておきたい。まず評価したいのはラパン。スイッチの表面に微妙な凹凸や突起を設けているから、ブラインドタッチができるのだ。シエンタのメーターは、通常のタイプより遠くにあるので、走行中の視線移動が圧倒的に小さかった。これも安全性に寄与するはずだ。大きなダイヤルをメインに据えたエアコンのコントローラーも扱いやすかった。

これと対照的なのがタッチパネルを使った残りの2台。結果を目で確認しなければならないタッチパネルは、自動車のインターフェイスには向かない。歩きスマホと同じ理屈だ。

総合的に見れば、カタログスペックだけでも「TSS C」を設定したシエンタが、安全性については頭ひとつ抜け出していると思っていたが、試乗距離を重ねていくにつれ、快適な乗り心地、見やすいメーター、扱いやすいエアコンスイッチなど、それ以外の部分でも良心的な設計が目についた。軽自動車勢については、まだまだこれで十分とは言えないまでも、安全というテーマに対して、真摯に向き合っている姿勢を感じ取ることができた。

《森口将之》

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