ブリヂストンの高精度自動生産システム「BIRD」、誕生の背景とは

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トレッドとサイド部を成型する際、既存製法ではシート状の部材を貼り合わせるため、つなぎ目部分(ジョイント)ができるが、BIRDでは細いひも状のゴムを巻きつける(写真)リボン製法を使うためジョイントがない
トレッドとサイド部を成型する際、既存製法ではシート状の部材を貼り合わせるため、つなぎ目部分(ジョイント)ができるが、BIRDでは細いひも状のゴムを巻きつける(写真)リボン製法を使うためジョイントがない 全 6 枚 拡大写真

ブリヂストンは12月8日、滋賀県・彦根工場内にある最新の生産システム「BIRD(バード)」を報道陣に公開した。

◆独自に構築された生産体制

彦根工場は1968年に操業開始し、主に乗用車や小型トラック用ラジアルタイヤを生産する国内基幹工場の一つ。今回、報道陣に公開されたのは、彦根工場内で2005年から稼働している高精度自動生産システム「BIRD」の部分。高品質タイヤの多サイズ・小ロット生産を得意とする最新鋭の生産システムだ。

同社タイヤ生産システム開発本部長の三枝幸夫氏は、BIRD開発の背景に、1990年代の後半、タイヤ業界に広がった危機感があったという。それは、乗用車の大型化や性能要求のシビア化、市場の急速なグローバル化、円高や国内労働力減少に備えた国内生産体制といったものだ。

それと同時に、ものづくりを行うメーカーとして、技術伝承や人材育成の必要性も高まっていた。プレミアムタイヤの生産には、高い真円度、重量・剛性の均一性などの高品質が求められるが、それを実現するにはマニュアル化しにくい暗黙知や、現場技能員の「作りこみ」に頼る部分があり、既存の生産工程ではそれらの共有が難しかった。

そこで同社では1990年代後半から、ICT(情報通信技術)や最先端技術を導入した新しい生産システムの開発に着手。暗黙知や作りこみの標準化や伝承、そして今でいうビッグデータ等の集積などを行い、必要な人が必要な情報を必要な時に見ることが可能な、フレキシブルなICTを独自で構築した。これによりBIRDでは、品質のコントロールだけでなく、海外工場を含めて各工場の稼働状況をリアルタイムで把握することが可能になっている。

また、既存工場では各工程を分業することになるが、BIRDでは作業員が最先端のマシンを使い、タイヤ生産の主要工程を一括で管理するため、モノづくりの醍醐味を実感しやすくなったという。BIRDには260件もの特許があるそうだが、タイヤマンにとってはまさに知恵や技術の結晶と言えるものだろう。

◆BIRDの技術を展開、競争力の糧に

一方で危惧されるのは、これが雇用の削減に向かうのではないかという点だ。彦根工場全体の従業員数は約1500名で、今はそのうち1200名ほどが既存工場での生産に従事している。ただし同社によれば、BIRDはあくまでも高性能タイヤの多品種・小ロット生産に特化した生産システムであり、初期投資も大きいため、BIRDが既存工場に取って代わるわけではないという。

ちなみに、モータースポーツ用などの特殊なタイヤも、既存工場の方が向いているという。例えば超偏平・高性能スポーツカー用タイヤは佐賀県の鳥栖工場、レース用タイヤは福岡県の久留米工場、二輪用タイヤは栃木県の那須工場で生産されている。

ただし今後、BIRDで培われたハード・ソフト技術は、既存工場にも展開される計画で、それによって国内工場の競争力をさらに上げるのが、同社の大きな狙いだ。BIRDおよび彦根工場は、それらの先駆として位置づけられている。

同社取締役 専務執行役員の財津成美氏は、2005年のBIRD立ち上げ時に生産技術に携わっており、「生みの苦しみを味わった」と振り返りつつ、今後はBIRDのさらなる成長と、そこから生まれる新しい技術を楽しみにしており、またそれが同社にとっての命題だと語った。

同社は、10月に中期経営計画の一環として、国内生産体制の再編を発表しており、東京工場(小平市)は乗用車用タイヤの生産をやめて、研究・開発と航空機用ラジアルタイヤ生産に特化する一方で、彦根工場を同社のフラッグシップ工場と位置づけ、今後2016年から2020年までに150億円規模の設備投資を行い、集中的に改善していく計画だ。

《丹羽圭@DAYS》

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