【オートモーティブワールド16】「モビリティ4.0」時代の黎明と革新とは…デロイトトーマツ周磊氏インタビュー

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デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの周磊氏
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経済産業省と国土交通省が合同で設置した自動走行ビジネス検討会の委員を務めるデロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの周磊氏は、インダストリー4.0と同様にモビリティの世界でも第4次革命「モビリティ4.0」が到来していると提唱する。

周氏が唱えるモビリティ4.0とはモビリティの進化をとらえたもので、「人間の移動が馬やロバ、徒歩から、内燃機関の登場で機械に置き代わったのがモビリティ1.0。2.0は1900年代初頭にフォードの自動車量産化によってもたらされ、クルマの電子化、システム化、モジュール化が3.0。そしてクルマがあらゆるサービスやシステムとつながる一方で、ライドシェア、カーシェアといった新しい使われ方も登場してくるのが4.0」と解説する。

さらに「なぜ今、モビリティ4.0かというと、所有から使用といわれるように移動の形態が非常に変わりつつあるステージにきていることがひとつ。またクルマだけでなく鉄道を始めとする多様な交通機関も同様に大きな変化を迎えるので、オートモーティブというくくりだけでなく、あえてモビリティ4.0とネーミングしたことも重要な点」と周氏は強調する。

では周氏が描くモビリティ4.0の姿とはいかなるものか。それは、「例えば鉄道によるヒトやモノの移動、流れといった膨大なデータを利活用することで、より効率的なレコメンデーションを可能にしたり、またモビリティがあらゆるモノとつながることで決済はよりキャッシュレスに、また金融サービスも保険にとどまらずに新しい仕組みが登場してくるだろう」と語る。

その一方で「モビリティ4.0のマイルストーンとしては2020~2025年。その時点ではAI(人工知能)でモビリティと会話をしたり、完全自動運転が実現するところまでは到達できないが、モビリティが4.0のままとどまることはなく、5.0、そして6.0へとさらなる進化をとげていくことになる」とも。

モビリティ4.0の到来で産業界に与える影響について周氏は「インフラ、通信系などさまざまな業種からプレーヤーが入ってきて、より混戦状態になる」とした上で、「自動車産業は今も垂直分業しているが、ティア1、ティア2、ティア3といった分業構造は変わらないだろう。ただティア1、ティア2のプレーヤーは異業種からも入ってくることになる。またIT企業が自動車を造るといった可能性を否定する必要もない」とみる。

モビリティ4.0で重要度を増してくるコネクティッドや自動運転関連の技術の中には日本が海外勢に劣っている分野はある。周氏は「アメリカに先を越されていることで、今の日本の技術者には元気がない」と認めつつも、「すべてでなくていい。日本ならではの技術で、世界に貢献できるものはある」と指摘。

具体的には「より精度の高い、より心地の良いサービスを提供することは、まさに日本ならではのものではないか。また渋滞緩和や環境への負荷を低減する技術でも世界に貢献できる分野だ」と語る。

さらに「新しいステージは来ている。クルマは単に移動するために必要なものとしてとらえるのでなく、それだけのものではないということを常に考え、変化についていくのではなく、その変化をリードしていくことが重要で、日本は常に新しいものを追求していくべき」と檄を飛ばす。

また周氏は「5~6年のスパンで人を育て、モビリティの人材を世界に輩出していく必要がある。渋滞や環境汚染対策など日本の独自色を出せる分野での人材大国にもならなくてはいけない」とも。

その上で「Not only Silicon Valley but also our Asia(シリコンバレーだけではない、我々のアジアにもある)。シリコンバレーは単なる場所で人は常に動いている。シリコンバレーを経験したアジア人は数多くいる。ここを認識しないといけない」と締めくくった。

周氏は1月15日に東京ビッグサイトで開催されるオートモーティブワールド2016の特別講演に登壇。「モビリティ4.0:インテリジェントモビリティ時代の黎明と革新」と題し、モビリティの未来を提言する。

オートモーティブワード2016の開催は、1月13~15日。会場は東京ビッグサイト。専門技術セミナーは事前申し込みが必要。

《小松哲也》

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