【スマート フォーツー 試乗】限定販売にしておくのはもったいない…中村孝仁

試乗記 輸入車
スマート フォーツー
スマート フォーツー 全 21 枚 拡大写真

小さいクルマが好きである。先代のスマートも欲しかった。女房に言ったら一喝された。あんな乗りにくいクルマ、ダメ! これはトルク変動の大きなトランスミッションのなせる業だった。

そして新しいスマート。その乗りにくいと一喝されたトランスミッションは、新たにデュアルクラッチの6速に進化した。そして、ボディは一回り大型化して室内の居心地は大幅に良くなった。さらにインテリアの作りも相変わらずポップだが、これも大幅に自動車らしくなって、今や後ろを見ない限り普通のクルマに乗っている印象すらある。

全幅は1665mmとなって、旧型より一気に105mmも拡大した。何とかすれば軽枠に収まった旧型とは大違いである。因みに3サイズは2755×1665×1545mm。ホイールベースはたったの1875mmしかない。デカい大人が横になれば、ホイールベースというわけだ。このホイールベースの短さこそ、回転半径3.3mという驚異の小回りを生み出す。そしてこれが運転感覚に反映されるのだがそれは後で。

エンジンはリアアクスル直前に置かれる。従来は完全なリアエンジンだったが、今回は実質的にはミッドシップだ。それも2シーターの。搭載されるエンジンは1リットル3気筒NA。パワーは71ps、トルクは91Nmと軽と比較してトルクは軽のターボに負けるが、パワーは大きく上回る。

このエンジン、トランスミッション、実はルノーが実質的に開発したもので、プラットフォームまで含め、基本的にルノー『トゥインゴ』と共通する。勿論トゥインゴと共通するのは『フォーフォー』の方であって、『フォーツー』が大幅に短いことはご承知の通りだ(幅は同じ)。裏を返すと、フォーツーを成立させるためには、このレイアウトに必然性があり、結果としてトゥインゴやフォーフォーがこのレイアウトになったともいえる。

リアエンドには260リットルを収納するラゲッジスペースがある。これ自体は旧型とそれほど変わるとは思わないが、上下分割で開くテールゲートの下側には、さらにそこに荷物を載せられる構造で、最大100kgの重さに耐えるというからビックリ。もっとも日本の道交法で、こいつを開いたまま走るのは問題ありそうだが、この上に座るというのは有りだろう。

実はそのラゲッジルームとシートの間にはエンジンが存在するはずだが、アクセスの方法はわからなかった。完全にブラックボックス化している。しかも日ごろメンテナンスが必要な例えばウィンドウォッシャーとか、ラジエター水の補充などは、フロントボンネットを開いて行うのだが、そのボンネットも写真でご覧の通り、珍しい開き方をする。

さて、その運動性能だ。3気筒のエンジンは先代より排気量がアップして、まあ力不足などまるで感じない。パワーは大したことないが、走りは十分である。車重は意外と重く940kg。まあ、想像するに徹底した安全を考慮して、トリディオンセルと呼ばれる基本骨格を頑丈にした結果ではないかと。ウェブ上にも堂々とメルセデス『Sクラス』と真っ向勝負してちゃんと生存空間が確保されている画像が出ている。小さくても安心、はこの画像からも明らかだ。

そのエンジンをコントロールするのは6速DCT。残念ながらパドルはないが、シフトを漕いでやれば、スイスイ走る。以前のようなギクシャク感ゼロ。そしてシフトの前側に付くモード切替でSを選択してやれば、シフトポイントが変わり、エンジンのレスポンスも良くなって俄然その気にさせてくれる。先代でもブラバスの走りはこんな風だったが、パフォーマンス的にそれを上回っているから、なおさら楽しい。

ステアリングはかなりクィックに感じるが、そう思わせるのはホイールベースの短さだ。まさにゴーカート感覚とはこれを言うのであって、そのフィールはミニよりも素直にゴーカートに近いと感じる。こんな楽しいクルマが何故、限定販売なのか…。まあ、次から次へと限定車が投入されることを願おう。

※編集部註:フォーツーは導入第一弾として440台を限定販売。今後も、限定モデルとして、年に数回の発売を計画している。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
 

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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