「魂動デザイン」を自動車以外で表現…マツダによるふたつのコンセプト作品

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Bike by KODO concept
Bike by KODO concept 全 25 枚 拡大写真

マツダは現在、東京ミッドタウンで開催中の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」に出展。「This is Mazda Design. CAR as ART」と題した展示をおこなっている。

【画像全25枚】

これは今年の4月、イタリアのミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2015」の出展内容を再現したもので、マツダのデザイナーやモデラーが製作した2台のコンセプトモデルと、日本の伝統工芸職人による2つの作品を展示。

コンセプトモデルは自転車のトラックレーサー「Bike by KODO concept」と、ソファーとテーブルの「Sofa by KODO concept」。いずれもマツダが掲げる「魂動」の精神を、自動車以外のプロダクトで表現したものだ。

デザイン本部アドバンスデザインスタジオの中牟田泰部長によれば、マツダでは現在、日本の美意識に基づく「凛」と「艶」という感覚を加えることで、魂動デザインをさらに進化させようとしているという。

「日本の美意識は、余分な要素を取り除いた、研ぎ澄まされたシンプルな造形が美しいと言われてきました。これは単に単純化するということではなく、精緻なまでに計算され、凝縮されたダイナミズムがもたらす美しさです」と中牟田部長。

「研ぎ澄まされた精緻さや品格を“凛”、人の情念に訴えかける、命を感じさせるダイナミズムが“艶”。この相反する感情の調和こそが、欧米の文化とは異なった、日本独自の美しさ表現するのです」という。そしてこの「凛と艶」と、魂動デザインの調和を目指して作られたのが2つのコンセプトモデルだ。

「Bike by KODO concept」は、本社デザイン部に所属する2人のハードモデラーの作品。クレイではなく木や金属、樹脂や革などを用いて「デザインの質」を高める職人がハードモデラーと呼ばれている。

驚かされるのは、極細のフレームで魂動デザインを表現するためにフレームから手作りされていること。通常の自転車ビルダーのように鋼管を加工するのではなく、鋼板を手作業で丸め、パイプ状にすることからスタートしたという。

機能部品がすべて露出する自転車は、メカニカルな美しさとアーティスティックな美しさをバランスよく共存させなければならない。ロードスターを手がけたデザイナーがスケッチを描いた後に、CADデータを作成。しかしそれをベースにしながらも、手で触れて、肉眼で見た感覚を頼りに形作られている。

「ミラノで展示した際、観衆から“レーサーとしての性能はどれほどかわからないが、とにかくとても美しい自転車だ”と言ってもらえたことが、嬉しかったですね」と川野穣氏。

サドルは藤木修氏が担当した。自動車のインテリアとは形状も要件もまったく異なることに戸惑いつつ、革の貼り合わせかたやステッチの入れかたなど試行錯誤を続けたという。最終的にロードスター等の革巻きステアリングと同じステッチが採用されているが、これは耐久性と美観の両立を目指した結果の選択だったとか。

「Sofa by KODO concept」はマツダの欧州デザイン拠点MREのスタッフがデザイン。ミラノでデザインユニット「伊藤節+伊藤志信」がサポートしつつ、現地の家具職人が具現化している。通常の家具とはまったくアプローチの異なるデザインだったために、困難な製作作業だったという。

ソファは発泡させたウレタンフォームに革を貼る構成で、曲面で連続している座面と背もたれが一枚の革で構成されていることが特徴。また踏ん張り感のある脚は、CX-3と同様の力強く地面を踏みしめるスタンス(プロポーションのバランス)と、研ぎ澄まされた品格を表現しているとのこと。

いっぽうテーブルは、マツダ車のファミリーフェイスである五角形グリルをストレートに表現。魂動デザインとはやや趣が異なるが、「欧州の紋章文化における視点での、マツダらしさの表現」と捉えると興味深い。日本の家紋は抽象化の美学があるが、欧州で長い歴史を持つ紋章は具象的なものが多い。紋章としてのグリルを研ぎ澄ませたと考えれば、「凛」の表現と解釈できる。

よく見れば自転車とソファのいずれも、裏側や奥からチラリと覗く鮮やかな赤がアクセントとして活用されている。これは「裏地に凝る」という江戸期の「いき」の表現でありつつ、同時に立体物としての「奥行き」を感じさせる要素にもなっている。「裏側を覗かせ、ほんの少しだけ色気を見せる」とは中牟田部長の弁だが、これもまた日本特有のエレガンス表現だろう。

中牟田泰部長は「魂動デザインの本質は“美しく動きのあるアート”を作ること。このためにはデザイナーのマインドを変えていかなければならない。全員がアーティストにならなければならない、ということを社内で常に言っています」という。

これは芸術家になれということではなく「自分の手でモノを作って、そこに意思を込めることが重要だ」ということだという。サラリーマンとして、上司に言われたことを形として表すのではなく「自分の作りたいものはなにか、ということを問いながら、それを表現することがクルマの造形に繋がっていくのです」と中牟田部長。

伝統工芸職人とコラボレーションした理由も、マツダの社内クリエイターが「日本の美意識に基づくアートを、自分の手で作る」ということをあらためて実感する機会とするためだったようだ。実際に川野氏は「職人たちの作業を見るうちに、これは負けるわけにはいかないと思い、デザインへの情熱がさらに強くなりました」と述懐している。

中牟田部長は「アート活動によって、クルマのデザインをもっと深く、美しいものにしていきたい。マツダは魂動デザインを、日本の美意識に基づいてさらに進化させようとしています」と語る。

なおマツダの展示は1Fの「キャノピースクエア」で、10月25日まで。また東京ミッドタウンでは、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」の関連展示やイベントを11月3日まで、敷地内の各所でおこなっている。

《古庄 速人》

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