鉄道の災害運休区間、豪雨で関東各線が運休も約70km減…9月末

鉄道 企業動向
関東・東北豪雨の影響で東武鉄道は宇都宮線で橋りょうが流失。10月7日には再開する予定だ。
関東・東北豪雨の影響で東武鉄道は宇都宮線で橋りょうが流失。10月7日には再開する予定だ。 全 2 枚 拡大写真

災害による鉄道路線の長期運休区間は、9月末時点で425.7km。8月末時点に比べ、70.3km減少した。

9月9日から10日かけての関東・東北豪雨の影響で、東日本を中心に鉄道各線が運休。現在も関東地方の3路線が一部不通となっている。このほか、野岩鉄道の会津鬼怒川線が停電の影響により、現在も上三依塩原温泉口~会津高原尾瀬口間で電車を運転できない状態。会津鉄道の気動車を使った暫定的な再開となっている。

一方、JR九州の肥薩線など8月の運休路線が9月19日までに全て再開したため、運休距離は大幅な減少となった。

■JR北海道 日高本線 鵡川~様似(北海道) 116.0km
今年1月に発生した低気圧による高波の影響で、厚賀~大狩部間の線路脇の土砂が削り取られた。さらに9月の台風17号の影響により、豊郷~清畠間で路盤が流出。厚賀~大狩部間でも護岸壁の波返し部が壊れて路盤が流出し、被害が拡大している。

現在はバスによる代行輸送が行われているが、JR北海道は単独での復旧を事実上断念している。また、同社は留萌本線留萌~増毛間の廃止方針を明らかにするなど、利用者の少ない路線や駅の廃止を検討しており、もともと利用者が極度に少なかった日高本線も不透明な情勢となっている。

■JR東日本 山田線 宮古~釜石(岩手県) 55.4km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。代行輸送は行われていないが、岩手県北バスと岩手県交通の路線バスが並行して運行されている。三陸鉄道が列車の運行を引き継ぐことを条件に復旧が決まり、今年3月から工事に着手した。

JR東日本は当初、2018年度までに段階的に再開する案を示していたが、沿線自治体の要望を受け、2018年度末の全区間一括再開を基本に進めることになった。

■JR東日本 大船渡線 気仙沼~盛(宮城県・岩手県) 43.7km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。JR東日本は2013年3月からバス高速輸送システム(BRT)を導入。線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備し、仮復旧の扱いで代行バスを走らせている。

現在のBRT運行区間は気仙沼~盛間(長部経由)と鹿折唐桑~上鹿折間、陸前矢作~陸前高田間。このうち気仙沼~鹿折唐桑駅付近間2.3kmと竹駒駅付近0.5km、小友駅付近~大船渡~盛間13.2kmは専用道を走行する。ただし大船渡駅付近は土地区画整理事業の実施に伴い、現在は一般道経由に変更されている。

今年7月24日に開催された沿線自治体首長会議で、JR東日本は鉄道の復旧を断念し、仮復旧扱いとなっているBRTの運行を継続する考えを示している。

■JR東日本 気仙沼線 柳津~気仙沼(宮城県) 55.3km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。2012年8月からBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を順次整備した。BRTは気仙沼線の鉄道再開区間を含む前谷地~柳津~気仙沼間で運行されており、このうち前谷地~柳津間はノンストップ、柳津~気仙沼間は各駅停車で運行されている。

専用道の総延長は22.7kmで、陸前戸倉~志津川間の陸前戸倉方3.5kmと、志津川~清水浜間の清水浜方3.8km、歌津~陸前小泉間の歌津方5.1km、本吉~小金沢間の本吉方2.0km、大谷海岸~松岩間の陸前階上・最知方5.0km、不動の沢~気仙沼間3.3kmに設けられている。ただし、志津川~清水浜間は早朝や夜間の一部を除いて専用道を通らず、一般道区間に設置したベイサイドアリーナ駅を経由する。また、10月5日から橋りょうの改築工事に伴い、歌津~陸前小泉間が全て一般道経由に変更される。

