大手通信機器メーカーの日本無線(JRC)は、10月5日から9日までの5日間、フランス・ボルドーで開催されたITS世界会議15に出展。世界最高水準の精度の「ドライビング シミュレーター」を紹介する他、関連システムのデモを行った。
JRCは、各種シミュレーターや実験装置、試験装置に使用される高精度で信頼性の高い最高水準のモーションシステム(電動/油圧式動揺装置) を手掛けてきたが、1970年からはその技術をベースにパイロットの飛行訓練に使うフライト シミュレーターを開発して納入。各航空会社から高い信頼を獲得してきたという。「ドライビング シミュレーター」はフライトシミュレーターで培った経験と技術を活かしたもので、2008年から本格参入した。
なかでも説明を受けて驚かされたのが既に日本国内の大手自動車3社に納入したという「ドライビング シミュレーター」のシステム規模だ。通常、シミュレーターと言えば、ゲームセンターの延長線上にあるものを想像しがちだ。高度なシミュレーターとししてもフライトシミュレーターが思い浮かぶ程度だろう。同社が開発したのは専用の建物内に敷かれたレールの上をカプセル型のシミュレーターが6方向に動き回って本物の加速度(G)や路面振動を再現するというもの。
加速時はカプセルを傾かせ、ステアリングを切ればカプセルがそれに応じた動きで対応。ステアリングには反力が加えられ、シートには振動スピーカーを装着することで走行感覚を演出する。また、映し出される映像は4K/120Hzモニターによるもので、道路データ制作支援ソフト「Road Studio」を使うことであらかじめ指定場所の風景を再現でき、道路上に起伏を加えたりすることも可能。従来のモーションシステムとは桁違いのリアルさを体感できるのだ。
悩みは、システムがかなり大掛かりとなるために専用の建物が欠かせず、納入価格がどうしても相当に高額になってしまうこと。具体的な価格は仕様によるため一概には言えないというが、数億円になることは確かだという(販売担当者)。とはいえ、これだけリアルに表現できるシミュレーターは他にはないのも確か。今回の出展は、すでに日本国内の大手動車メーカー3社に納入している実績をてこに海外メーカーへの納入を目論んでのことだという。
さすがにブース内に実機の再現はなかったが、「ドライビング シミュレーター」で使われている「Road Studio」で製作したソフトをフルHD/120Hzの滑らかな表現の下で体感できるドライビングシュミレーターを展示。その他、ステアリング操作のなめらかな感覚を再現することで、一段とリアルなシミュレーション環境を実現する「ステアリング反力発生装置」や、メータパネルのレイアウトや色を編集できるグラフィック開発支援ソフトウェア「Meter Studio」なども出展していた。同社が持つ技術力の一端を感じる取れるようになっていた。