【三菱 アウトランダーPHEV 試乗】走り、デザイン、テクノロジー、これぞ三菱!…会田肇

試乗記 国産車
三菱 アウトランダーPHEV
三菱 アウトランダーPHEV 全 15 枚 拡大写真

これぞ三菱だ! そう実感させたのが新型『アウトランダー PHEV』だ。外観デザインをこれまでのオットリとした印象から、精悍で迫力ある三菱らしいデザインへと大変身。プレミアムカーにふさわしい走りはもちろん、インテリアの質感も大幅に向上したのだ。

新型を前にするとそこには従来のイメージはまるでない。まったく別の車種という感じすらする。そこには『パジェロ』から譲り受けた高い悪路走破性を備えると共に、ABSを統合制御して雪道での走破性を高めた「S-AWC」や、PHEVならではのツインモーター4WD、i-MiEVで培ったEVとしての技術が惜しみなく注がれた。まさに三菱自動車の技術力が詰まった先進のSUVが新型アウトランダーなのだ。

基本的な2リットルエンジンとそれに組み合わせるEVのシステムに大きな変更はないが、新型では吸音材や遮音材を追加するなど、目には見えない部分で改良を施して騒音レベルを下げた。これが静粛性の大幅な向上へとつながったのだ。この効果は走り出してすぐに分かる。路面からのノイズも一段と低くなり、充電のためにエンジンが始動してもそれはほとんど気付かない。その圧倒的な静粛性はマイナーチェンジ前とは桁違いにレベルアップしたと言っていい。

そもそもアウトランダーPHEVの基本的な走りのスタイルは、近距離ではエンジンは使わずバッテリーの電力で走り、距離が長くなってバッテリー残量が減ってくるとエンジンがかかるというもの。つまり、エンジンは発電のために使われているのであって、駆動力はほとんどの場合でモーターが担当する。遮音レベルが言い幅に向上したことで、この魅力が一段と引き立てられるようになり、これがプレミアムカーらしい上質さをもたらしたのだ。

ところで、どうして今回のマイナーチェンジでデザインの大幅な変更となったのだろうか。三菱自動車の商品戦略本部でプロダクト評価担当の札元 昭氏はその理由について「PHEVという初めてのジャンルでアウトランダーを出す際、より多くのユーザーをターゲットにしようと無難で控えめなデザインとした。しかし、これが従来の三菱ユーザーから敬遠されることになった。その反省が今回のデザインにつながった」のだという。

その点、新型はフロントグリルのパンパー開口部を太いクロムメッキのモールでを取り囲む、今までにないアグレッシブなデザインへと変更した。これまでの三菱車ユーザーを呼び戻す狙いがあったというわけだ。

残念なのは、その外観に対してインテリアはほとんど変わり映えがなかったことだ。ダッシュボードで一番触れる部分は硬質のプラスチックのままだし、ウインカーレバーを動かした際はプラスチッキーな感触が伝わってくる。シートも表皮デザインや材質を変更したというものの、デザインから新しさはあまり感じない。PHEVとなったことで価格帯は上級グレードで450万円を超えるわけで、それには少々不足感は否めないのだ。

むしろ、同時に試乗した2.4リットルガソリンエンジン車であれば、300万円台前後で買えるわけで、そのインテリアも十分納得がいく。PHEVと同じ遮音対策が施されたことで静粛性にも大きなプラスとなった。モーターやバッテリーによる車重増もないことからガソリン車には軽快感もある。その意味で、ガソリン車の出来は予想を超える仕上がりだったと言っていいだろう。

とはいえ、PHEVに乗った時に感じる静粛性を一度味わってしまうと後戻りできなくなるのは確か。ゆったりとモーターの大トルクを活かして走る。しかもPHEVならではの燃費の良さと、いざという時の100V/1500Wのコンセントを車内2か所に用意する。これは燃料タンクにガソリンを満タンにしておけば、一般家庭の使用電力10日分が賄える計算になるという。それらをトータルで考えた時、新型アウトランダーは代え難い魅力を備えたと言って間違いない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

会田 肇 AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴い新型車の試乗もこなす。来年には60歳代に突入する自身の体験を含め、高齢者の視点に立った車両のアドバイスを心掛けていく。

《会田肇》

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