【日産 エクストレイル ハイブリッド 試乗】車重を感じさせない軽やかすぎる乗り味に感動…青山尚暉

試乗記 国産車
日産 エクストレイル ハイブリッド
日産 エクストレイル ハイブリッド 全 12 枚 拡大写真

3代目『エクストレイル』は時流に乗ったクロスオーバーテイストのスタイリングに大変身。

しかし歴代もでるの持つタフネスはそのまま。悪路走破性はクラストップレベルの実力を備え、今ではエマージェンシーブレーキやインテリジェントパーキングアシスト付きアラウンドビューモニターなどの先進安全装備も充実している。

ここであらためて2リットルエンジンを積むガソリン車の実力を振り返れば、オール モード4×4-iによる悪路走破性は極めて高く、クロスオーバーモデルがたじろぐような極悪路でも自在にストロークするサスペンション、17インチのオールシーズンタイヤが快適かつ信頼感ある走りを見せつけてくれる。

オンロードでは大きめのボディを動かしている感はあるものの、市街地ではエンジン、CVTのスムーズさが光り、動力性能はサルーン的濃厚さと2リットル、 147psにして、1.5トン前後のボディーを軽々と走らせる余裕のパワーが持ち味だ。

そんなエクストレイルに待望のハイブリッドモデルが加わった。ハイブリッドシステムは『スカイライン』などと同じ1モーター2クラッチ式をよりコンパクトに改良したもの。2リットルエンジンの出力はガソリン車同様の147ps、21.1kg-mだが、モーター出力の41ps、16.3kg-mを加えたシステム出力は188ps、27.5kg-mと、先代 2.5リットルモデルをしのぐ数値となる。

それで燃費性能は20.0km/リットル。ガソリン車の16.0km/リットルから25%もの向上を果たしているのだから立派である。

もっとも、見た目のハイブリッドモデル感は薄い。顔つきなどもガソリン車と変わらず、 ボディー3カ所にあるエンブレムとハイブリッドエネルギー表示付きメーターがほぼその証のすべて。ちなみにリチウムイオンバッテリーを積むラゲッジ部分のフロアが かさあげされているのはちょっと残念な部分。床下にバッテリーがあるため、自慢の防水フレキシブルラゲッジも省かれている(ラゲッジフロアの汚れが気になるなら、アクセサリーのラゲッジフルカバーを装着すればいい)。

また、17インチタイヤの空気圧は、実はガソリン車より高く設定されている。 これは転がり抵抗重視、燃費対策のためだ。

エクストレイル 20X ハイブリッド エマージェンシーブレーキパッケージ 4WDを走らせれば、第一印象はとにかく素晴らしく軽やか! というものだった。出足はふんわりアクセルを行えば基本的にEV走行。1.9トンもの車重などまったく感じさせないままスッと前に出る。アクセルの踏み加減に対してリニアに反応するモータートルクが生きる出力特性が、重量級SUVらしからぬ軽やかで爽快な加速感を演出しているようだ。

感覚的な走りのハイブリッド感は強くないものの、それでもバッテリーが十分にあれば平たん路では70km/hぐらいまでの速度域でEVモードに入ることを確認。高速走行中でもクラッチの断絶でエンジンが停止するシーンもあるのが日産HVの持ち味だ。

乗り心地もまた軽やかで基本的に角の取れたまろやかなタッチを示してくれる。 が、段差でガソリン車にないボコボコした音振動が気になるシーンがあるのは、 おそらくタイヤの空気圧の高さが原因のように思われる。

高速走行では、ものすごく速い…という印象は受けにくかった。とはいえ、SUVとしてふさわしい、穏やかでもモーターアシストによる頼もしさある加速感と静かさに好感を覚えたのも本当だ。パワステは約80km/hからいきなりズシリと重くなり、直進感が増すセッティング。個人的にはその重さがちょっと不自然かなぁと思えるのだが、ビシリとした直進感に安心を覚える人もいるはずだ。

それにしても、終始感動できるのは、くり返すけれど、1.9トン級の車重をまったく感じさせない走りの軽やかさ、気持ち良さ。日常使いはもちろん、長距離走行でもこの爽快な運転感覚は、ドライブを一段と楽しく快適なものにしてくれるはずだ。合わせてオフロードのタフネスさは、いざというときの保険になること間違いなしである。

ガソリン車との価格差は、4WD、2列シート、エマージェンシーブレーキパッケージ装着車同士で比較すると、プライスリスト上では約41万円だが、装備を合わせると実質約34万円差となる(ハイブリッドモデルはLEDヘッドランプなどが標準)。約1時間、郊外路と高速道路を走ったときの実燃費は約14km/リットル。距離が伸びればさらによくなる印象だが、それでもたいしたものである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《青山尚暉》

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