3D CAD「SOLIDWORKS」のCEOが語る、CADとプロダクトデザインの未来

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ソリッドワークスによるレンダリング
ソリッドワークスによるレンダリング 全 11 枚 拡大写真

CADソフトで知られるダッソー・システムズは11月中旬、3D CAD「SOLIDWORKS」の最新機能や事例を紹介する「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2015」を東京と大阪で開催。CEOも来日して記者会見をおこない、CADの現状や将来ビジョン、そして新機能などを紹介した。

SOLIDWORKS(ソリッドワークス)はエンジニアリングデザインの機能に優れつつ、Windows環境で動作する簡便さなどから大手メーカーをはじめサプライヤーや中小企業、教育機関での採用も多い。同社によれば、ソリッドワークスはCAD市場のなかで36%のシェアを持っているという。

ソリッドワークスのジャン・パオロ・バッシCEOによれば「ダッソー・システムズでは、みずからをソフトウェア開発会社とは見なしていません。”サイエンス&テクノロジー・デベロップメント・カンパニー”と自負しています」とのことで、全社員1万4000人ほどのうちおよそ4000人がR&Dに関わっているとのことだ。

興味深いのは、デザインの重要性についての言及だ。「デザインとは、ただ単に製品の設計などを指すものではなくなっています。企業戦略の中心にデザインが据えられるようになり、たとえばカスタマー・エクスペリエンスやカスタマー・サポート、それにビジネスモデルなどをデザインすることが必要です」とのこと。

こうしたことを受け、ソリッドワークスはたんなるソフトウェアではなく「イノベーション・プラットフォーム」、革新を起こすためのプラットフォームになるとバッシCEO。「ビッグデータの時代になると生のデータは情報へ、そしてナレッジ(知見)へと変換して共有できることが必要。データ中心の世界からナレッジ中心の世界への移行を手助けしてくれるのがプラットフォームなのです」。

そして、このプラットフォームを構成する新しいアプリケーションとして「インダストリアル・デザイナー」を紹介。これは紙に描いたような二次元スケッチからシームレスに3Dモデルを作成でき、クレイ(粘土)のように変形させて複雑な形状を作れるというものだ。

さらに、現実に存在するモックアップにペンで描き加えるのと同じ感覚で、表面に線を描き足すことも可能。3Dデータが次のアイデアを描くためのキャンバスとしてそのまま使え、デザイナーの着想をすぐさま共有することができる。

もうひとつ注目されるのは「オプティマイゼーション」と呼ばれる機能。これはコンピュータが応力やひずみをシミュレーションして最適な形状を定義するというものだ。ラフな形状と荷重などの数値を入力すると、要求される数値を満たす最適な形状を見つけ出すという。

会場では無垢の部品を計算させると、みるみるうちに応力の弱い部分が肉抜きされてゆくムービーを披露。これによって最小限の材料で作ることができ、同時に軽量化も達成したデザインが導き出せることが理解できた。しかし実際のところ、このシミュレーションでは製造プロセスまで勘案することはできず、既存の設備では作ることができない可能性もある。

こうした部分で実用性に欠けることが、これまで意味がないと思われ、使われてこなかった技術だともいえるとバッシCEO。「ところが3Dプリンタの登場で状況は変わりました。クレイジーな形状でも作れるようになってきたのです。これによってトポロジー・オプティマイゼーションという概念が息を吹き返したともいえます」。

そして最後にこう結んだ。「CADというのはコンピュータ・エイデッド・デザインの略です。しかしこれまではエイド(支援)するといっても、小文字の”a”ぐらい程度のものではなかったのではないか。わたしたちはこれを大文字の”A”にしたい。カット&ペーストのような作業を支援するものではなく、デザインの目標を果たすことを支援できるものにしてゆきたいのです」。

《古庄 速人》

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