今年7月24日に開催された沿線自治体首長会議で、JR東日本は鉄道の復旧を断念し、仮復旧扱いとなっているBRTの運行を継続する考えを示している。

■JR東日本 常磐線 竜田~原ノ町(福島県) 46.0km
2011年3月に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で運休中。途中の夜ノ森・大野・双葉各駅は帰還困難区域、富岡・浪江・桃内・小高・磐城太田各駅は避難指示解除準備区域になっている。

並行する国道6号は2014年9月15日、自動車で通過する場合に限定して通行規制が解除された。これを受けてJR東日本は今年1月31日から代行バスの運行を開始した。途中駅は全て通過している。

JR東日本は段階的な運行再開を考えており、竜田~富岡間は「3年以内(2018年まで)をめど」、浪江~小高間は「遅くとも2年後(2017年)」、小高~原ノ町間は「2016年春まで」に再開の見込みとしている。

■JR東日本 常磐線 相馬~浜吉田(福島県・宮城県) 22.6km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。バスによる代行輸送は不通区間より広い相馬~亘理間で行われており、宮城方の列車とバスの乗換地点も浜吉田駅ではなく亘理駅となっている。ルートを内陸側に移設する工事が進められており、2017年春にも列車の運行が再開される予定。

■JR東日本 只見線 会津川口~只見(福島県) 27.6km
2011年7月の豪雨で橋桁が流失するなどの被害。バスによる代行輸送が行われている。この区間はもともと利用者が極度に少なく、JR東日本は今のところ復旧の可否を明らかにしていない。

■関東鉄道 常総線 水海道~下妻(茨城県) 18.6km
関東・東北豪雨の影響による鬼怒川の決壊で施設が冠水するなど、甚大な被害が発生。9月18日までに取手~水海道間と下妻~下館間の運行を再開したが、水海道~下妻間は現在も運転を見合わせている。9月28日から同区間で代行バスの運行を開始した。再開は10月下旬の見込み。

■東武鉄道 宇都宮線 安塚~西川田(栃木県) 3.5km
関東・東北豪雨の影響で橋りょうが流失する被害が発生。バスによる代行輸送が行われている。10月7日に再開する予定。

■小湊鉄道 小湊鉄道線 月崎~上総中野(千葉県) 9.3km
関東・東北豪雨の影響で盛土が流失するなどの被害が発生。バスによる代行輸送が行われている。上総大久保~養老渓谷間の復旧作業は10月末頃までかかる見込みだ。

■大井川鐵道 井川線 接岨峡温泉~井川(静岡県) 10.0km
2014年9月の大雨で土砂崩れが発生し、末端側の接岨峡温泉~井川間のみ運行を見合わせている。復旧には相当な時間がかかる模様で、再開の時期は示されていない。

■JR東海 名松線 家城~伊勢奥津(三重県) 17.7km
2009年10月の台風18号により橋台の流失や土砂の流入などが発生。バスによる代行輸送が行われている。JR東海は当初、鉄道を廃止する方針を打ち出していたが、関係自治体が鉄道施設周辺の治山事業などを実施することを条件に復旧の方針に転換。2013年5月から工事に着手した。2016年春に再開する見込み。

◎再開:JR西日本 紀勢本線 新宮~紀伊勝浦(和歌山県) 14.9km
台風16号の高波により新宮~三輪崎間の土砂が流出。8月22日から同区間を含む新宮~紀伊勝浦間で運転を見合わせたが、9月1日の初発から運行を再開した。

◎再開:JR九州 肥薩線 八代~吉松(熊本県・宮崎県・鹿児島県) 86.8km
台風15号の大雨により鎌瀬~瀬戸石間などで土砂の流入や倒木の被害。9月3日に人吉~吉松間、9月19日に八代~人吉間が順次再開した。

《草町義和》

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