パーソナルモビリティやEV、FCVを活用…さいたま市の進めるスマートシティ化

自動車 社会 行政
さいたま市環境局の有山信之氏
さいたま市環境局の有山信之氏 全 8 枚 拡大写真

「埼玉スタジアム2002」の位置する、さいたま市・美園地区。さいたま市は現在美園地区のスマートシティ化を進めている。さいたま市の進めているスマートシティ化の取り組み内容や、今後自動車業界がそこにどのように関わってくるのか、さいたま市環境局の有山信之氏に話を聞いた。

さいたま市は生産年齢人口が減少しているという問題を抱えており、美園地区のスマートシティ化を通じて、子育て世代を増やすことを目指している。美園地区の人口は現状約6000人であり、毎年の増加人数は約500人にとどまっているという現状がある。スマートシティ化を進めることにより、交流人口と定住人口を増やすことを計画しているという。

埼玉スタジアム2002は2020年の東京オリンピックで使用される予定になっており、それまでにはスマートシティ化を形にしたいという。これには、オリンピックをチャンスに世界に対してさいたま市の取り組みを発信したいという狙いもある。現状、美園地区320haはほぼ原野状態であり、この白いキャンバスに何を描くか、現在検討を進めている最中だ。

従来のスマートシティ化では環境保全やエネルギー効率化を主な目的としていることが多かったが、さいたま市のスマートシティ化では、それらはもちろんのこと、住民の生活を”スマート”にすることを大きな目的としている。具体的には、日々の生活の利便性を高めて効率化することにより、家族団らんの時間など、住民のゆとりの時間を増やすことを目指す。そうすることにより、心のゆとりも増やしたいとの考えだ。

それを実現するために「共通プラットフォームさいたま版」という情報基盤を現在IBMと開発しており、今年度中に開発を完了させる予定だ。この情報基盤は、現在各企業がばらばらに提供しているサービスを一元的に管理して住民に提供することにより、暮らしの利便性向上を実現させるもの。共通プラットフォームはスマートフォンやパソコンから利用できるのはもちろん、それらを持たない高齢者のためにテレビ画面からも利用できるようにする。デジタルスティック「donglee(ドングリ―)」をテレビのHDMIに差し込むことによりWi-Fiを利用することができ、共通プラットフォームをテレビ画面から見ることが可能となる。

共通プラットフォームを利用した具体的な構想としては、「仕事帰りに夕飯のメニューを共通プラットフォームに入力すると、共通プラットフォームを通じてスーパーや農家に情報が入り、必要な材料が駅の冷蔵・冷凍宅配ボックスに届けられる」「駅の改札を通ると、共通プラットフォームを通じて保育園に情報が入り、保育園で待ち時間なく子どもを引き取ることができる」「駅前でパーソナルモビリティをレンタルでき、宅配ボックスから引き取った荷物や保育園から引き取った子どもを連れていても、家まで負荷なく短時間で帰ることができる」といったことを描いている。

共通プラットフォームの開発が完了した来年度からは、これらの構想を実現させるための準備を行っていくという。「構想を実現させるには、行政の力だけでは不十分。民間企業や大学と協力して進めていかなければならない」と有山氏。特にパーソナルモビリティについては、自動車関連企業の力が不可欠である。

また、パーソナルモビリティだけではなく、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)も活用していくという。V2H(Vehicle to Home)の考えを取り入れ、災害時にはEVから家へエネルギー供給を行える体制も整える。また、FCVを稼働させるために、市内3か所に水素ステーションを設けるという。さいたま市の取り組むスマートシティ化では、「人と車と街」をひとつのコンセプトとして置いているとのことだ。

共通プラットフォームを構築することにより、市民だけではなく、企業にとってもメリットがある。特に、中小企業が受ける恩恵は大きい。大手企業だけではなく、中小企業も共通プラットフォームを利用することにより、中小企業が大企業と同じ土俵で競争することができるためだ。例えば、先ほどの構想で言うと、「夕飯メニューの情報が農家に入り、農家から駅の冷蔵・冷凍宅配ボックスに届けられる」といった具合だ。農業では法人化による大規模経営が一部で進行しているが、それを行う体力のない小規模農家でも、今後も経営を持続して行っていくことができそうだ。

有山氏によると、「2020年はひとつの目標地点であり、その後も時代に合った取り組みをその都度行っていく」とのこと。また、スマートシティ化を実現させるパッケージを構築し、将来的にはそれを世界に発信していくことも構想しているという。スマートシティ化の先進的な取り組みとして、今後の美園地区の発展が期待される。

《松木和成》

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